人は神を溺愛する

猫屋ネコ吉

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田中さんの後継者 3

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超暗い話し回になります…。ご覚悟を!
嫌な人は高速で読み飛ばしてねぇ~!
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「あんたさえ!あんたさえ生まれて来なかったらっ良かったのよ!!」
「お母さん…」
「なんで…なんで私はこんなに不幸なの?」
「お母さん…」
「ごめんね…こんな母親で…ごめんね…」
「お母さん…お母さん!!」

学校から戻った時、母はロフトの手すりにぶら下がった状態で永遠の眠りについた。
俺にそこから先の記憶は無い。
気が付いた時病院のベッドの上だったから…。
思えば母は小さい時から人の愛に飢えていたんだと思う。
母が出来た事で離婚した祖母は、不倫相手にも僅かな金で捨てられ不倫が原因で実家からも縁を切られ幼い女の子を1人で育てていけるほど頭も良くはなかった。
何度も何度も男を替えては捨てられてを繰り返しストレスの発散する時だけ母を構った。
暴力だけなら母はこれほど壊れる事は無かっただろう。
時々、男がいない時に思い出した様に可愛がる。
それは溺愛と言ってもいいほどに可愛がって男が出来ると見向きもしなくなる。
それを繰り返していく自分の母親より母親を女にする男達を憎いと思う様になった。
そんな母を可愛いと思う訳もなく母を今度は虐待する様になった男達。
そのうち母は子供から大人の女に身体だけがなった時、年老いて来た女より若い女を選んだ男に無理やり身体を奪われた母は、自分の男を奪ったとして、とうとう母親から捨てられた。
自分の母親の様に男に擦り寄る事でしか生きていけなかった母は、そうして俺を産んだ。
赤ん坊が産まれると男は逃げていった。
誰も頼れる人もなく捨てられた母は自分を捨てた母親と同じ様に次の男、次がダメなら次の男という様に渡り、俺もまた母が受けた様に無視されては愛されを繰り返し、壊れる寸前だったと思う。
ある日母が俺に見せた写真には幸せそうな家族が写っていた。

「玲…この人がね、お母さんを捨てた人なの。そして、この人が私のお兄さん…この人だけがお父さんの所に置かれて幸せに暮らしていたのよ、酷いね…。」
「お母さん…この人がお母さんのお兄さんなの?」
「そう…田中…玲一って言うのよ。お前の名前の玲は、ここから貰ったの。このくらい私が貰ってもいいよね?」
「そうなんだ…。」
「どうしてお兄さんは私を助けてくれないのかなぁ…私が嫌いなのかなぁ?お母さん何もしてないのに…どうして嫌われるんだろう…?どうして迎えに来てくれないのかぁ…どうしてかな…どうしてかな…?」
「お母さん…だったら僕が探して来るよ!ここを知らないからかもしれないだけかもしれないよ!」
「…………そっか…知らないんだ…。」

母はどんどん壊れていくばかりで、そんな母が怖くて…俺は子供ながらに母が兄と呼んでいる人を探した。
探して探して…でも、所詮子供が出来る事なんて高が知れていて…。
そして母は俺を置いて往ってしまった。
母との最後の会話が…

「玲…行ってらっしゃい。」
「行って来ます!」
「玲…私ね…お兄さん…会いに行って来るね!」
「お母さん!お兄さんに会えるの?」
「うん…やっと会えるの!そして玲の事頼んで来るよ!」
「頼むって…」
「玲が高校に行ける様に頼んで来る…。」
「…お母さん、無理しなくてもいいよ!俺高校行かなくてもいいから!」
「ううん…玲は高校に行った方がいい…私と違って頭イイもん!」
「お母さん…」
「だからねお母さん、お兄さんに会って来る!頑張ってお願いして来るから!」
「…お母さん…」
「だから玲…待ててね…。行ってらっしゃい!玲!勉強頑張って!」

そう言っていた母が…俺が帰った時には冷たくなって物言わぬ人形の様に揺れていた。


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お気に入り&お読み頂きありがとうございます(^ ^)
次回も日曜日…頑張ります。
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