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第41話 一夜明けて
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しばらくするとランスと家令が呼びに行った自警団が駆けつけて、その場に居た者たちは全員が無事に救い出された。珍しい獣やら人外やらがたくさん居て、やって来た自警団たちは騒然となったものである。自分たちが守る街の地下でこんな凄惨な事が起きていようとは思っていなかったからだ。救出する自警団たちは最低限の言葉以外は発する事なく、黙々と運び出していた。
モエの胞子の効果か、外傷自体はかなり目立たない状態になっていたものの、心に負った傷まではそう簡単に癒えない。しばらくは領都内で経過観察となったのだった。
「はあ、あんな大悪党がこの街に潜んでいた事ははっきり言って我が一族としてはかなりの汚点だよ。国王陛下もそうだが、先祖にも顔向けはできないな」
報告を聞いたガーティス子爵は、部屋で頭を抱えながらため息を吐いていた。なにせ発見された人外の数が多かったので、その対処には苦慮せざるを得なかった。
屋敷からも使用人を何人か回そうとするものの、はたしてケアしきれるのかという不安しかなかった。なにせ、置かれていた環境が劣悪すぎたために、他人に対してかなりの警戒心を持っている。なんといっても、これが最大の障害なのである。
思い悩んだ子爵は、部屋にイジスとモエを呼びつけた。
「何でしょうか、父上」
「あの、何でしょうか……」
ピシッと立つイジスに対して、モエはおどおどとしながら子爵の前に姿を現した。ちなみにルスは別室でプリズムウルフと待機中である。
「うむ、先日救出された人外たちの世話を任せようと思う。屋敷や街の人間を回そうと思ったのだが、彼らの警戒が強すぎて対処が不可能なようなんだ。同じ人外であるモエならば、彼らの警戒心も弱まると思うだろうからな」
「なるほど……」
子爵の説明に、イジスは納得していたようだ。
「しかし、それでしたらなぜ私まで出向く事に?」
当然思い浮かぶ疑問である。人間に対して心を開かないというのであれば、イジスだって同様の扱い、立場になるはずである。いまいち子爵の狙いが分からない。
しかし、だからといってモエを一人で行かせるのも忍びない。
「分かりました。その役目、立派に果たしてみましょう」
イジスは救出された人外の世話の任務を引き受ける事にした。
「そうか……。では、頼むぞ。グリム、プリズムウルフやルスも連れて、イジスたちを彼らの保護場所まで連れて行ってくれ」
「畏まりました」
グリムは一礼すると、すぐさま馬車を準備するべく部屋を出ていった。それに続いてイジスも出て行こうとする。
「さあ、モエ。私たちも行くぞ」
「えっ……、はい」
差し出されたイジスの手。モエは戸惑いながらもその手を取っていた。そして、一緒に部屋を出て行く二人を見ながら、どういうわけか子爵はほっとした様子をしていた。
『それで、お前たち二人が連中の世話をする事になったのか』
馬車に乗るプリズムウルフがイジスたちに話し掛けている。
「ああ。人間たちは人外の相手はあまりしたがらないから、体のいい押し付けといったところだよ。でも、誰かがやらなきゃいけないからには、私は逃げるつもりはない」
『ふむ、そうか。お前に我が子が懐くのも分かる気がするな』
「くぅん」
プリズムウルフがイジスを評価しながらルスの事を撫でると、ルスは小さく鳴いていた。
「しかし、プリズムウルフに同行してもらえるのは助かるな。人外だと人間の言葉が通じないものも居るだろうからな」
イジスは隣のモエに視線を送りながら、プリズムウルフに声を掛けている。
『どこを見ながら言っておるのだ、小僧。それと、同行するのは我が子の受けた恩に報いるためだ。別にお前たちのためではない』
イジスにツッコミを入れながら、プリズムウルフは照れたように話している。この狼もツンデレのようである。
それはさておき、イジスたちは救い出された人外たちの保護されている場所へとやって来た。場所は領都内にある自警団から少し離れた場所にある空き家である。本当は自警団の近くに置きたかったものの、捕まえた悪党たちの近くでは落ち着かないだろうという事で、急遽空き家を一棟借り上げたのである。
部屋ごとにある程度種族をまとめているものの、あまり広くないので狭いスペースに10何体を押し込める状況になっている。それでも悪党のアジトに居た頃に比べれば広い。
「これはイジス様。よくお越し下さいました」
警備にあたっている兵士がイジスたちを出迎える。
「ご苦労だな。みんなの様子はどうだ?」
「はい、怯えはあるものの、今のところは落ち着いております。ですが、お気を付け下さいませ」
「そうか……。引き続き周りを警戒しておいてくれ」
「はっ!」
警備にあたる兵と言葉を交わすイジス。そのやり取りを終えるとモエたちの方を見る。
「それじゃ行こうか」
「はい」
「わうっ!」
イジスに声を掛けられて、モエとルスが反応する。それに対して、プリズムウルフはやれやれといった顔をしている。そして、同行している家令と共に建物へと入っていった。
ガーティス子爵領の領都で起きた事件の後始末。イジスたちは無事にこの問題を解決できるのだろうか。その表情は緊張に満ちていた。
モエの胞子の効果か、外傷自体はかなり目立たない状態になっていたものの、心に負った傷まではそう簡単に癒えない。しばらくは領都内で経過観察となったのだった。
「はあ、あんな大悪党がこの街に潜んでいた事ははっきり言って我が一族としてはかなりの汚点だよ。国王陛下もそうだが、先祖にも顔向けはできないな」
報告を聞いたガーティス子爵は、部屋で頭を抱えながらため息を吐いていた。なにせ発見された人外の数が多かったので、その対処には苦慮せざるを得なかった。
屋敷からも使用人を何人か回そうとするものの、はたしてケアしきれるのかという不安しかなかった。なにせ、置かれていた環境が劣悪すぎたために、他人に対してかなりの警戒心を持っている。なんといっても、これが最大の障害なのである。
思い悩んだ子爵は、部屋にイジスとモエを呼びつけた。
「何でしょうか、父上」
「あの、何でしょうか……」
ピシッと立つイジスに対して、モエはおどおどとしながら子爵の前に姿を現した。ちなみにルスは別室でプリズムウルフと待機中である。
「うむ、先日救出された人外たちの世話を任せようと思う。屋敷や街の人間を回そうと思ったのだが、彼らの警戒が強すぎて対処が不可能なようなんだ。同じ人外であるモエならば、彼らの警戒心も弱まると思うだろうからな」
「なるほど……」
子爵の説明に、イジスは納得していたようだ。
「しかし、それでしたらなぜ私まで出向く事に?」
当然思い浮かぶ疑問である。人間に対して心を開かないというのであれば、イジスだって同様の扱い、立場になるはずである。いまいち子爵の狙いが分からない。
しかし、だからといってモエを一人で行かせるのも忍びない。
「分かりました。その役目、立派に果たしてみましょう」
イジスは救出された人外の世話の任務を引き受ける事にした。
「そうか……。では、頼むぞ。グリム、プリズムウルフやルスも連れて、イジスたちを彼らの保護場所まで連れて行ってくれ」
「畏まりました」
グリムは一礼すると、すぐさま馬車を準備するべく部屋を出ていった。それに続いてイジスも出て行こうとする。
「さあ、モエ。私たちも行くぞ」
「えっ……、はい」
差し出されたイジスの手。モエは戸惑いながらもその手を取っていた。そして、一緒に部屋を出て行く二人を見ながら、どういうわけか子爵はほっとした様子をしていた。
『それで、お前たち二人が連中の世話をする事になったのか』
馬車に乗るプリズムウルフがイジスたちに話し掛けている。
「ああ。人間たちは人外の相手はあまりしたがらないから、体のいい押し付けといったところだよ。でも、誰かがやらなきゃいけないからには、私は逃げるつもりはない」
『ふむ、そうか。お前に我が子が懐くのも分かる気がするな』
「くぅん」
プリズムウルフがイジスを評価しながらルスの事を撫でると、ルスは小さく鳴いていた。
「しかし、プリズムウルフに同行してもらえるのは助かるな。人外だと人間の言葉が通じないものも居るだろうからな」
イジスは隣のモエに視線を送りながら、プリズムウルフに声を掛けている。
『どこを見ながら言っておるのだ、小僧。それと、同行するのは我が子の受けた恩に報いるためだ。別にお前たちのためではない』
イジスにツッコミを入れながら、プリズムウルフは照れたように話している。この狼もツンデレのようである。
それはさておき、イジスたちは救い出された人外たちの保護されている場所へとやって来た。場所は領都内にある自警団から少し離れた場所にある空き家である。本当は自警団の近くに置きたかったものの、捕まえた悪党たちの近くでは落ち着かないだろうという事で、急遽空き家を一棟借り上げたのである。
部屋ごとにある程度種族をまとめているものの、あまり広くないので狭いスペースに10何体を押し込める状況になっている。それでも悪党のアジトに居た頃に比べれば広い。
「これはイジス様。よくお越し下さいました」
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「はい、怯えはあるものの、今のところは落ち着いております。ですが、お気を付け下さいませ」
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「わうっ!」
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