救援隊(レスキューパーティー)『黄金の鈴』出動します!~最強賢者パーティーはダンジョンで誰かの野望をレスキューする~

高村渚

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最強魔導士、働く

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「ちょっと! わたしは別に疲れてなんかないわよ!」

 シルヴァにくってかかるアリエッタは、元気そのものに見える。
 しかし考えてみれば当然だ。あれだけの大鎧百足の大群をほとんど一人で倒してしまったのだから、疲れ果てていないほうがおかしい。

「王子様に変な心配させないでよ!
 だいたいそれもあなたが……」
「わかった」
 イシュアはしっかりと頷いてみせた。
「その、……隊の仲間を気遣うのは、当然なのだろう?」

 口に出してから、やや照れて顔を逸らす。

 アリエッタが、そしてギヨームが目を見張る。

「やだもう王子様、カッコよすぎるじゃない……!」
「頼りになりますな」

 シルヴァはにっと笑うと、門を発動させた。

「いいねえ、じゃ行くぞ」

 瞬間襲ってきた衝撃で、イシュアの意識は吹き飛びそうになった。

 第十四階層とも比べものにならない、経験したことのない空気の重さだ。

 それから熱。
 むき出しの顔が焦げそうに熱い。鍛冶の炉に近づき過ぎてしまったときのようだ。

 あらかじめシルヴァに覚悟を言い渡されなかったら、耐えきれず失神しあっさりと地面に崩れ落ちていただろう。

 その地面は活火山の地表のように、割れ目から溶けた岩石がどろどろと溢れだし、あちこちで溶岩溜まりを作っている。

「ここは……」
「第二十七階層だ」
 何を聞いても驚くまいと覚悟して尋ねたイシュアだったが、さすがにもう頭が処理を諦めたようだ。オウムのようにただ繰り返す。
「第二十七階層」

「このまえ市場で、炎蜥蜴とかげの核石がひとつ出回ってるって話を聞いたんだよ。
 まあまあ珍しい素材なんでね、ちょっと話題になってたんだ。
 どこかのパーティーが倒して、店に持ち込んだんだろうな」
「つまり今、第二十一階層に炎蜥蜴はいないかもしれない、と」

 主というくらいだから、一体しか存在しない。先に倒されてしまっていたら、第二十一階層を訪れる意味がなくなってしまう。

「その点第二十七階層には、炎蜥蜴の生息地があるからな。
 そこそこの数はいるはずだ」

 熱に揺らめく視界のなか、シルヴァは腕を振って皆に合図した。

「生息地までは少し歩くぞ。
 熱いだろうがちいっと我慢しろ」

 先頭にギヨーム、続いてアリエッタとイシュア、しんがりにシルヴァがついて進む。
 吹き出してそのまま固まった溶岩の塊で、足下はでこぼこして、歩きにくいことこの上ない。

 イシュアの直前を行くアリエッタが、バランスを崩しかけて少しふらついた。とっさに寄り添って背に手を遣る。

「ありがとう王子様、やっぱり王子様は王子様ね!」
「……意味がよくわからないが……かまわぬ」

 アリエッタの顔はすでに場所の熱で真っ赤になっていたが、おそらく心情的には頬を染めていたに違いない。

「で、シルヴァ。
 生息地の場所はちゃんと把握してるんでしょうね」

 イシュアへの態度とは正反対の、ぞんざいな問いかけだ。
 もっとも、アリエッタから王子様扱いされたりしたら、呪いか精神操作系の魔法を受けたのではと全力で心配しなければならない。平常通りに返してやる。
「だいたいの場所はな。
 いちおう探索サーチして……」

 空間に手をかざしたシルヴァは、その手を首筋にやってぽりぽりとかいた。

「しなくてもいい、みたいだ」
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