転生失敗!日本産幽霊は異世界を駆ける~復活の秘宝を求めて~

テイルズオブオッサン

文字の大きさ
上 下
1 / 2

転生失敗!

しおりを挟む
整った顔立ちの黒髪美少女が、俺に優しく微笑みかけている。
切れ長で少し垂れ目の眼差し。

つい先日、彼女になったばかりの来世 麗子だ。

「麗子・・・・・・部長・・・・・・」

傍目から見れば、あるいは抱き合ってるように映るかもしれないこの光景。
しかし、俺の腹部には庖丁が生えていた。

「あなたがいけないのよ霊太くん。私と言う彼女がいながら、他の学年の子と帰るなんて」

来世 麗子はヤンデレだった。

「・・・・・・あれは、妹だから」

血を吐きながら応える。

「・・・・・・・・・・・」

つぃっと目を逸らす麗子部長。

「お、おい・・・・・・っど、どうしてくれるんだよ。どす黒い血が流れてるぞ。これ、助からねーやつだろっ」

「大丈夫。霊太くん、あなた一人で逝かせない」

ヤダ・・・・・・決然とした表情の部長、かっこいい。

・・・・・・なんて思うわけないだろ。
完全にイかれてますわ。サイコパスですわ。

麗子部長は、俺がヘイトを溜めて見ている前で、なんてことない、といった動作で俺の血が付いた庖丁を首にあてがい、躊躇なく真一文字に引き裂いてしまった。

鮮血が俺の顔に振り掛かる。
麗子部長は血反吐を吐きながらも微笑み。口付けをしてきた。

またね・・・・・・。

それが最後に聞いた言葉。

まったく。
ヤンデレが許されるのは二次元だけだな。
そんなことを思いながら、俺の意識は深い暗闇へと落ちていった。

こうして、俺は高校1年の春。
あっけなく人生の幕を閉げた。










暗い。
真っ暗だ、何も見えない。
音も聞こえない。

・・・・・・ここがあの世か。


・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・え?


まさか意識がある状態で、ずっとこのまま、なんてことないよな。

いやいやいや。やめてくれ。

こんなの気がおかしくなる。

そんなの地獄だ。
ていうか、ここは地獄なのか?

あばばばっと無様に俺が取り乱していると突然、目の前の空間にスポットライトのような光が灯った。
まるでなにかのショーの演出のように紙吹雪も落ちてくる。

円状に照らされた中央には、綺麗なドレスを着た女性がノリノリな様子でヘンテコなポーズをとって立っていた。

「じゃ~ん!という訳でー、最近のラノベで流行ネタ。憧れの転生はっじまっるよぉ~」

「転生・・・・・・それって、チート使って異世界救っちゃう奴か?」

「おっ話が早くて助かるわねぇ!今なら生まれながらの勝ち組。貴族の子として第二の人生を謳歌できるわよー」

「うおおぉーッ・・・・・・!」

まじか、最高じゃないか。
もういくら美少女でもヤンデレはごめんだ。
今度はまともな彼女をつくるぞ。

「さらにさらに、今なら超有能な女神から沢山加護をつけちゃうぞー」

「やったーッ!やるやるっがんばるぞーっ!」

こんなん即決に決まってるだろ!

「そんじゃ、いってら~」
「ひゃっほぉーぅっ!」

ぱっとテレビの番組を変えるかのごとく、視界が一瞬で変化する。
眼下には未知の惑星が広がっていた。

「おおーっ!これが異世界かー。青くて広いなー」

俺のスーパーソウルは大気圏へ降下するモビルスーツのように猛スピードで落ちていく。

幾つもの雲の層を突き抜け、広大で豊かな大地が視界一杯に広がる。

そのまま流星のごとく、グングン地表へと接近、やがて大きな町が見えてきた。

ディ○ニーランドのような白亜の城が見え、その近郊に建つ大きな屋敷へと降りていく。

そして、その中に住む、新たな生命を宿す女性の元へ――――――


――――うふふ。
まって。霊太くん。


刹那。
聞き覚えのある声が、背後から掛けられた。

「へっ!?」

お腹の胎児まで後僅かな地点で、弾かれたように後方へと引き戻される。

「ちょっ!?」

まるでバンジージャンプのように、来た時と同じ速度で急速に引き戻されていく。

「うおおぉっ!な、なんだっ!?どうなってる!?ど、どこにいくんだよこれっ」

景色が目まぐるしく変わる。

広大な町から離れ、幾つもの山を抜ける。
川を越え、海を越え、草原を通り過ぎても尚止まらない。

「ぶひぇっんっ!」

俺は結局どこかの森に転がり落ちてしまった。

「ほああああぁ・・・・・・なにがどうなってるんだぁ~・・・・・・」

意識がぐるぐる回るような感覚だ。
しばらくすると頭の中に、つい先ほど対話した女神の声が響いてきた。

「いやー長いことやってるけど、こんなの始めてのことよ。凄いわぁ。愛の力ねぇ~!」

「おい。どうなってるのか説明してくれっ!」

「メンゴメンゴ。本来なら君が転生するはずだった枠に割り込まれてしまったみたい」

「わ、割り込み!?割り込みってなんだよ!そんなのっ・・・・・・・そんなの、マナー違反だろうが・・・・・・っ!!」

「ちなみに代わって転生成功したのは、君を殺した来世 麗子ちゃん!」

「な、なんだってーっ!?」

「君の魂に強力な呪いをかけて、異世界にまで強引に付いてくるなんて、なんて情熱なの~」

「の、呪い!?なにそれ!麗子さんマジ怖い!」

「とまあ、そんな感じの強引な引き合いと反動で、君のしょぼいソウルは弾かれちゃった訳なのよ」

「や、やり直しを要求するッ!」

「むりよぉ」

「そ、それじゃぁ俺はこれからどうなるんだ?」

「う~ん・・・・・・わかんにゃい」

「おい」

「もう魂がそっちの世界に移動した以上、私は直接干渉できないのよね」

「このまま放置かよ!無責任にも程があるだろ!」

「でもまー、加護もちゃんとついてるし?この世界って死者が復活しちゃう方法もあるらしいし?」

「えっ死者が復活?そんな事が可能なのか!?どうすればいい?」

「それを教えたら面白くないでしょ?」

「いやいやお前を楽しませるために転生失敗した訳じゃねーから!」

「サービスで元の肉体もアイテムボックスに送っておくから。後は自分で何とかしてよ」

「そんなんでどうしろっていうんだよ糞女神」

「天罰」

「ぎゃああああああッいっててててててっ!」

電流が流れるような痛みが全身を襲う。

「干渉できないとか嘘じゃねーかコラ!」

「それじゃがんばってねー」

一方的に対話を打ち切り、糞女神の声が遠ざかってゆく。

うううう。
チートでイージーライフのはずだったのに、こんなのって酷いじゃないか。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 旧名「異世界でひっそりと暮らしたいのですが」  俺──柊 秋人は交通事故で死んでしまった。  気付き目を開けると、目の前には自称女神様を名乗る神様がいた。そんな女神様は俺を転生させてくれた。  俺の転生する世界、そこは剣と魔法が飛び交うファンタジー世界!  その転生先はなんと、色鮮やかな花々が咲き乱れる楽園──ではなかった。  神に見放され、英雄や勇者すら帰ることはないとされる土地、その名は世界最凶最難関ダンジョン『死を呼ぶ終焉の森』。  転生から1年経った俺は、その森の暮らしに適応していた。  そして、転生してから世界を観てないので、森を出た俺は家を建ててひっそりと暮らすも次々と巻き込まれることに──……!?

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

処理中です...