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暗闇1~達磨の過去
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新しく院長になったのは、まだ若い男性だった。
教会で若くして幹部となった男は、まだ35歳で若くして幹部になっただけあり、教会でも気配りの出来る優秀な人なのだとシスターが話していた。
今回の件でもとても心を痛めて自ら院長になる事を志願したそうだ。
達磨も妹達も、これで安心だとシスターに言われ笑顔を見せた。
そして、新しい院長が施設に挨拶に訪れた。
「初めまして皆さん、今日からこの施設の院長になった鈴木賢治です。歳は35才、趣味は映画鑑賞、独身です。未熟者ですが、宜しくお願い致します。」
そう頭を下げた彼は結構なイケメンだった。
子供たちも、そして達磨も爽やかな笑顔の賢治に沢山拍手して歓迎の笑顔を見せた。
暗い話題が多かった施設に明るい光の様に現れた新院長の賢治に施設のにいる全員が好きになった。
賢治も、最初はおっかなびっくりながらも子供たちと少しづつ距離を縮めていって大家族の兄の様に時には優しく、時には雷を落とし施設に馴染んでいった。
そうこうして賢治が施設に来て半年、ずっと施設にいたシスターが還俗して結婚する事が決まった。
賢治から紹介して貰った人と付き合い結婚する事を決めたのだ。
結婚式を施設の隣にある教会で行ったシスターのウェディングドレスに妹と施設の女の子達が憧れの眼差しで見送りシスターは旦那さまとなった中国籍の人と一緒に中国へ旅立つった。
そして、施設には新しいスタッフとして賢治より若い男だが身体が大きく無口で無愛想な佐藤剛史が入って来た。
「達磨、彼はあまり口がきけないけど子供好きな人だからね。私が院長だから若い女性を入れるのは、ちょっと外聞が悪くて…だから、彼に来て貰ったんだ。
だから、これまでと同じ様に手伝って欲しい、予算的にもこれ以上スタッフを入れられないから…。」
「分かったよ、院長先生!俺に出来る手伝いなら何でも言って!」
「ごめんな、来年には受験生なのに…。」
「大丈夫だよ、ちゃんと学校で勉強してるから!」
「いや、それは当たり前だろ!」
「あははははは~俺結構優秀なんだぜ~!奨学金ある高校に行くからさ、心配しないでよ!」
「助かるけど、達磨には苦労をかけるな…すまない。」
「そんな事ないよ、苦労とか思ってないから!」
「ありがとう…達磨…」
こうして年が明け達磨が中学3年になった年、施設にある人が慰問に来た。
神城奈津子だ。
神城工業は神城グループと急成長をとげ大きくなっていた。
「皆さん、こんにちは!今日はお邪魔しますね!」
にっこり微笑む顔がとっても優しくて、小さい子達はくっついて離れなかったくらいだ。
奈津子の側には、小さな男の子がいた。
その男の子こそ神城悠夜、たまたま体調が小康状態で付いてきたのだ。
「悠夜、挨拶をしてね。」
「神城悠夜です、こんにちは~」
「悠夜はずっと病院にいたから、同じ歳のお友達がいないの…仲良しになってあげてね!」
「仲良しになってね!」
そう笑顔を見せる悠夜は正しく天使だった。
その場が眩しいくらい明るくなった。
施設に明るい笑い声が響いて、誰もが笑顔で1日を過ごした。
二人と別れる時は、不覚にも達磨も涙が出そうだった。
妹と同じ様に“達兄”と呼んでくれたのが嬉しかった。
ただひとつだけ引っかかりが達磨の頭に過ぎったのは、あんなに懐っこい悠夜が院長先生の側には行かなかった事だ。
最初の挨拶でも奈津子の後ろに隠れて、絶対側に行こうとしなかった。
それは、スタッフの佐藤にもだ。
最初照れているのかと思ったが、そんな感じでは無かった。
それが唯一心に引っかかりを残した。
だが毎日の忙しさに、いつしか達磨もその事を忘れた中学3年の夏休みに全てを覆す出来事が起きた。
みんなが寝静まった深夜、達磨は喉の渇きを覚えて台所に水を飲みに起きた。
台所の奥にある院長室に灯りが漏れていて話し声が聞こえていた。
まだ先生達起きているのかと思って院長室の近くまで行った時、日本語じゃない言葉が聞こえた。
“中国語?”
声は院長先生とスタッフの佐藤だったが、日本語じゃない言葉で話しては笑っていた。
その笑い声はいつもの爽やかな感じではなく卑下た感じで気持ちのいい笑い声では無かった。
中国語だったから何を話しているのかは意味が分からなかったが、いい事を言っているのでは無いなと感じた。
その場で聞き耳を立てているのを知られるのも気不味いと、達磨は静かにその場を離れた。
でも心に残ったシコリの様な疑問に眠れない夜となった。
それから数日モンモンとした日々を過ごした達磨は、子供達がみんなで学校のプールに行って誰も居なくなったのをチャンスだと思い、院長室先生に聞いてみる事にした。
「院長先生…俺聞きたい事があって…」
「達磨どうした?何か問題でもあったか?」
「何日か前の夜に先生達が中国語で話していたのを聞いたんだ…。」
「聞いた…中国語…」
「うん…それで…」
「ククク…聞いた、聞いたんだ!達磨!」
突然笑い出してから賢治は立ち上がり、思いっきり達磨を壁に打ち付けた。
「達磨…何を聞いたって?じっくり聞こうか。」
「!!」
地獄の蓋が開いた…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お気に入り増えて来ました(^ ^)
ありがとうございます!
ええ~どんどん暗くなりますが次回も土日のどちらかに更新致します。
宜しくお願い致します(^人^)
教会で若くして幹部となった男は、まだ35歳で若くして幹部になっただけあり、教会でも気配りの出来る優秀な人なのだとシスターが話していた。
今回の件でもとても心を痛めて自ら院長になる事を志願したそうだ。
達磨も妹達も、これで安心だとシスターに言われ笑顔を見せた。
そして、新しい院長が施設に挨拶に訪れた。
「初めまして皆さん、今日からこの施設の院長になった鈴木賢治です。歳は35才、趣味は映画鑑賞、独身です。未熟者ですが、宜しくお願い致します。」
そう頭を下げた彼は結構なイケメンだった。
子供たちも、そして達磨も爽やかな笑顔の賢治に沢山拍手して歓迎の笑顔を見せた。
暗い話題が多かった施設に明るい光の様に現れた新院長の賢治に施設のにいる全員が好きになった。
賢治も、最初はおっかなびっくりながらも子供たちと少しづつ距離を縮めていって大家族の兄の様に時には優しく、時には雷を落とし施設に馴染んでいった。
そうこうして賢治が施設に来て半年、ずっと施設にいたシスターが還俗して結婚する事が決まった。
賢治から紹介して貰った人と付き合い結婚する事を決めたのだ。
結婚式を施設の隣にある教会で行ったシスターのウェディングドレスに妹と施設の女の子達が憧れの眼差しで見送りシスターは旦那さまとなった中国籍の人と一緒に中国へ旅立つった。
そして、施設には新しいスタッフとして賢治より若い男だが身体が大きく無口で無愛想な佐藤剛史が入って来た。
「達磨、彼はあまり口がきけないけど子供好きな人だからね。私が院長だから若い女性を入れるのは、ちょっと外聞が悪くて…だから、彼に来て貰ったんだ。
だから、これまでと同じ様に手伝って欲しい、予算的にもこれ以上スタッフを入れられないから…。」
「分かったよ、院長先生!俺に出来る手伝いなら何でも言って!」
「ごめんな、来年には受験生なのに…。」
「大丈夫だよ、ちゃんと学校で勉強してるから!」
「いや、それは当たり前だろ!」
「あははははは~俺結構優秀なんだぜ~!奨学金ある高校に行くからさ、心配しないでよ!」
「助かるけど、達磨には苦労をかけるな…すまない。」
「そんな事ないよ、苦労とか思ってないから!」
「ありがとう…達磨…」
こうして年が明け達磨が中学3年になった年、施設にある人が慰問に来た。
神城奈津子だ。
神城工業は神城グループと急成長をとげ大きくなっていた。
「皆さん、こんにちは!今日はお邪魔しますね!」
にっこり微笑む顔がとっても優しくて、小さい子達はくっついて離れなかったくらいだ。
奈津子の側には、小さな男の子がいた。
その男の子こそ神城悠夜、たまたま体調が小康状態で付いてきたのだ。
「悠夜、挨拶をしてね。」
「神城悠夜です、こんにちは~」
「悠夜はずっと病院にいたから、同じ歳のお友達がいないの…仲良しになってあげてね!」
「仲良しになってね!」
そう笑顔を見せる悠夜は正しく天使だった。
その場が眩しいくらい明るくなった。
施設に明るい笑い声が響いて、誰もが笑顔で1日を過ごした。
二人と別れる時は、不覚にも達磨も涙が出そうだった。
妹と同じ様に“達兄”と呼んでくれたのが嬉しかった。
ただひとつだけ引っかかりが達磨の頭に過ぎったのは、あんなに懐っこい悠夜が院長先生の側には行かなかった事だ。
最初の挨拶でも奈津子の後ろに隠れて、絶対側に行こうとしなかった。
それは、スタッフの佐藤にもだ。
最初照れているのかと思ったが、そんな感じでは無かった。
それが唯一心に引っかかりを残した。
だが毎日の忙しさに、いつしか達磨もその事を忘れた中学3年の夏休みに全てを覆す出来事が起きた。
みんなが寝静まった深夜、達磨は喉の渇きを覚えて台所に水を飲みに起きた。
台所の奥にある院長室に灯りが漏れていて話し声が聞こえていた。
まだ先生達起きているのかと思って院長室の近くまで行った時、日本語じゃない言葉が聞こえた。
“中国語?”
声は院長先生とスタッフの佐藤だったが、日本語じゃない言葉で話しては笑っていた。
その笑い声はいつもの爽やかな感じではなく卑下た感じで気持ちのいい笑い声では無かった。
中国語だったから何を話しているのかは意味が分からなかったが、いい事を言っているのでは無いなと感じた。
その場で聞き耳を立てているのを知られるのも気不味いと、達磨は静かにその場を離れた。
でも心に残ったシコリの様な疑問に眠れない夜となった。
それから数日モンモンとした日々を過ごした達磨は、子供達がみんなで学校のプールに行って誰も居なくなったのをチャンスだと思い、院長室先生に聞いてみる事にした。
「院長先生…俺聞きたい事があって…」
「達磨どうした?何か問題でもあったか?」
「何日か前の夜に先生達が中国語で話していたのを聞いたんだ…。」
「聞いた…中国語…」
「うん…それで…」
「ククク…聞いた、聞いたんだ!達磨!」
突然笑い出してから賢治は立ち上がり、思いっきり達磨を壁に打ち付けた。
「達磨…何を聞いたって?じっくり聞こうか。」
「!!」
地獄の蓋が開いた…。
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