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2 ちょっとした世間話です

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 どういうわけか、林檎りんご先輩は私を愛してくれている。しかも溺愛と言っても差し支えないレベルである。

 なんで林檎りんご先輩は私のことを好きになってくれたのだろうか。それが近ごろの私の悩みである。

 私が林檎りんご先輩を好きになった理由はわかる。彼は可愛いし、なによりカッコいい。優しいし守ってくれるし、しかも相談相手にもうってつけである。

 林檎りんご先輩はとても哲学的なことを言い出したりするのだ。それが、私にとってはかなり興味深い。

林檎りんご先輩。ってなんだと思います?」
「……普通?」首をかしげる先輩が可愛い。「……何か悩み事?」
「悩み、というほとでもないですね。だから……ちょっとした世間話です」
「なるほど……」

 普通……普通かぁ……と先輩は考え込む。こんな風に話を振った雑談にも真剣に思考してくれる先輩が愛おしい。

「その人の願望、だと思う」
「願望……?」

 ちょっと想定外の答えだった。

「うん。例えば『普通それくらいできるでしょ』とか言ってくる人、いるよね。その人は多分『この人はそれくらいできる』という願望を言っているに過ぎないんだよ」
「……できてほしい、という願望が、普通という言葉に現れている、ってことですか?」
「簡潔に言うと、そうだね」

 なるほど……なかなか面白い。普通というのはその人にとっての願望の類義語である。

 こんな風に『ちょっと賢そうなこと』を言ってくれるのが林檎りんご先輩である。後々思い出してみたら何言ってるのかわからないことも多々あるが、それでも話を聞いた直後はちょっと良い話に聞こえてしまうのだ。

 そして――

「それに関連して、もう一つ」先輩は私に目を見つめて、「ももと僕が一緒にいることは、普通だよ」

 こんなことを言ってくれるのも、林檎りんご先輩だけである。世間話の流れで、とても自然にこんなことを言ってくる。

 本当に……心臓に悪い……
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