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はじめまして
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サヴェロは店を出ると、バギーのエンジンをかけ、急発進させた。いつもは安全運転を心がけているサヴェロだが、道路を走る車と車の隙間を縫うように走り抜け、いつもの半分の時間で自宅に到着した。
バギーを家の横の小屋に停め、降りると急いで玄関を開けるサヴェロ。すぐさま二階の自室に行こうとしたところで居間から話し声が聞こえてきた。あまりに賑やかだった為、不審に思うサヴェロであったが、すぐに嫌な予感が頭を過った。
「まさか……」
サヴェロは慌てて居間に向かい、勢いよく扉を開けた。すると、そこには……
「おっ、帰ってきたな」
「あっ、お邪魔してまーす」
テーブルに着いて目の前の料理を食すメリダと、次々にテーブルに料理を運ぶサヴェロの母ジェリーの姿があった。
「……何してんの?」
帝国兵が自分の家に乗り込んでいたわけではなかったが、サヴェロのもう一つの嫌な予感は的中した。まだ家には帰ってこないだろうと思っていた母ジェリーの早期帰宅。もし少女メリダが母に見つかってしまえばややこしくなるとわかっていたのにもかかわらず、心のどこかで多分大丈夫だろうと高をくくっていた結果がこれであった。
幸せそうに食事をするメリダと嬉しそうに食事を運ぶ母親を見てサヴェロは呆気にとられてしまう。
「ちょっとサヴェロ。こんなかわいい子がいるなら早く母さんに教えなさいよ」
「え? お母さん? お姉さんじゃないんですか?」
「も~お上手ねぇメリダちゃんは~おだてたって何も出てこないわよ~」
と言いつつ、メリダの目の前に豪華な料理を並べまくるジェリー。
「ああ、そうそう。メリダちゃんが着てたピッチピチの服は目立つから、母さんが昔着てた服を着せてあげたの。サイズが合っててよかったわ」
「これ本当にありがとうございます。すっごく気に入りました」
そう言われると、メリダの服装が変わっていた。膝丈のハーフパンツに、ダボっとした上着を羽織っている。しかし、ピチっとしたスーツは脱いだわけではなくインナーとしてジェリーからもらった服の下に着ていた。
ポカンとした表情で二人のやり取りを見ていたサヴェロは、フルフルと頭を振って気を引き締めるとメリダの前に移動した。
「っていうか君、起きてて平気なの?」
「ん? 大丈夫だよ。あっ、もしかして貴方が私の事をここまで運んでくれた人? 確か私砂漠で寝てたんだっけ?」
「えっと、まぁそうなんだけど……それよりも君に伝える事があって……」
その場の雰囲気にのまれつつあったサヴェロだが、何故急いで帰ってきたのかを思い出し、その理由を口にしようとしたところで母ジェリーから「あれ? あなた達付き合ってんじゃないの?」と横槍を入れられる。
「……母さん。話がややこしくなるから少し黙ってて……っと、それより、俺のバイト先で帝国兵に君の事を訊かれたんだ。帝国兵は君の事を探しているようだったけど、一体何をしたの?」
先程までとはうってかわり、真剣な表情で帝国兵に追われる理由を問うサヴェロ。それを聞いたメリダは、
「帝国兵? 何それ?」
と、あっけらかんとした表情で答えた。思ってもみなかった反応を返されたサヴェロも「あれ?」という疑問の声が漏れる。
『詳しくは私がお話します』
話しが噛み合わず、戸惑うサヴェロに、落ち着いた声でアイオスが話しかけた。
「アイオス、そこにいたの」
アイオスはテーブルの横の棚に立て掛けられていた。
「アイオスだけ上の部屋に置きっぱなしじゃ可哀想だったから持ってきちゃった」
「あら? サヴェロはこの喋る剣の事知ってるの? アンタの部屋で会った時にいきなり話しかけられてビックリしたわよ」
「……えっと、それで、詳しい話っていうのは?」
再び母親に横槍を入れられ、話が脱線しそうになるが、サヴェロは慣れた様子で母ジェリーをスルーすると、アイオスに先を促した。
『はい。それではまず私達の事をお話しなければなりません。メリダ様、ご自身の事をお話出来ますか?』
「あそっか、そういえばちゃんとした自己紹介してなかったっけ」
メリダはそう言うと、食事をする手を止め、改めてサヴェロとジェリーに向き直った。
「ええと、私はメリダっていいます。フルネームはメリダ=アルトラクス=カーボニアです」
「! カーボニア……」
メリダの発したカーボニアという言葉に、サヴェロは思わず反応した。そして、メリダは更にサヴェロが驚愕する話を続けた。
「信じてもらえないかもしれないけど、実は私、カーボニア王国っていう所の王女だったの」
「ッ!」
「?」
メリダの話を聴いて、驚きを隠せないサヴェロと何の話をしているのかサッパリわからないジェリー。
サヴェロは何かを言いたそうに口をパクパクさせているが、頭の中がごっちゃになりうまく言葉が出てこない。一方、母ジェリーは「王女」という言葉は解ったらしく、
「へぇ~メリダちゃんお姫様なの? すごいじゃない」
と、能天気に自身の感想を述べていた。
「えっ、ちょ、ちょっと待って……カーボニアは二千年以上も昔に滅んだのに、今の話が本当ならどうして君はここにいるの?」
ようやく言葉を発する事が出来たサヴェロは、詰まりながらもメリダに質問をぶつけるが、メリダは「えーと、ずっと寝てたから?」とサヴェロもジェリーも理解し難い答えを返した。
『その辺りにつきましては私がお答えします』
そんなやり取りを見かねたアイオスが、サヴェロの疑問に答えるべく名乗りをあげた。
『まず、サヴェロ様はご存知のようですが、カーボニア王国はこの時代から約二千年もの昔に滅亡しました。二千年前に世界を巻き込んだ大きな戦争があり、その戦争で何もかもがなくってしまったのです』
「うん。それは俺も知ってる。出土した遺跡なんかにも戦争をしていた記述が残されてたから」
『すでに国そのものが滅びてしまうと確信していらしたメリダ様の父君、つまり時のカーボニア王はメリダ様だけでも生き長らえさせる為に、メリダ様を冷凍睡眠状態にし、地上より比較的安全であった宇宙へと退避させました』
あまりにもスケールの大きい話にサヴェロは「はぁ」と感嘆の吐息を洩らした。
「本当にカーボニアの文明はすごかったんだ。宇宙に行くなんて今の技術でも出来るかどうか……おっと、感心してる場合じゃなかった。そうそう、どうして君達はこのタイミングで宇宙から降りて来たの?」
『はい。ここからが本題です。時のカーボニア王はただメリダ様の身を案じて宇宙に退避させたのではありません。もう一つ重要な理由がありました。それはメリダ様の持つ特異な力を他の者に渡さない為です』
「特異な力……それってもしかして「ウィス」の事?」
アイオスの話を聴いて、思い当たる節があるサヴェロは「ウィス」という単語を口にした。それを聴いたアイオスは『ウィスをご存知なのですか?』と口調は平静なものであったが、どこか驚いているようにも聞こえた。
「一応ね」
『サヴェロ様の言う通り、その特異な力とはウィスの事に他なりません。サヴェロ様はご存知かとは思いますが、ウィスとは自然に干渉することのできる目には見えない力の総称です。ウィスは生まれ持っての資質にもよりますが、ある程度なら誰でも扱うことのできる力です。しかし、メリダ様には他の人間にはない特異な力ウィスが宿っています。それは世界のバランスを崩してしまうほどに強力なものです。カーボニア王は我が娘の命を救う為と、その力を何者にも渡さない為に苦肉の策として、メリダ様を宇宙に逃がしたのです』
サヴェロは思わず、メリダに視線を移した。他にはない特異な力を持つ少女。しかし、その本人は自分の母ジェリーと一緒に目の前にあった料理をちょくちょくつまみ食いしていた。そんな姿を見て本当にそんな力があるのだろうか? と顔を引き攣らせてしまう。
しかし、ハッと何かに気が付いたサヴェロは視線をアイオスに戻す。
「それじゃあ、君達が地上に降りて来た理由って、つまり……」
『はい。メリダ様の力を狙う者が現れたという事です』
アイオスの言葉を聴いてサヴェロは得心が行った。どうやったかはわからないが、何らかの方法で帝国はメリダの居場所を割り出し、逃げたメリダを追ってここナウィートまでやってきた。そして、まさに今帝国はサヴェロの目の前にいる少女を探している最中なのだと。
「そんなに私の力が欲しいのかなぁ。欲しけりゃあげちゃってもいいけど、絶対世界平和とかに使われないよね」
今まで目の前の料理をつまんでいたメリダがかったるそうに喋り出した。
『恐らく有意義な使われ方はしないでしょう』
「だよねぇ。あ~あ、これからどうしよっかなぁ」
それ程困ったようにも見えないが、メリダはそう言って天井を仰いだ。そんなメリダの姿を見ていたジェリーは料理をつまむ手を止めると、
「じゃあウチの子になっちゃえば?」
と、とんでもない事を言い出した。
「はぁ? 母さん何言って……」アイオスの話と同じくらい驚くサヴェロと、
「え! いいんですか?」と、喜ぶメリダ。
「子供が一人くらい増えたって問題ないわ。その代りちゃんとお手伝いはしてもらうけど」
「もっちろん。こんな美味しい料理が毎日食べられるならそのくらいやりますよ。ねぇ、アイオス」
嬉しそうにアイオスに話を振るメリダだが、アイオスからの返答は『申し訳ありませんが、それは出来ません』との事だった。
『お気持ちは大変嬉しいのですが、ここに長く留まれば必ず貴方方にご迷惑をおかけします』
「何? もしかして追手の事? へーきへーき、その辺はわかんないように努力するからさ」
『いえ、恐らく無理でしょう。衛星軌道上にいた我々を探知するほどの者達です。近いうちに見つかります』
アイオスの言葉に「うーんそっかぁ」と残念そうに項垂れるジェリー。メリダも残念そうに顔をしかめ、賑やかだったリビングに重苦しい沈黙が訪れた。
『……本当に申し訳ありません』
重い雰囲気の中、唐突にアイオスが謝罪をした。それを聴いたジェリーはパッと笑顔を作り、「いいのよもう。気にしないで」と陽気に言うが、アイオスは、
『そうではありません。既にこの家に我々がいる事が知られているようです』
と、落ち着いた声で現状を報せた。
バギーを家の横の小屋に停め、降りると急いで玄関を開けるサヴェロ。すぐさま二階の自室に行こうとしたところで居間から話し声が聞こえてきた。あまりに賑やかだった為、不審に思うサヴェロであったが、すぐに嫌な予感が頭を過った。
「まさか……」
サヴェロは慌てて居間に向かい、勢いよく扉を開けた。すると、そこには……
「おっ、帰ってきたな」
「あっ、お邪魔してまーす」
テーブルに着いて目の前の料理を食すメリダと、次々にテーブルに料理を運ぶサヴェロの母ジェリーの姿があった。
「……何してんの?」
帝国兵が自分の家に乗り込んでいたわけではなかったが、サヴェロのもう一つの嫌な予感は的中した。まだ家には帰ってこないだろうと思っていた母ジェリーの早期帰宅。もし少女メリダが母に見つかってしまえばややこしくなるとわかっていたのにもかかわらず、心のどこかで多分大丈夫だろうと高をくくっていた結果がこれであった。
幸せそうに食事をするメリダと嬉しそうに食事を運ぶ母親を見てサヴェロは呆気にとられてしまう。
「ちょっとサヴェロ。こんなかわいい子がいるなら早く母さんに教えなさいよ」
「え? お母さん? お姉さんじゃないんですか?」
「も~お上手ねぇメリダちゃんは~おだてたって何も出てこないわよ~」
と言いつつ、メリダの目の前に豪華な料理を並べまくるジェリー。
「ああ、そうそう。メリダちゃんが着てたピッチピチの服は目立つから、母さんが昔着てた服を着せてあげたの。サイズが合っててよかったわ」
「これ本当にありがとうございます。すっごく気に入りました」
そう言われると、メリダの服装が変わっていた。膝丈のハーフパンツに、ダボっとした上着を羽織っている。しかし、ピチっとしたスーツは脱いだわけではなくインナーとしてジェリーからもらった服の下に着ていた。
ポカンとした表情で二人のやり取りを見ていたサヴェロは、フルフルと頭を振って気を引き締めるとメリダの前に移動した。
「っていうか君、起きてて平気なの?」
「ん? 大丈夫だよ。あっ、もしかして貴方が私の事をここまで運んでくれた人? 確か私砂漠で寝てたんだっけ?」
「えっと、まぁそうなんだけど……それよりも君に伝える事があって……」
その場の雰囲気にのまれつつあったサヴェロだが、何故急いで帰ってきたのかを思い出し、その理由を口にしようとしたところで母ジェリーから「あれ? あなた達付き合ってんじゃないの?」と横槍を入れられる。
「……母さん。話がややこしくなるから少し黙ってて……っと、それより、俺のバイト先で帝国兵に君の事を訊かれたんだ。帝国兵は君の事を探しているようだったけど、一体何をしたの?」
先程までとはうってかわり、真剣な表情で帝国兵に追われる理由を問うサヴェロ。それを聞いたメリダは、
「帝国兵? 何それ?」
と、あっけらかんとした表情で答えた。思ってもみなかった反応を返されたサヴェロも「あれ?」という疑問の声が漏れる。
『詳しくは私がお話します』
話しが噛み合わず、戸惑うサヴェロに、落ち着いた声でアイオスが話しかけた。
「アイオス、そこにいたの」
アイオスはテーブルの横の棚に立て掛けられていた。
「アイオスだけ上の部屋に置きっぱなしじゃ可哀想だったから持ってきちゃった」
「あら? サヴェロはこの喋る剣の事知ってるの? アンタの部屋で会った時にいきなり話しかけられてビックリしたわよ」
「……えっと、それで、詳しい話っていうのは?」
再び母親に横槍を入れられ、話が脱線しそうになるが、サヴェロは慣れた様子で母ジェリーをスルーすると、アイオスに先を促した。
『はい。それではまず私達の事をお話しなければなりません。メリダ様、ご自身の事をお話出来ますか?』
「あそっか、そういえばちゃんとした自己紹介してなかったっけ」
メリダはそう言うと、食事をする手を止め、改めてサヴェロとジェリーに向き直った。
「ええと、私はメリダっていいます。フルネームはメリダ=アルトラクス=カーボニアです」
「! カーボニア……」
メリダの発したカーボニアという言葉に、サヴェロは思わず反応した。そして、メリダは更にサヴェロが驚愕する話を続けた。
「信じてもらえないかもしれないけど、実は私、カーボニア王国っていう所の王女だったの」
「ッ!」
「?」
メリダの話を聴いて、驚きを隠せないサヴェロと何の話をしているのかサッパリわからないジェリー。
サヴェロは何かを言いたそうに口をパクパクさせているが、頭の中がごっちゃになりうまく言葉が出てこない。一方、母ジェリーは「王女」という言葉は解ったらしく、
「へぇ~メリダちゃんお姫様なの? すごいじゃない」
と、能天気に自身の感想を述べていた。
「えっ、ちょ、ちょっと待って……カーボニアは二千年以上も昔に滅んだのに、今の話が本当ならどうして君はここにいるの?」
ようやく言葉を発する事が出来たサヴェロは、詰まりながらもメリダに質問をぶつけるが、メリダは「えーと、ずっと寝てたから?」とサヴェロもジェリーも理解し難い答えを返した。
『その辺りにつきましては私がお答えします』
そんなやり取りを見かねたアイオスが、サヴェロの疑問に答えるべく名乗りをあげた。
『まず、サヴェロ様はご存知のようですが、カーボニア王国はこの時代から約二千年もの昔に滅亡しました。二千年前に世界を巻き込んだ大きな戦争があり、その戦争で何もかもがなくってしまったのです』
「うん。それは俺も知ってる。出土した遺跡なんかにも戦争をしていた記述が残されてたから」
『すでに国そのものが滅びてしまうと確信していらしたメリダ様の父君、つまり時のカーボニア王はメリダ様だけでも生き長らえさせる為に、メリダ様を冷凍睡眠状態にし、地上より比較的安全であった宇宙へと退避させました』
あまりにもスケールの大きい話にサヴェロは「はぁ」と感嘆の吐息を洩らした。
「本当にカーボニアの文明はすごかったんだ。宇宙に行くなんて今の技術でも出来るかどうか……おっと、感心してる場合じゃなかった。そうそう、どうして君達はこのタイミングで宇宙から降りて来たの?」
『はい。ここからが本題です。時のカーボニア王はただメリダ様の身を案じて宇宙に退避させたのではありません。もう一つ重要な理由がありました。それはメリダ様の持つ特異な力を他の者に渡さない為です』
「特異な力……それってもしかして「ウィス」の事?」
アイオスの話を聴いて、思い当たる節があるサヴェロは「ウィス」という単語を口にした。それを聴いたアイオスは『ウィスをご存知なのですか?』と口調は平静なものであったが、どこか驚いているようにも聞こえた。
「一応ね」
『サヴェロ様の言う通り、その特異な力とはウィスの事に他なりません。サヴェロ様はご存知かとは思いますが、ウィスとは自然に干渉することのできる目には見えない力の総称です。ウィスは生まれ持っての資質にもよりますが、ある程度なら誰でも扱うことのできる力です。しかし、メリダ様には他の人間にはない特異な力ウィスが宿っています。それは世界のバランスを崩してしまうほどに強力なものです。カーボニア王は我が娘の命を救う為と、その力を何者にも渡さない為に苦肉の策として、メリダ様を宇宙に逃がしたのです』
サヴェロは思わず、メリダに視線を移した。他にはない特異な力を持つ少女。しかし、その本人は自分の母ジェリーと一緒に目の前にあった料理をちょくちょくつまみ食いしていた。そんな姿を見て本当にそんな力があるのだろうか? と顔を引き攣らせてしまう。
しかし、ハッと何かに気が付いたサヴェロは視線をアイオスに戻す。
「それじゃあ、君達が地上に降りて来た理由って、つまり……」
『はい。メリダ様の力を狙う者が現れたという事です』
アイオスの言葉を聴いてサヴェロは得心が行った。どうやったかはわからないが、何らかの方法で帝国はメリダの居場所を割り出し、逃げたメリダを追ってここナウィートまでやってきた。そして、まさに今帝国はサヴェロの目の前にいる少女を探している最中なのだと。
「そんなに私の力が欲しいのかなぁ。欲しけりゃあげちゃってもいいけど、絶対世界平和とかに使われないよね」
今まで目の前の料理をつまんでいたメリダがかったるそうに喋り出した。
『恐らく有意義な使われ方はしないでしょう』
「だよねぇ。あ~あ、これからどうしよっかなぁ」
それ程困ったようにも見えないが、メリダはそう言って天井を仰いだ。そんなメリダの姿を見ていたジェリーは料理をつまむ手を止めると、
「じゃあウチの子になっちゃえば?」
と、とんでもない事を言い出した。
「はぁ? 母さん何言って……」アイオスの話と同じくらい驚くサヴェロと、
「え! いいんですか?」と、喜ぶメリダ。
「子供が一人くらい増えたって問題ないわ。その代りちゃんとお手伝いはしてもらうけど」
「もっちろん。こんな美味しい料理が毎日食べられるならそのくらいやりますよ。ねぇ、アイオス」
嬉しそうにアイオスに話を振るメリダだが、アイオスからの返答は『申し訳ありませんが、それは出来ません』との事だった。
『お気持ちは大変嬉しいのですが、ここに長く留まれば必ず貴方方にご迷惑をおかけします』
「何? もしかして追手の事? へーきへーき、その辺はわかんないように努力するからさ」
『いえ、恐らく無理でしょう。衛星軌道上にいた我々を探知するほどの者達です。近いうちに見つかります』
アイオスの言葉に「うーんそっかぁ」と残念そうに項垂れるジェリー。メリダも残念そうに顔をしかめ、賑やかだったリビングに重苦しい沈黙が訪れた。
『……本当に申し訳ありません』
重い雰囲気の中、唐突にアイオスが謝罪をした。それを聴いたジェリーはパッと笑顔を作り、「いいのよもう。気にしないで」と陽気に言うが、アイオスは、
『そうではありません。既にこの家に我々がいる事が知られているようです』
と、落ち着いた声で現状を報せた。
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