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第一章 転生アンマリア

第10話 お茶会に誘われました

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 恩恵太りはしてるとはいえ、地の部分で痩せていようと決意した私。そうやって庭の手入れを手伝うようになってからしばらくしたある日の事だった。
「お嬢様、お茶会の招待状が届いております」
 スーラが手紙を持って現れた。私はその手紙を受け取り、封蝋を見て震え上がった。
「ちょっと待って、これってマートン公爵家の……」
「はい、差出人はラム・マートン公爵令嬢様です」
 そう、まさかの公爵令嬢からのお茶会の誘いだった。洗礼式の日からそんなに経っていないこの時に、どうして公爵令嬢から誘いの手紙が来たのか、私には理解ができなかった。第一、この時点で私にはマートン公爵家とは何のつながりもないのだから。だけど、さすがに公爵家からの誘いを断るわけにはいかない。私は日付をよく確認した上で了承の返事を出す事にした。私からの返事を受け取ったスーラは、早速それを預かって持っていった。
 さて、公爵令嬢とのお茶会が決まったからとはいっても、私のやる事には変わりはなかった。淑女教育を受けながら、運動がてら庭師の仕事を手伝っていた。
 そして、ラム・マートン公爵令嬢のお茶会当日がやって来た。
 私はスーラに服を着付けてもらい、髪もセットしてもらった。相変わらずのぽっちゃりボディは、ステータスで確認すると53kgまで増えていた。おかしい。食事はいつもの通り高タンパク低カロリーだし、運動だってちゃんとしている。なのにこの数日で2kgも体重が増えているのだ。これが恩恵太り?!
 私は馬車に乗り込んで、マートン公爵邸へと向かう。私の家の伯爵家とは違い、今のサーロイン王家と同じ血を引き継いでいるマートン公爵家。格上の相手がために、私はとても緊張していた。それは私つきの侍女であるスーラも同じだ。彼女は男爵家の出であるがために、公爵家は王家とまではいかなくても雲の上の存在に近しかったのだ。私は前世の記憶に引きずられて慣れていないだけだけど、スーラの場合は本当に畏敬の念からくる緊張なのである。
 私の乗った馬車は王城近くの上級貴族が進んでいく。この辺りは公爵や侯爵が住んでいて、警備兵が常に見回りをしているために、とても治安が良い場所となっている。
 今の時期はちょうど洗礼式があったばかりでなので、領地持ちの貴族も王都に揃っている。なので、今回のようにお茶会を開いて積極的に交流するのが通例となっている様子。私が誘われたのもその一環だけど、誘ってきた相手は私と同い年のラム・マートン公爵令嬢だった。さてさて、一体どういうメンツが揃っているのかしらね。そう考えている間に、馬車はマートン公爵邸に到着したようだわ。
 私は先に降りたスーラに手を引かれて馬車から降りる。すると、
「ようこそおいで下さいました」
 マートン公爵家の使用人たちにご丁寧に出迎えられた。さすがは公爵家の使用人たち、所作がとても綺麗だった。私はその使用人たちに案内され、ラム・マートン公爵令嬢の待つ庭園へと向かう。
 庭に到着すると、ラム・マートン公爵令嬢は椅子に座ってすでに先着していた令嬢たちの相手をしていた。その中にはサクラ・バッサーシ辺境伯令嬢とサキ・テトリバー男爵令嬢が居た。さすがは公爵令嬢、すでに10数名の令嬢に囲まれていたのに、その中でも目立つ貫禄の持ち主だった。……主に体格のせいだけれどもね。
「本日はお招き頂き、誠に光栄でございます、ラム・マートン公爵令嬢。私、ファッティ伯爵家長女、アンマリア・ファッティと申します。」
 私は教わった通りのカーテシーで挨拶をする。正直ちゃんとできているのか怪しくて、カーテシーをする足がプルプルと震えていた。体重のせいだからね。
「ようこそおいで下さいました、アンマリア様。洗礼式では目立ってらしたので、とても印象に残っておりますわ」
 ラムは笑顔で挨拶を返してくる。まあ、自分と同じかそれ以上に太っている私は、それは印象に残りますでしょうね。私は、内心嫌味ったらしくそう思った。思っただけで口には出さないけれど。
 私たちがそれぞれに言葉を交わしていると、また一人、新たに令嬢がやって来た。
「はあはあ、遅れて申し訳ございません」
 走ってきたのか、すごく呼吸が乱れていた。
 その遅れてやって来たのはモモ・ハーツ子爵令嬢だった。これでゲーム中のライバル令嬢が全員そろった事になる。
「いえ、まだ時間には間に合っております。確かモモ・ハーツ子爵令嬢でしたわね。ようこそ、わたくしのお茶会へ」
 ラムはにっこりと微笑んでいる。太っているというのにその笑顔は柔らかくて気品に満ちあふれている。どこかの誰かとは大違いだ。ええ、私ですよ。
「そうでしたか。本当にお招き頂き光栄でございます、ラム・マートン公爵令嬢」
 モモもしっかりと息を整えてからカーテシーで挨拶をする。子爵令嬢とはいえ、さすがは貴族令嬢。そのカーテシーは素晴らしかった。私も見習おう。
 とりあえずはこれで招待された礼状は全員揃ったようで、ラムは給仕を呼んでお茶会に出す紅茶やお菓子を持ってこさせていた。
 こうして無事にお茶会が始まるかと思われたのだが、そこへまったくもって予想外な人物がやって来たのだ。
「お待たせしてしまったようだね。ラム・マートン公爵令嬢」
「ようこそおいで下さいましたわ。フィレン殿下」
 笑顔で手を振る少年に、ラムが深々とカーテシーをする。
(すごい、あの体形でしっかりとカーテシーができている。……じゃなかった。なんでここにフィレン第一王子が来ているのよ!)
 思わぬゲストの登場に、お茶会の場は黄色い声に包まれた。
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