人は神を溺愛する

猫屋ネコ吉

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隠れん坊の鬼3

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達磨がリビングに戻ると悠ちゃんの寝室前に立つ2人のSPに声をかけた。
「中の様子は?」
「特に変わりはありません。ぐっすり眠っておられます。」
「そうか…下の連中はお帰り頂いた。だが、また来ると言っていたから本部に連絡入れて応援を頼んだ。1時間後には揃うだろう、何が起こっても対処出来るように警戒レベルを上げる!」
「「了解!ボス!」」
そう通達した後、執事の田中さんにも本日の外出は控えて貰った。

ふと、モバイルPCで各所にメールを打っていた達磨の耳にエレベーターが動く音を聞いた。ここはVIP専用しかも専用エレベーターのみでしか来れない場所で、専用キーが必要なのだ。
この部屋専用コンシェルジェがいるが、この部屋に来る時は前もって連絡が来るのが当たり前。
しかし、何の連絡も無くエレベーターが動くのは通常ではありえない。
とっさに立ち上がり達磨は田中さんを悠ちゃんの寝室に移動して貰ってアッシュとシャルルも緊張した表情で達磨の動きに合わせている。

チンというエレベーターの到着音がする。

廊下をドアの隙間から覗く達磨は驚愕した!
さっきのローブと同じ物を着た1人の人物が降り立ったのだ。
カードキーは2枚しかない。
嫌な予感がヒシヒシとするが、今は主を護る事が第一だ!

おもむろに廊下に出た達磨は警戒の言葉を発した。
「そこで止まれ!!」
ローブを着た男?いや女か?すっぽり被っているフードからは唇しか見えない上にローブがすっぽり身体を覆っているため男なのか女なのか分からない。

「何をしに来られた?主は休んでいると伝えたはずだが。」
「………。」
「それにどうやって、エレベーターを動かした?専用キーをどうして持ってる?」
「…キー?そんなモノ必要無い、機械など動かしたい時に動かす事など造作無い。」
「そうかい…だが、このまま帰って頂きたい。主は本日誰にも会わない。」
「嫌だ…!せっかく探し当てたんだ…この広い現世で漸く見つけたのに!会えないなんて嫌だ!!そうだよ、会いたい会いたいよ…我が神に!!!」
そう言って走り出したのを見て、達磨は直ぐにドアを閉め、鍵を閉める!

「ドアを開けてよ~ドアを開けて~!」

ドアを力いっぱい叩く音が響く。
決して薄くは無いドアだが、ドアを叩く力は異様に強い。
いつ突破されるか分からない。
達磨は応援を呼ぶためインカムで外警班を呼び寄せようと操作したが、もの凄い雑音が入って通信が出来ない。
「ジャマーかよ!用意周到だな!!」
携帯も圏外になっているのに舌打ちした達磨だが、直ぐに悠ちゃんの部屋に入っていく。
アッシュとシャルルも一緒に入りドアの前で警戒する。
「田中さん!悠ちゃん連れて動きます!」
「はい!用意は終わっております。」
「悠ちゃん!起きて!」
揺すっても、呼び掛けても起きない。
「…さっき薬を飲まれましたから、結構強い眠剤が入っているので起きるのは難しいです。」
「そうか…なら上着と靴下履かせて、毛布に包んで抱き上げて行く!アッシュ!」
「了解!」
着せ替え人形のように上着と靴下履かせて毛布に包んだ悠ちゃんは安心した顔で寝ている。この緊張感の中で、唯一幸せそうな顔だ。

「では、秘密通路から屋上経由で下に降りる!行くぞ!」

廊下の側のドアを叩く音は止まらない。
「ドアを開けて~!お願いだから~開けてよ~!!」

その音を聞きながら達磨は警備の者しか知らない主寝室の壁を動かして、狭い通路を開け放した。
無言で、先ずはシャルルが先頭で入り、次に悠ちゃんをおんぶしたアッシュ、次に田中さんで最後に達磨が通路に入り壁を 元通りに閉めた。
開け放した通路は淡い光が足元を照らし屋上へと繋がっている。
達磨達は最大限の警戒をしながら足早に動く。
何としても我が主の事は護ってみせると決意を新たにして…。

「ああ…神の気配が、我から離れていく…。嫌だ…嫌!せっかく探し当てたのに…嫌だ…嫌だ…ああ、そうか…また、隠れん坊するのですね…ふふふ…分りました。僕が鬼ですね…きっと探し出してみせます…ふふふ…ふふふ…」
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