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第38話 決着
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狭くて思うように動けないプリズムウルフ。相手のお頭も体がでかいとはいえ、所詮は人間。プリズムウルフに比べれば体躯は小さいのだ。
「おらおら、どうした。最初の勢いはどこへ行ったんだ?!」
有利に事を運べているお頭が調子に乗っている。
プリズムウルフを追い詰めてるにつれて、お頭の口角がどんどんと上がっていく。そして、
「おらぁっ、後がないようだな! 食らいやがれっ!」
建物に追い詰めたお頭が、プリズムウルフに向けて棍棒を力いっぱい振り抜く!
ついにお頭の棍棒がプリズムウルフを捉えたかに思えた。だが、そこにはおかしな手応えがあった。
「ぬう? なんだこれは?」
ドガンという音と共に、ガラガラと崩れていく建物の壁。
確かにお頭の棍棒はプリズムウルフを捉えたはずである。それだというのに、何か石のようなものを殴りつけた感触と音しかなく、お頭は面食らっていた。
『ふん、我の能力をなんと心得るか! 所詮、人間など視覚にしか頼れぬ愚か者ということよ!』
お頭の目の前のプリズムウルフがゆらりと揺らいで姿を消す。
……なんと、虚像だったのだ!
そう、プリズムウルフは光を操る聖獣だ。薄暗い場所とはいえ、その少ない光を巧みに操ってお頭に自分の幻を見せていたのである。実際のプリズムウルフはまったく違う場所に居たのだ。
「けぇっ! この俺様を虚仮にするとは、犬っころの分際でぇっ!!」
思わぬ一人相撲を取らされたお頭は、かなり激昂している。
「そこかあっ!」
お頭が力強く棍棒を振るが、再び空を切る。あまりにおちょくられるがために、お頭は段々と冷静さを失っていっている。
「くそがっ! 犬っころの分際でどこまでも!」
『ふん。我が犬っころだというのなら、お前は猿だな。力を振るい吠えまくるお前なんぞ、品のないそこらの猿となんら変わりがないわ!』
「おのれぇっ!」
プリズムウルフの安い煽りに、お頭はますますブチ切れていく。そして、声を頼りに棍棒を振りかざして突っ込んでいく。
そのお頭の攻撃は間違いなくプリズムウルフの居る場所へと突っ込んでいっているのだが、プリズムウルフは動く事なく冷静に構えていた。
『ふん、冷静さを失ったお前の攻撃など恐るに足りん。自分の今どういう状況に居るかも分からんようでは、まったく相手にならんぞ』
「なんだと?! ほざけっ!」
力一杯振りかぶったお頭の攻撃が、プリズムウルフを襲う。だが、その攻撃は間一髪届く事はなかった。
「かはっ!!」
「本当に隙だらけだな……」
「こ、小僧。お前、手下の攻撃で動けなかったはずでは?」
自分を斬りつけた相手に、お頭は酷く驚く。それもそのはず。自分を斬りつけたのは、先程手下に襲われて手負いとなって動けなくなっていたはずのイジスなのだから。
だが、イジスには傷も疲労感もない。
ここにはポーションも治癒魔法の使い手も居ないというのに、どうやってイジスの傷が回復したのか。お頭は斬られながらもフルに頭を回転させる。
「……そうか、お前かっ!」
お頭は、斬られた傷を手で押さえながらも、そこに居た唯一のイレギュラーであるモエを目がけて突進していく。
「しまった……、モエ!」
相手が手傷を負っていたがゆえに、行動に対する反応が遅れてしまったイジス。
しかも相手の動きが速いがために、とても間に合いそうにない。
『困ったものだな。我が子の恩人を攻撃されては……』
そこにプリズムウルフの咆哮が響き渡る。
「ぐうっ!」
お頭は手負いだったがために、咆哮による突風によってバランスを崩す。
「うおおおっ!!」
バランスを崩して動きが鈍ったお頭に対して、イジスが詰め寄っていく。
「モエに手を出させてたまるものか! 私が守るんだ!」
「ぐぬぅっ!!」
イジスの攻撃が、お頭の棍棒を持つ腕を斬りつけた。それによって、お頭は棍棒を落としてしまう。
「この俺が……っ! ただで、負けてなるものか! てめぇも、一緒にくたばりやがれ!」
お頭は攻撃された事で目標をモエからイジスに切り替える。全体重を乗せた突撃をイジスへと放つ!
「氷よ! 穿て!」
その瞬間、どこからともなく氷柱が降り注ぐ。それはお頭を取り囲むように地面へと突き刺さり、お頭は身動きが取れなくなってしまった。
「なんだ、これは! うおおおっ!!」
お頭は氷に体当たりをするが、冷たい感触受けるだけで、まったくびくともしなかった。
「無駄だ。その氷はお前ごときでは破壊できぬ」
「父上!」
「あ、あれ? ルス、いつの間に!」
そこへ現れたのは、イジスの父親であるガーティス子爵だった。その足元にはモエに抱かれていたはずのルスが居たのだった。
どうやら、戦いの最中にモエの手を抜け出して子爵を呼びに行ったようだった。お手柄である。
「自警団よ、奴らを全員捕らえろ!」
「はっ!」
子爵の後から遅れてやって来た自警団たちによって、その場に居たお頭とその手下たちは全員捕らえられてしまった。手下たちは完全にのびていたので捕らえるのはとても楽だったという。
こうして、領都の一角で起きた騒ぎは、無事に解決したのであった。
「おらおら、どうした。最初の勢いはどこへ行ったんだ?!」
有利に事を運べているお頭が調子に乗っている。
プリズムウルフを追い詰めてるにつれて、お頭の口角がどんどんと上がっていく。そして、
「おらぁっ、後がないようだな! 食らいやがれっ!」
建物に追い詰めたお頭が、プリズムウルフに向けて棍棒を力いっぱい振り抜く!
ついにお頭の棍棒がプリズムウルフを捉えたかに思えた。だが、そこにはおかしな手応えがあった。
「ぬう? なんだこれは?」
ドガンという音と共に、ガラガラと崩れていく建物の壁。
確かにお頭の棍棒はプリズムウルフを捉えたはずである。それだというのに、何か石のようなものを殴りつけた感触と音しかなく、お頭は面食らっていた。
『ふん、我の能力をなんと心得るか! 所詮、人間など視覚にしか頼れぬ愚か者ということよ!』
お頭の目の前のプリズムウルフがゆらりと揺らいで姿を消す。
……なんと、虚像だったのだ!
そう、プリズムウルフは光を操る聖獣だ。薄暗い場所とはいえ、その少ない光を巧みに操ってお頭に自分の幻を見せていたのである。実際のプリズムウルフはまったく違う場所に居たのだ。
「けぇっ! この俺様を虚仮にするとは、犬っころの分際でぇっ!!」
思わぬ一人相撲を取らされたお頭は、かなり激昂している。
「そこかあっ!」
お頭が力強く棍棒を振るが、再び空を切る。あまりにおちょくられるがために、お頭は段々と冷静さを失っていっている。
「くそがっ! 犬っころの分際でどこまでも!」
『ふん。我が犬っころだというのなら、お前は猿だな。力を振るい吠えまくるお前なんぞ、品のないそこらの猿となんら変わりがないわ!』
「おのれぇっ!」
プリズムウルフの安い煽りに、お頭はますますブチ切れていく。そして、声を頼りに棍棒を振りかざして突っ込んでいく。
そのお頭の攻撃は間違いなくプリズムウルフの居る場所へと突っ込んでいっているのだが、プリズムウルフは動く事なく冷静に構えていた。
『ふん、冷静さを失ったお前の攻撃など恐るに足りん。自分の今どういう状況に居るかも分からんようでは、まったく相手にならんぞ』
「なんだと?! ほざけっ!」
力一杯振りかぶったお頭の攻撃が、プリズムウルフを襲う。だが、その攻撃は間一髪届く事はなかった。
「かはっ!!」
「本当に隙だらけだな……」
「こ、小僧。お前、手下の攻撃で動けなかったはずでは?」
自分を斬りつけた相手に、お頭は酷く驚く。それもそのはず。自分を斬りつけたのは、先程手下に襲われて手負いとなって動けなくなっていたはずのイジスなのだから。
だが、イジスには傷も疲労感もない。
ここにはポーションも治癒魔法の使い手も居ないというのに、どうやってイジスの傷が回復したのか。お頭は斬られながらもフルに頭を回転させる。
「……そうか、お前かっ!」
お頭は、斬られた傷を手で押さえながらも、そこに居た唯一のイレギュラーであるモエを目がけて突進していく。
「しまった……、モエ!」
相手が手傷を負っていたがゆえに、行動に対する反応が遅れてしまったイジス。
しかも相手の動きが速いがために、とても間に合いそうにない。
『困ったものだな。我が子の恩人を攻撃されては……』
そこにプリズムウルフの咆哮が響き渡る。
「ぐうっ!」
お頭は手負いだったがために、咆哮による突風によってバランスを崩す。
「うおおおっ!!」
バランスを崩して動きが鈍ったお頭に対して、イジスが詰め寄っていく。
「モエに手を出させてたまるものか! 私が守るんだ!」
「ぐぬぅっ!!」
イジスの攻撃が、お頭の棍棒を持つ腕を斬りつけた。それによって、お頭は棍棒を落としてしまう。
「この俺が……っ! ただで、負けてなるものか! てめぇも、一緒にくたばりやがれ!」
お頭は攻撃された事で目標をモエからイジスに切り替える。全体重を乗せた突撃をイジスへと放つ!
「氷よ! 穿て!」
その瞬間、どこからともなく氷柱が降り注ぐ。それはお頭を取り囲むように地面へと突き刺さり、お頭は身動きが取れなくなってしまった。
「なんだ、これは! うおおおっ!!」
お頭は氷に体当たりをするが、冷たい感触受けるだけで、まったくびくともしなかった。
「無駄だ。その氷はお前ごときでは破壊できぬ」
「父上!」
「あ、あれ? ルス、いつの間に!」
そこへ現れたのは、イジスの父親であるガーティス子爵だった。その足元にはモエに抱かれていたはずのルスが居たのだった。
どうやら、戦いの最中にモエの手を抜け出して子爵を呼びに行ったようだった。お手柄である。
「自警団よ、奴らを全員捕らえろ!」
「はっ!」
子爵の後から遅れてやって来た自警団たちによって、その場に居たお頭とその手下たちは全員捕らえられてしまった。手下たちは完全にのびていたので捕らえるのはとても楽だったという。
こうして、領都の一角で起きた騒ぎは、無事に解決したのであった。
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