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グローディアス王国編

タイガス達の参戦!

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広間にいる誰もが泣いていた。
筆頭侯爵はその飾らない人柄で王宮を明るく照らす光だった!
エリスは流れる涙を服の袖で拭き、自分の上着を脱いで父の亡骸の上に被せ、そして立ち上がって広間に居る人々に言った!

「さあ、皆隠し通路まで案内する!動ける者は動けぬ者に手を貸せ!出来るだけ2、3人で集まって動け!さあ!行くぞ!!」
『はい!!』
「さあ、チ~ちゃんも行こう!カディル殿下をお願いしていいかい?」
「…う…ん…」

千尋も涙が止まらなかった…この王都に来て千尋を1番に可愛がってくれた…愛してくれた人…。
パパとよんで欲しいと言われた時…本当は少し怖くて…でも嬉しかった!
もし本当の父親が生きていたら僕をこんな風に愛してくれたのかな…って思うと、とっても嬉しかったのだ。

「さあ、チ~ちゃん行くよ!父の言葉を命を無駄にしてはいけない!」
「はい!」

千尋も袖で涙を拭いて立ち上がった!
侯爵パパが守ったカディルを僕も守らねばならない!
まだ気を失ったままのカディルを千尋は女官長に言って自分の背中に背負った!

「真白!いざという時の結界をお願い!」
「うん!千尋…もうすぐ一族が来るよ!」

そう真白が言った瞬間に人形戦闘モードの月白と白夜が転移して来た!

「千尋!真白!」
「月白!白夜!!」
「何とも凄い事になっているな…」
「城に人がいるから白王も全力は出せないんだ…だから今から皆を城から脱出させる!どちらにしても、あの大きな龍が暴れていては建物の中も危ないから…」
「そういう事か…我等は一度も行った事が無い所に転移は出来ない…一族の誰かが行っていれば念話やその者の気を辿って転移が出来るが…」
「確か隠し通路の入口に白雪が行っているよ!」
「そうです!王太子殿下と白雪殿が入り口で待っております!」
「ならば私と白夜でここにいる全員を転移する事が出来る!」
「おお!!それは凄い…!!」
「じゃあ、全員を集めて一気に跳ぼう!お願い!!月白!白夜!」
「分かった!では、集まってくれ!!」
「みんな!!急いでここに集まって!!手を繋いで!!動けない人は男の人が背負って!!」
『はい!!』
「では、準備は良いか?」
「うん!」
「「では、“転移”!!」」

広間にいた人々は一瞬で移動した事に驚いた!

「白雪!!」
「皆、無事に来られたな…!」

白雪の側には眼を赤くした王太子がいた…。
きっと真白から念話で白雪経由で侯爵の事を聞いたのだろう…。
王太子は何も言わずにエリスを強く抱き締めた。
エリスも一度だけ王太子を抱き締め返してから離れた!

「さあ、行こう!ここから城の先大森林側の門の側に出る道がある!私が先導する!皆、付いて来てくれ!!」
『はい!!』

その道は大人が2人で並んで通れる幅の石畳みの道で魔術によって灯が灯されていた。
王太子の後を人々がペアになって並んで進み始めたのを見て白雪は月白と白夜に言って王都で逃げ損ねている人間を探して転移で避難所まで連れて来て欲しいと頼んだ。

「分かった…では、私と白夜でこの先に先行して行って場所を確認してから皆で手分けして動く事とする!」
「あい!お願いする!」

二本足でも早いタイガスの二人は、アッと言う間に見えなくなった。

「動けぬ者はここで暫く待つのじゃ…妾の一族が戻ったら転移であちら側に送るゆえ」
『はい!』

少し離れた場所で気を失ったカディルを、イベントリから取り出した毛布の上に寝かせて千尋は暗い顔で俯いて座り込んだ。
真白も暗い顔して千尋の横に座った…。
真白は自分の力の無さを痛烈に感じていた…そして千尋にこんな悲しい顔をさせたのが自分のせいだと凹んでいた。
千尋は千尋で侯爵を助ける力があるのに助けられなかった事の情けなさと悲しみとで凹んだ。
そこへ心配したエリスと白雪が千尋の元に来て、白雪が声を掛けた。

「千尋…真白も大丈夫か?」
「「うん…」」
「大丈夫だ千尋!侯爵は死なぬ!事が落ち着いた後、光魔法をかければいい!死んで2、3日位迄なら光魔法で復活出来るからな!」
「「「!!!」」」
「そ、そうなの?」
「そうじゃ!それだけ光魔法とは万能でとんでもない魔法なのじゃ!…まあ、千尋が生きていればこそだか…ここで千尋が死んでしまったらどうしようもない!」
「…わ、分かった…絶対死なないし元気でいる!そして侯爵パパをみんなを復活させる!!」
「チ~ちゃん…もしかして…君は神の!」
「言わないで!!…僕は特別なんかじゃ無い…光魔法は出来るけど…それだけのただの人間なの…だから…だから…」

光魔法が出来るってだけで十分ただの人間からは外れていると言ってもいいのだが…エリスは千尋の今にも泣きそうな顔を見て、今は何も言わない事が最上であると判断した。
きっと父や陛下も知っていたのだろう…だか何も言わないでいる事がチ~ちゃんの心を守る事になるなら!

「…分かった…誰にも言わないよ…だけど、お礼は言いたい!王太子殿下を助けてくれてありがとう!…それと父も復活させてやって欲しい…お願いします!!」
「うん!!」
「ふふふ…きっと恥ずかしいぞ~父上復活した時!私だったら絶対恥ずかしくて閉じ籠る!」
「そうじゃな…千尋をこんなに泣かせたのじゃ二度と死にたくならない様に思いっきり揶揄ってやるのじゃ!」
「うん!!」
「真白…其方はまだ子供なのじゃ…妾や爺爺と同じ様に力が出せるなどと思ってはならぬ!一族でも序列10位のくせに強くなったなどと思うでない!」
「母さん…」
「だから、修行じゃ!色々な経験を積んで、これから強くなっていくのじゃ!強くなる事に近道は無いと心得よ!」
「はい!!」

真白の目に炎が灯った!
そしてやっと千尋に、笑顔が溢れた…そして安心したせいで涙も溢れた…。
エリスも笑いながら泣いていた…。
そんな3人を眺めて白雪は微笑んだ。
そこに、やはり目を赤くした王様が来た。
そして千尋から白雪が語った話しをすると今度は顔を赤くして一緒に来ていた清白に小さい声で呟いた。

「清白殿…先程の私の事は誰にも言わないで欲しい…」
「…ププ…了解!」
「??」

何かやらかしたらしい王様を可愛いモノを見る目で見ている清白を千尋は不思議そうな顔で見て、白雪の目はキラリと輝いた!
城にいる全ての人が隠し通路から大森林側の門へ避難をし最後に王様と千尋達が白雪と真白、清白によって転移した。


王都で逃げ損ねた人々もタイガス達の活躍でどんどん門前の広場に集まって来ていた。
その中を千尋達は王宮庭師のロビンとその家族を探していた。

「ロビン君…ここに逃げて来て無いのかな…?…まさか!怪我してたりして!」
「う~ん…これだけ人がいっぱいだと気配も追えないよ…」
「あ!あそこは黄金の斧の人達がいる!!」
「ギルマスもいるよ!」
「行こう!真白!!」
「うん!」

冒険者ギルドのテントに集結していた冒険者達に大歓迎をうけた千尋は他の人達が無事か怪我をしていないか聞いた。

「大丈夫だチーちゃん!まあ、あんな大きな魔物に向かって行くバカはいないさ!だから俺達はギルマスの指示で民間人の避難誘導をしてたよ!…伝説の水龍に金竜、そしてタイガスだ…ある意味眼福かな?」
「確かに、冒険者としては最高に眼福だな!」
「あのね…ウチの店のソフィーさん見なかった?」
「ソフィーさんか…ここら辺では見てないな…」
「ああ…いや!さっき会ったぞ!!ソフィーさんと息子さん2人して避難先と逆の方向に走って行ってたんだ!声を掛けたけど聞こえてなかったみたいで…危ないのに水龍の方へ走って行ったみたいだった。」
「…そうなんだね…分かった!ありがとう!!」
「役に立ったならいいよ!この大騒ぎが終わったらまたカレー食べに行くよ!」
「俺はプリン食べに行くよ!奥さんと約束してるからなぁ~!」
「うん!店が開いたら来てね!!ちゃんとサービスするからね!!」
『おう!』

千尋は冒険者達と別れて今の話しを真白を通して白雪に伝えた。
白雪は千尋と真白にこちらに戻る様に念話を送り今の話しを王様に話した。

「やはり…あの水龍の玉の事を知っているのかも知れないな…」
「うむ…その様に感じる…妾と月白で元の姿に戻り上から探して見るか…元の姿なら飛べるからのぉ…」

そう話しているところに白王からの念話が届いた!

『娘!王都東側の丘に人が居る!!邪魔だから何処かに連れて行ってくれ!!水龍がそちらに行こうとして戦い難い!!』
「あい!…今父上から念話が来た!2人がいる場所が分かったぞ!!」
「!!」

その念話を聞いた千尋は真白に言った!

「お願い真白!僕をロビン君とソフィーさんがいる場所に連れて行って!」
「千尋…あそこは危ない!母さんに行って貰った方がいい!」
「僕が行く!ロビン君もソフィーさんも僕とは親しいけど白雪とはあまり面識が無い!僕なら離れる様に説得出来るし…何よりも何だか呼ばれている様な気がするんだ!」
「千尋…待って!母さんを呼ぶから!今の僕では守り切れないかも知れない…今呼ぶから!」

そう真白が言った瞬間、白雪が2人の前に転移して来た!

「千尋…本気で行くのかえ?」
「うん!行く!!!」
「分かった…では皆を呼び集める!!」

そう白雪の念話でタイガス達が全員揃って転移して来た!

「我等が千尋あるじが願い聞き届ける!皆、手を貸して欲しい!」
「分かった!!上位6位迄の白雪以外は元の姿に戻り水龍を抑える!他は千尋の周りを強力な結界で囲んで守る!」
「みんな…ありがとう!!」
『我等は千尋あるじの従魔!千尋の望みなら叶えるのが我等の役目!!』
「ううん僕は主人じゃないよ!!僕達は家族だ!そうでしょ!」
「ああ…そうじゃ!我等は家族じゃ!!」

千尋もタイガス達も笑った!
千尋に出会ってから単調だった毎日が楽しくて仕方ない!
色々な事が毎日あって…もう昔の様には暮らせなくなってしまった…。
こんな風に人の近くに居る事なんて今でも信じられない…ひと噛みで死んでしまう様なひ弱な体に、誰よりも強い心を持った千尋にタイガス達はメロメロなのだ!溺愛しているのだ!
可愛い姿に…何よりも美味しいを教えてくれた!溺愛せずにいられる訳がない!

「さあ!では参ろうか?」
「はーい!!」

人形からタイガスの姿に戻り、白雪の背に千尋を乗せて周りを真白や清白達が囲み月白達が水龍に向かって行く!

「さあ!行こう!!」
『おう!!』



続く!

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