8 / 8
護衛隊
しおりを挟む
残る障害は、横一列に並んだ100人程の騎士共。
アリーザのように全身を鋼鉄の鎧でまとい、統率された動きを見せている。
「なんだっあの馬鹿げた魔力はッ・・・!?」
騎士共の後ろに配置された、豪奢なローブを着た集団の呟く声が聞こえてくる。
「怯むな!トーレス将軍をお守りしろッ!」
俺の姿を確認すると、即座に身を隠せる程の大盾を構え、槍が並べられる。
どう見てもすり抜けるような隙間は無さそうだ。
「あれは護衛隊だろうな。レオルノコス軍の精鋭だ、正念場だぞユーマ」
などとお姫様抱っこされたアリーザが解説する。
「・・・・・・大げさすぎるって」
苛立ちと共に勢いを殺すことなく最後の集団に突っ込む。
「来るぞッ!」
「結界を張れ!」
「うぉああああああああああッ!」
ヤケクソ気味に叫びながら、槍の穂先に接触するギリギリの地点で勢いをつけ、思い切り地面に踏み込む。
足元の地面がひび割れ、陥没し、爆発したように砕けた。
全力疾走からの跳躍。
視線を下げ地上の方を見ると、身構えていた鎧の騎士共が俺を見上げ、呆気にとられた顔をしている。
してやったりな気持ちになったのも束の間、一呼吸置いて高速で様々なモノが飛来してきた。
空中を跳躍している最中の俺はアリーザを抱え、姿勢を丸める以外に成す術が無い。
炎や氷塊、石といった攻撃の幾つかが身体に命中していく。
大丈夫、今の俺ならこれ位で死にはしない筈だ。
様々な痛みに堪えながらも、最後の集団を飛び越え、徐々に降下していく。
上手く着地しないと、あっという間に袋叩きにされそうだ。
衝撃に備え、両足を揃えて地面に接触させる。
「うわっととととっとっ」
まるで氷の上でスケートをしてるかのように、長い距離の地面を削りながら滑っていく。
姿勢のバランスを崩しかけながらも、なんとか持ち直し着地地点から数百メートルと滑ってようやく止まる。
靴底が全て削れたが、なんとか着地成功だ。
まだしつこく遠距離攻撃が飛んでくるが、着弾までにその殆どがバラけている。
着地による砂埃が意図せず目くらましになっているようだ。
「くそッ!なんて奴だ!」
「撃て撃て!撃ち続けろ!」
後はひたすら全速力で走って引き離すだけの簡単なお仕事。
背後からの狙い撃ちを反らすため、できる限り不規則にジグザクに動き続ける。
しだいに兵士達の喧騒が遠のいていく。
飛来する脅威も少なくなり、それも数分走る内に完全に途絶えた。
「はああ・・・・・・やっと諦めたか。しつこ過ぎるってあいつら」
とりあえずの危機は脱したが、それでも走り続ける。
魔物の群れは、じきにあの集団とぶつかるだろう。
問答無用で俺を殺そうとしてきたような連中だ、流石にもう未練は無いさ。
せいぜい足止めになってもらおう。
「・・・・・・今しがたのユーマの動きを見て確信した」
危機を脱しても黙りこくっていたアリーザが口を開く。
「なんのことだ?」
「俄かには信じがたいことだがユーマ、お前は勇者様と魔王を殺したことでその力を継承した可能性がある」
「まじっスか」
「マジだ」
アリーザの説明いわく、この世界は生き物を殺すとその力が幾らか宿ると信じられているそうだ。
ゲームでよくある経験値みたいなものだろうか?
俺の体の変化はそういうことなのか。
「だが力のみならず外見からしてこれほどの変容するという話は、聞いたことがないし見たこともない」
力が宿ると言っても、あくまでほんの一部。全てを引き継ぐことはない、というのが一般の常識だという。
「勇者様や魔王は規格外の存在だ。例え一部でもその力は膨大で影響が大きかったのかもしれん」
◆
◇
◆
レオルノコスの軍隊を強引に回避し、走り続けて数時間。
速度は落ちることなく、むしろ上がり続けていた。
歩幅の間隔が凄いことになっている。
力の入れる方向を少しでも変えただけでまた大ジャンプしそうだ。
だというのに一度も息切れをしていない。
それどころか、力が溢れてくる。
勇者と魔王の力すごい。
「そろそろ降ろしてくれユーマ」
「もう大丈夫なのか?」
「ありがとう。お陰で魔力も大分回復した」
確かに傍から見ても顔色が随分よくなった。
「ユーマにはまた命を救われたな・・・・・・」
「そうだな、2回くらいは命の危機を救ったな」
「あ、ああ。返しきれぬ恩義がある。私に出来る事なら・・・」
「デートしてくれ」
「え?」
「この世界の町でデートしよう」
「デ、デート・・・・・・私としてはこう、騎士として報いることをしたいのだが」
「駄目だデートだ」
「っわ、わかった機会があれば」
やった。やったぞ。
これは大いなる一歩だ。
アリーザのように全身を鋼鉄の鎧でまとい、統率された動きを見せている。
「なんだっあの馬鹿げた魔力はッ・・・!?」
騎士共の後ろに配置された、豪奢なローブを着た集団の呟く声が聞こえてくる。
「怯むな!トーレス将軍をお守りしろッ!」
俺の姿を確認すると、即座に身を隠せる程の大盾を構え、槍が並べられる。
どう見てもすり抜けるような隙間は無さそうだ。
「あれは護衛隊だろうな。レオルノコス軍の精鋭だ、正念場だぞユーマ」
などとお姫様抱っこされたアリーザが解説する。
「・・・・・・大げさすぎるって」
苛立ちと共に勢いを殺すことなく最後の集団に突っ込む。
「来るぞッ!」
「結界を張れ!」
「うぉああああああああああッ!」
ヤケクソ気味に叫びながら、槍の穂先に接触するギリギリの地点で勢いをつけ、思い切り地面に踏み込む。
足元の地面がひび割れ、陥没し、爆発したように砕けた。
全力疾走からの跳躍。
視線を下げ地上の方を見ると、身構えていた鎧の騎士共が俺を見上げ、呆気にとられた顔をしている。
してやったりな気持ちになったのも束の間、一呼吸置いて高速で様々なモノが飛来してきた。
空中を跳躍している最中の俺はアリーザを抱え、姿勢を丸める以外に成す術が無い。
炎や氷塊、石といった攻撃の幾つかが身体に命中していく。
大丈夫、今の俺ならこれ位で死にはしない筈だ。
様々な痛みに堪えながらも、最後の集団を飛び越え、徐々に降下していく。
上手く着地しないと、あっという間に袋叩きにされそうだ。
衝撃に備え、両足を揃えて地面に接触させる。
「うわっととととっとっ」
まるで氷の上でスケートをしてるかのように、長い距離の地面を削りながら滑っていく。
姿勢のバランスを崩しかけながらも、なんとか持ち直し着地地点から数百メートルと滑ってようやく止まる。
靴底が全て削れたが、なんとか着地成功だ。
まだしつこく遠距離攻撃が飛んでくるが、着弾までにその殆どがバラけている。
着地による砂埃が意図せず目くらましになっているようだ。
「くそッ!なんて奴だ!」
「撃て撃て!撃ち続けろ!」
後はひたすら全速力で走って引き離すだけの簡単なお仕事。
背後からの狙い撃ちを反らすため、できる限り不規則にジグザクに動き続ける。
しだいに兵士達の喧騒が遠のいていく。
飛来する脅威も少なくなり、それも数分走る内に完全に途絶えた。
「はああ・・・・・・やっと諦めたか。しつこ過ぎるってあいつら」
とりあえずの危機は脱したが、それでも走り続ける。
魔物の群れは、じきにあの集団とぶつかるだろう。
問答無用で俺を殺そうとしてきたような連中だ、流石にもう未練は無いさ。
せいぜい足止めになってもらおう。
「・・・・・・今しがたのユーマの動きを見て確信した」
危機を脱しても黙りこくっていたアリーザが口を開く。
「なんのことだ?」
「俄かには信じがたいことだがユーマ、お前は勇者様と魔王を殺したことでその力を継承した可能性がある」
「まじっスか」
「マジだ」
アリーザの説明いわく、この世界は生き物を殺すとその力が幾らか宿ると信じられているそうだ。
ゲームでよくある経験値みたいなものだろうか?
俺の体の変化はそういうことなのか。
「だが力のみならず外見からしてこれほどの変容するという話は、聞いたことがないし見たこともない」
力が宿ると言っても、あくまでほんの一部。全てを引き継ぐことはない、というのが一般の常識だという。
「勇者様や魔王は規格外の存在だ。例え一部でもその力は膨大で影響が大きかったのかもしれん」
◆
◇
◆
レオルノコスの軍隊を強引に回避し、走り続けて数時間。
速度は落ちることなく、むしろ上がり続けていた。
歩幅の間隔が凄いことになっている。
力の入れる方向を少しでも変えただけでまた大ジャンプしそうだ。
だというのに一度も息切れをしていない。
それどころか、力が溢れてくる。
勇者と魔王の力すごい。
「そろそろ降ろしてくれユーマ」
「もう大丈夫なのか?」
「ありがとう。お陰で魔力も大分回復した」
確かに傍から見ても顔色が随分よくなった。
「ユーマにはまた命を救われたな・・・・・・」
「そうだな、2回くらいは命の危機を救ったな」
「あ、ああ。返しきれぬ恩義がある。私に出来る事なら・・・」
「デートしてくれ」
「え?」
「この世界の町でデートしよう」
「デ、デート・・・・・・私としてはこう、騎士として報いることをしたいのだが」
「駄目だデートだ」
「っわ、わかった機会があれば」
やった。やったぞ。
これは大いなる一歩だ。
0
お気に入りに追加
29
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
現代にモンスターが湧きましたが、予めレベル上げしていたので無双しますね。
えぬおー
ファンタジー
なんの取り柄もないおっさんが偶然拾ったネックレスのおかげで無双しちゃう
平 信之は、会社内で「MOBゆき」と陰口を言われるくらい取り柄もない窓際社員。人生はなんて面白くないのだろうと嘆いて帰路に着いている中、信之は異常な輝きを放つネックレスを拾う。そのネックレスは、経験値の間に行くことが出来る特殊なネックレスだった。
経験値の間に行けるようになった信之はどんどんレベルを上げ、無双し、知名度を上げていく。
もう、MOBゆきとは呼ばせないっ!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~
白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた!
もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する!
とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する!
ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか?
過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談
小説家になろうでも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる