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第一章 転生アンマリア
第6話 攻略対象の王子
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アンマリアが父親に告げられて絶望に落ち込んでいる頃。サーロイン王国の王城では、王子が単独で洗礼式に臨んでいた。
「では、フィレン殿下の洗礼式を始めます」
「はい、よろしく頼みます」
司祭が水晶を持った神の彫像をテーブルの上に置くと、フィレンはそこに一度深呼吸をしてから手を置いた。
すると、眩い光が放たれる。白と黄色のに2色の光が放たれたので、光と雷の2属性持ちだという事が分かる。適性は『指導者』、恩恵は『先見の目』と表示された。これから国を担う立場としてはこの上ない適性と恩恵である。
「おお、素晴らしい。さすがはフィレン殿下でございますね」
「ありがとうございます。ですが、あくまで目安でしかありません。これからの私の努力というのが大事なのですよね?」
フィレンがにっこりと言うと、
「そうでございます。さすがはフィレン殿下」
神父はちょっと困惑した表情を浮かべていた。
フィレン・サーロイン第一王子。
大不人気乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の攻略対象の一人で、告白時の要求体重が一番軽い範囲にある最高難易度の攻略対象。120kgスタートのアンマリアにとって、最大の敵である。なにせ、告白成功をさせられる体重の範囲は55kg未満だ。三年目ともなれば個別ルートに入ってしまうので、実質2年で半減という鬼畜な要求をされる難攻不落の城塞なのだから。
減らすだけなら何とでもなるのだが、さらに困難を極めさせたのがアンマリアの体質だ。アンマリアの体重は学園に入るまでの生活のせいでとにかく増えやすい。恩恵の効果が切り替わったからといっても、その体質が容易に変わる事はない。それに加えてお出かけなどのイベントで、やたらとアンマリアに食事をさせようとするのだ。たとえ頑張って5kg減らしたとしても、このイベントでいとも簡単にリバウンドしてしまう。しかも好感度と密接に関係してくるので本当にやりづらいのだ。
ちなみにゲーム中のフィレン王子はイケメンですらりとした体格に軽くウェーブした金髪に碧眼という、いかにも王子様ないでたちをしている。数あるイラストの中にはBLまであったとかなかったとか。
洗礼式を終えたフィレンは、椅子に座って神父に問い掛ける。
「今年の洗礼式では、何か面白い方はいらっしゃいましたか?」
自分と同じように洗礼を受けた子どもたちがたくさん居るのだ。フィレンもどうやら気になっているようである。だが、聞き方が8歳のそれじゃない。
「ええ、なんでも聖女候補が出たらしいです」
城で洗礼式をしている神父は、教会で洗礼式をしていた神父とは別人なので、どうやら伝聞のようだ。
「聖女候補ですか。一体どのような方ですか?」
気になるフィレンが問い掛けると、神父はちょっと渋っていたが、
「サキ・テトリバーという名の男爵令嬢だそうです。洗礼を聞いた時にちょっと叫んでいたので、お耳に入れるか少々迷いました」
と正直に答えていた。聖女候補という事は、将来王妃として迎える可能性があるだけに、神父は性格面で躊躇したという事らしい。
「そうなのですね」
フィレンは無邪気に笑っていた。フィレンが特に気にしていないようなので、神父は少し気が楽になった。
「ああ、そういえばもうひと方、妙な洗礼結果が出ていたと聞きましたね」
「へえ、それはどんな方なのですか?」
神父が追加で伝えようとしたその時だった。
「兄上、洗礼式の結果はいかがでしたか?」
バーンと扉が開いて、少年が入ってきた。
「これはこれはリブロ殿下。フィレン殿下の洗礼式は先ほど終わったばかりでございますよ」
「そなたに聞いているのではない。僕は兄上に聞いているのだ」
「いやはや、これは失礼致しました」
リブロに怒られた神父はおとなしく頭を下げる。確かにそうだが少々理不尽である。
「こらこらリブロ。入ってくる時はノックをするように言っているでしょうが。今後は気を付けるのですよ」
「兄上、申し訳ありません。ですが、僕はどうしても結果が聞きたいのです」
リブロがせがんでくるので、仕方なくフィレンは結果を伝える。するとリブロの表情は明るくなった。
「さすがは兄上! 来年は僕も負けていられませんね」
「リブロは来年洗礼式だね。私も楽しみにしているよ」
どうやらこの少年は、フィレンの一つ下の弟のようだった。
リブロ・サーロイン第二王子
フィレンの弟である彼は、攻略対象を全員クリアした後の隠しキャラとして登場する。だが、上の通り、年齢が一つ下で同じように三年目に固定ルートに入ってしまうので、体重が告白に関係ないとはいえ兄同様に鬼畜難易度の攻略レベルを誇っている。何と言っても初登場が二年目に突入してからなのだ。その上、地味に神出鬼没で好感度が上げにくい。アンマリアも前世で攻略方法を確立するまでかなり時間を費やしたようである。なにせ貴重なショタ枠だったのだから。
ちなみに容姿自体は兄とよく似ているが、少し髪はリブロの方が長いし、髪色も濃い。
エンディングとしてはほぼ兄が王位を継ぐので、アンマリア次第でかなりエンディングの種類が多かった。ちなみにリブロが兄を差し置いて王位を継ぐエンディングも存在しているのである。
「で、奇妙な洗礼式の結果というのがですね……」
神父は二人の王子に詳細を伝えると、フィレンは怪しく笑い、リブロは楽しそうに笑った。
「それは面白い。実にお近付きになりたいものですね」
そう話すフィレンの表情に、神父は思わず背筋が凍り付くのであった。
「では、フィレン殿下の洗礼式を始めます」
「はい、よろしく頼みます」
司祭が水晶を持った神の彫像をテーブルの上に置くと、フィレンはそこに一度深呼吸をしてから手を置いた。
すると、眩い光が放たれる。白と黄色のに2色の光が放たれたので、光と雷の2属性持ちだという事が分かる。適性は『指導者』、恩恵は『先見の目』と表示された。これから国を担う立場としてはこの上ない適性と恩恵である。
「おお、素晴らしい。さすがはフィレン殿下でございますね」
「ありがとうございます。ですが、あくまで目安でしかありません。これからの私の努力というのが大事なのですよね?」
フィレンがにっこりと言うと、
「そうでございます。さすがはフィレン殿下」
神父はちょっと困惑した表情を浮かべていた。
フィレン・サーロイン第一王子。
大不人気乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の攻略対象の一人で、告白時の要求体重が一番軽い範囲にある最高難易度の攻略対象。120kgスタートのアンマリアにとって、最大の敵である。なにせ、告白成功をさせられる体重の範囲は55kg未満だ。三年目ともなれば個別ルートに入ってしまうので、実質2年で半減という鬼畜な要求をされる難攻不落の城塞なのだから。
減らすだけなら何とでもなるのだが、さらに困難を極めさせたのがアンマリアの体質だ。アンマリアの体重は学園に入るまでの生活のせいでとにかく増えやすい。恩恵の効果が切り替わったからといっても、その体質が容易に変わる事はない。それに加えてお出かけなどのイベントで、やたらとアンマリアに食事をさせようとするのだ。たとえ頑張って5kg減らしたとしても、このイベントでいとも簡単にリバウンドしてしまう。しかも好感度と密接に関係してくるので本当にやりづらいのだ。
ちなみにゲーム中のフィレン王子はイケメンですらりとした体格に軽くウェーブした金髪に碧眼という、いかにも王子様ないでたちをしている。数あるイラストの中にはBLまであったとかなかったとか。
洗礼式を終えたフィレンは、椅子に座って神父に問い掛ける。
「今年の洗礼式では、何か面白い方はいらっしゃいましたか?」
自分と同じように洗礼を受けた子どもたちがたくさん居るのだ。フィレンもどうやら気になっているようである。だが、聞き方が8歳のそれじゃない。
「ええ、なんでも聖女候補が出たらしいです」
城で洗礼式をしている神父は、教会で洗礼式をしていた神父とは別人なので、どうやら伝聞のようだ。
「聖女候補ですか。一体どのような方ですか?」
気になるフィレンが問い掛けると、神父はちょっと渋っていたが、
「サキ・テトリバーという名の男爵令嬢だそうです。洗礼を聞いた時にちょっと叫んでいたので、お耳に入れるか少々迷いました」
と正直に答えていた。聖女候補という事は、将来王妃として迎える可能性があるだけに、神父は性格面で躊躇したという事らしい。
「そうなのですね」
フィレンは無邪気に笑っていた。フィレンが特に気にしていないようなので、神父は少し気が楽になった。
「ああ、そういえばもうひと方、妙な洗礼結果が出ていたと聞きましたね」
「へえ、それはどんな方なのですか?」
神父が追加で伝えようとしたその時だった。
「兄上、洗礼式の結果はいかがでしたか?」
バーンと扉が開いて、少年が入ってきた。
「これはこれはリブロ殿下。フィレン殿下の洗礼式は先ほど終わったばかりでございますよ」
「そなたに聞いているのではない。僕は兄上に聞いているのだ」
「いやはや、これは失礼致しました」
リブロに怒られた神父はおとなしく頭を下げる。確かにそうだが少々理不尽である。
「こらこらリブロ。入ってくる時はノックをするように言っているでしょうが。今後は気を付けるのですよ」
「兄上、申し訳ありません。ですが、僕はどうしても結果が聞きたいのです」
リブロがせがんでくるので、仕方なくフィレンは結果を伝える。するとリブロの表情は明るくなった。
「さすがは兄上! 来年は僕も負けていられませんね」
「リブロは来年洗礼式だね。私も楽しみにしているよ」
どうやらこの少年は、フィレンの一つ下の弟のようだった。
リブロ・サーロイン第二王子
フィレンの弟である彼は、攻略対象を全員クリアした後の隠しキャラとして登場する。だが、上の通り、年齢が一つ下で同じように三年目に固定ルートに入ってしまうので、体重が告白に関係ないとはいえ兄同様に鬼畜難易度の攻略レベルを誇っている。何と言っても初登場が二年目に突入してからなのだ。その上、地味に神出鬼没で好感度が上げにくい。アンマリアも前世で攻略方法を確立するまでかなり時間を費やしたようである。なにせ貴重なショタ枠だったのだから。
ちなみに容姿自体は兄とよく似ているが、少し髪はリブロの方が長いし、髪色も濃い。
エンディングとしてはほぼ兄が王位を継ぐので、アンマリア次第でかなりエンディングの種類が多かった。ちなみにリブロが兄を差し置いて王位を継ぐエンディングも存在しているのである。
「で、奇妙な洗礼式の結果というのがですね……」
神父は二人の王子に詳細を伝えると、フィレンは怪しく笑い、リブロは楽しそうに笑った。
「それは面白い。実にお近付きになりたいものですね」
そう話すフィレンの表情に、神父は思わず背筋が凍り付くのであった。
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