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その野望、救援(レスキュー)するぜ!

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「なによそれ! そいつら何様? 信じられない!」

 アリエッタがフォークを振りかざして絶叫する。
 あまりの剣幕に、シルヴァとギヨームはスープの皿とパンを抱えたまま机に潜った。

「いや~、よかったわあの場にアリエッタさんいなくて。流血沙汰じゃ済みそうにない」
「いや~よかったわ、じゃない! 
 シルヴァ、あなたなんでそんな奴らに馬鹿にされて、おめおめと引き下がってきたのよ!」

 テーブルからしかめ顔をちらりとのぞかせて、シルヴァはチーズを塗って焼いたパンにかぶり付く。

「いや。だってさ、売られた喧嘩、いちいち買っててもキリなくない? 
 アリエッタじゃあるまいし」
「なんですってえ?」

 凄い勢いでクッションが飛んできて、シルヴァはパンをくわえたまま慌てて首を引っ込めた。
 ぶち切れていても、卓上に盛られた美味しそうな朝食を、器用に避けて投げつけてくるのは流石アリエッタだ、ではなく。

 シルヴァは昨夜遅く、イシュアを背負って本拠地ホームである館に帰ってきた。

 血相変えて出迎えたアリエッタを、
「とりあえずゆっくり王子を寝かせてやれ」
の一言で抑えたものの、あろうことかシルヴァは事情を説明することもなく、自分までさっさと寝てしまったのだ。
 翌朝こうして、アリエッタの怒りのクッションをぶつけられても文句は言えないだろう。

 ギヨームはこんな修羅場でもどこか優雅な様子で、玉ねぎを煮込んだスープを口にしている。
 床に立ち膝の姿勢での食事はお行儀が悪いが、クッションからスープを守るためだ、やむを得まい。
「……ルドマン王国では、確か王は妃を何人でも持てることになっていたはずです。
 周りに領土を争う強国がいくつもあって、政略上頻繁に他国から妃をめとったり、国内平定のため大貴族と縁を結んだりと、かの国ならではの事情もあるようですな。
 長子のルーファス殿下の母君は第一王妃で、隣の大国アントラスの一の姫だったと記憶しております。
 第二王子、第三王子の母君はそれぞれ国内の名のある侯爵家の姫。
 そして他のお子様方の母君にはそれほど大きな後ろ盾はなかったような……」

 よどみなくルドマン王家の系譜をそらんじる。
 そんなところもギヨームが「なんだかちょっと宮廷の官吏っぽい」と言われる所以だ。

 アリエッタのかんしゃくが止んだとみて、シルヴァはおそるおそるテーブルの上の酢漬けキャベツのボウルに手を伸ばした。
 床に座ったままボウルを抱えてしゃくしゃくとキャベツを噛み砕く。

「で、その他大勢の妃の一人が、あの王子の母親ってわけだ。
 そりゃ兄ちゃんの家来が調子に乗って絡んでくるのも納得だな」

 肩のセトラにもキャベツをすくってやる。
 セトラもしゃくしゃくとキャベツを味わって、糸のように目を細めると、ぷう、と鳴いた。

「それにしても聖なる継承の儀、とはなんでしょうな?」
「そのために王子様も、その失礼な奴らもグラータにやって来たのよね」

「……聖なる継承の儀は、またの名を勇者の試練という」
 
 声に振り返ると、廊下からイシュアが部屋へ入ってきていた。

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