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グローディアス王国編

希望の光が灯った日

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私の名前はエリス・フォン・ドラニアス。
グローディアス国筆頭侯爵の嫡子で王太子の幼馴染であり筆頭側近でもある。
我が国は人間界では2番目に大きな国であり、その国土はこの世界で1番広い。
そして、8百年前に神の愛し子様が降臨され我が国は飛躍的発展を遂げて、この世界でも有数の大国となった。
その時降臨された愛し子様はこの世界では珍しい黒髪と黒い瞳を持つ方で、その時の王に嫁がれ、それ以来王家の子孫の中に黒髪、黒眼を持つ方が現れ、そしてその方々は名君として名を残されている。
故に我が国では黒髪、黒眼を持つ者が王として登られる方が多い。
そして、今代の第1王子であるディアス殿下が黒髪、黒眼で産まれた事で国中が歓喜したのは言うまでも無かった。
残念ながら殿下の母上である王妃様は産後の肥立が悪く殿下を産まれてから暫くして亡くなられてしまったが成長される殿下の聡明さに家臣も国民も皆喜んでいた。
しかし、その後隣国グラー帝国のゴリ押しで陛下は後妻として大国グラー帝国の1の姫が後妻に入られた。
そして、早々に第2王子が産まれたが、その子はグラー帝国側によくある金髪碧眼で王妃そっくりだった。

そして、その時から王太子となられていた殿下の周りに不吉な影が出始めていた。
暗殺、毒殺と様々な形で送られる刺客を殿下はその類稀な力と知略で退けていらっしゃったが、数年前にとうとう強力な呪いを受けてしまったのだ。
緊縛の呪いは徐々に身体を黒い糸が締め上げていき最終的には心臓を糸で絡め止めるという呪いで解除するには光魔法極大でしか解けない。
現在光魔法を持つ者は少なく、しかも極大を放てる者はいない。
残酷な未来が誰もが暗く思い悩んでるいる時、あの主神様からの言葉が全ての国に響いたのだ!

『今度の神の愛し子は光魔法極大を持っている!』

その言葉に希望を見出した私達は殿下と数人の護衛騎士を連れて愛し子様を探して回った。
噂が出た場所は、全て回った!
だが愛し子様は見つからず、見つかるのは偽物ばかりで…そして殿下を苦しめる黒い糸は殿下の口を塞ぎ声も出せなくなってしまった。
そして、愛し子様が見つからないまま殿下の希望で大森林へとたどり着いた。
国を出てから既に半年以上経つ…暗い空気だけが私たちを包んでいた。

ある日、殿下は誰にも何も伝えず一人で森に入って行かれた。
私達が気が付いた時には殿下は設置していたテントから姿を消していたのだ。
すぐにでも殿下を探さなければと騎士達も動き出した時、それは起こったのだ!

それは白い光の爆発の様だった。
その光を浴びただけで今までの旅の疲れや小さな怪我など全てが消えた!
しばらくは目が光にやられてチカチカしていた。

「これはいったい…殿下!殿下をお見つけしないと!」
「エリス!あの光が起きた場所に行ってみよう!殿下も何処かで見ていたならそこへ行く筈だ!」
「そう…そうだな!ジャック急ごう!!」

もう一人の幼馴染で近衛隊王太子付き武官であるジャック・フォン・スペンサーと護衛隊の他のメンバーで急ぎ光が爆発した場所に急いだ!
そして、その場所で倒れている殿下を見つけた時は青くなっていたと思う。
血の気が引いて目の前が暗くなる…だが急いで近ずいた時、殿下は安らかに眠っておられた。
そして驚いたのは、全身に纏わり付いていた黒い糸が消えていた!
あの口を縫い付けていた糸も綺麗に消えていて殿下の端整な顔に戻っていたのだ。
私は半分泣いていたと思う。
元の姿に戻られた、私が知っている殿下の顔に懐かしさと喜びで声を上げてしまいそうだった。
ジャックが殿下の身体を揺らし声を掛けて

「殿下!殿下!エディ!エディ!大丈夫か?目を覚ましてくれ!エディ!!」
「…ん…うん…ジャック…起き…るか…ら………は!」

目を覚ました殿下は、上半身を起こすと声が出せる自分に驚いて!

「ああ…声が…声が出る!身体が…あの締め付ける感じが無い!!」
「殿下!殿下!良かった!呪いが…呪いが消えています!」
「ああ!消えてる!消えてる!私は死なないんだな…生きて行けるんだ!!」

その場にいる全員が声を上げて泣いていた。
殿下の目も潤んでいた。
ジャックは殿下を思わず抱きしめて良かった…良かったと何度も何度も呟いていた。
全員が落ち着くと、今度はさっきの光が気になった私は殿下に尋ねた。

「実はさっきビッグフットベアーに追い掛けられている子を見つけたんだ…その子は黒髪、黒眼で私はビッグフットベアーからその子を助けてあげたんだ。」
「黒髪に黒眼って!」
「今では我が王家以外には無い色だからね…そして、その子が私にお礼を言って私はその時は声が出せなかったから…ただ治癒魔法が使えるから怪我や病気なら治せると言ってくれたんだ…病気では無い事を教える為にマスクを外して口を見せたら、今度はステイタスを見られてしまった様で呪われている事を知ってしまった様だった…そして彼女は酷いと言って今その呪いを解いてあげるからと言って光魔法極大を使ったんだ!」
「光魔法極大!!…まさか…彼女は?」
「たぶん…神の愛し子様なんだろう…」
「神の愛し子様!」
「ああ…たぶん昔我が国に落ちて来られた愛し子様ユリエ様と同じ国から来られたのだろう…地球の同じ国から来られただから、黒髪、黒眼なのだと思う。」
「なんと言っていいのか…なんだか運命を感じるな…ユリエ様のお導きなのかもしれんな。」
「ああ…彼女もユリエ様の肖像画と同じで可愛い顔だったよ!そして、優しい方だった…!」
「しかし、愛し子様は何処に行かれたんだ?俺たちが来た時は殿下はお一人だったぞ?」
「きっと近くに守護者が居たのだろう…大きな気を何となくだが感じたから…」
「とにかく此処は大森林だ、安全とは言えないし殿下の呪いが解けた事を陛下にも、お知らせしないといけないだろう!」
「ああ…だがこのまま帰ったら、また同じ様に呪いを掛けられる可能性がある…陛下には内密で知らせよう!そして殿下はこれから呪い避けの咒を教皇にお願いしに行くのがいいと思います。」
「そうだな…愛し子様に会ってお礼を言いたいのだが…今は先ずはやるべき事をやるしか無いな!!」
「はい!では殿下は教国アイリッシュへ…陛下への報告は私の影を使います!」
「分かった、エリス頼む!」
「御意!」
「では、参ろう…」
「「「「「はっ!!」」」」」

殿下は最後に振り向いて呟かれた。

「必ず…必ずもう一度お会いする…愛し子様…」

こうして我が国の希望の光が再び強く灯った事を、殿下の心に宿った炎を私は感じながら私達は動き始めた。

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