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3 あんまりナメないでよ

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 別に私は不幸体質というわけではない。桃姫ももひめなんて名前だけれど、亀の怪物に連れ去られたりはしないのだ。
 どちらかというと、私はトラブルメーカーだ。私の周りにはトラブルが起こることが多い。
 それを不幸体質と人が呼ぶことがあるけれど、私にとっては不幸ではない。ただのトラブル程度だ。USBメモリを反対に挿してしまったくらいに些細なことだ。

 だって、私の隣には林檎りんご先輩がいるのだから。

「ふむ……これは……」先輩は私の自転車を眺めて、「ダメそうだね」
「ですね」

 現在私と林檎りんご先輩はサイクリングに来ていた。その途中で、私の自転車のチェーンがぶっ壊れたらしく、自転車が動かなくなってしまった。
 専門的な知識があれば直せるのかもしれないが、あいにく私達はサイクリング初心者だ。ホイサッサと直せるわけもない。

「タイヤは……無事だね。なら……乗っていいよ」
「え?」
「僕が押す」

 押す……自転車を漕ぎながら私の自転車を持って、並走するということか? しかも私が乗っている自転車を持って移動する?

「……いいですよ、歩きますよ」
 
 さすがにそこまで頼るわけには行かない、と断ったのだが……次の瞬間先輩のキレイな顔が目の前にあった。

「あんまりナメないでよ。僕ならできる」

 林檎りんご先輩は意外にも自信家である。そして……その自信は過信ではないのだ。

 ……自信のある人は、カッコよく見えてしまう……

 本当にカッコいい彼氏だ……
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