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野望(ゆめ)のつづき

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 冒険者ギルドの館に入ってすぐ、ぶち抜きになった広いフロアは、今日も仲間や情報を求めるたくさんの冒険者たちでにぎわっている。

 イシュアは、中でも経験の浅そうなものを探して視線をうろつかせていた。
 パーティーを組んで一緒に迷宮へ降りてくれる仲間を探しているからだ。

 今まで何度か、臨時でパーティーに混ぜてもらったり、一回限りのパーティーを組んで浅い階層に降りたりもしたが、そろそろ腰を据えて一緒に迷宮を攻略できる仲間が欲しいと思うようになった。


「王子様……? 冒険者になる……ですってえええっっっ?」


 アリエッタには肩をつかまれ延々と揺すられてしまったが、イシュアの決意は変わらなかった。

 幼い頃憧れた迷宮攻略譚の世界で、信頼できる仲間たちと冒険をしたい。
 『黄金の鈴』の皆のように。

 それがイシュアのはじめての、みずから望んだ夢になったからだ。

 故郷の老爺に手紙を送った。

 冒険者として独り立ちできるまでは帰れないことをわび、老爺の健康と幸せを祈る文面に、それはそれは嬉しそうな返事を寄越してくれた。

 ふと見ると、四人組のパーティーが、きょろきょろと辺りを見回している。

 新たなメンバーを探しているのだろうか。
 条件が合えば、イシュアの新しい仲間になってくれるかもしれない。

 イシュアはその冒険者たちに歩み寄った。

「……本当に、その救援隊なんてものとの契約が必要なのか?」

 剣士らしき男が、いぶかしげな口調で話している。

「迷宮に降りる前に契約を交わしたものの命に危機が迫ったとき、魔法道具の鈴の音に呼応し、たとえどんなに深い階層にでも駆けつけて救助する。
 迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者……。
 ……なんて、そんなおとぎ話、信じられないぜ」

 肩をすくめる男の様子に、イシュアはくすりと笑った。

(だろうな)

 でも、本当の話なんだ。

 そう言いたくて、イシュアは口を開こうとした。

 まさにその時、奥の酒場の方から、シルヴァがのんびりと歩いてきた。
 イシュアの姿を認めて、、陽気に声を掛けてくる。

「おう、どうだ調子は?
 ちょうどいいとこで会った。
 ちょ~っと金貸してくんない?
 すぐ十倍にして返すからさ! な?」

 迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者は、相変わらず常敗のようだ。
                                        


救援隊(レスキューパーティー)『黄金の鈴』出動します!~最強魔導士パーティーはダンジョンで誰かの野望をレスキューする~第一話 依頼者イシュアをお読みいただきましてありがとうございました。
第二話は只今構想中です。シルヴァの正体に迫るお話になる予定です。
第二話もよろしくお願いします。
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