魔法戦士ギン

burazu

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出港の時

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 ギン達が荷物を詰め込み、エイム達がウィルとミニルの兄妹や他の船員と共に物資の調達を行い、それらが終え、いよいよ出港の時が近づいていた。

 そんな時にギンが一同に呼びかける。

「俺達にとって初の船旅だが、俺達には優秀な海の男がついているから心配はいらないだろう」

 優秀な海の男とはウィルを指すのだが、そのウィルがギンに対して言葉を返す。

「いや、いきなりハードルをあげるなよ」
「さっきの威勢はどうした?俺を頼ってくれって言ってなかったか?」
「なんだろうな、お前に言われるとなんていうか親父以上の圧を感じるんだよ」
「俺はお前の親父さんほどのことはしていない。俺の言う事も仲間の激励だと思ってくれればいい」

 ギンの言葉に益々戸惑うウィルではあったが、とりあえずギンの言葉を受け入れることとした。

「じゃあ、そういうことにしとくぜ」

 ギンとウィルがやり取りをしていると、ボガードが声をかける。

「早速仲良くやっているようだな、いいことだぜ」
「親父」
「ウィル、ミニル、お前らの旅にこいつもついて行かせるぜ」

 ボガードがそう言って現れたのはボガードの部下であるリンドであった。そのリンドを見てウィルが驚きを隠せない。

「リンド!お前も俺達に付いてくるのか?」
「へい、大将の命令で、坊ちゃんとお嬢の旅をサポートしろといわれやした」

 リンドといういわば自らの右腕的存在を旅に出すことにムルカは驚き、思わずボガードに尋ねる。

「よろしいのかボガード殿?」
「構わねえよ、商売の方はぼちぼちやっていくから、あんたらがさっさと帝国に勝ってくれる方が結果的に俺達もまた商売がやりやすくなるからな」
「そういうことならば、我らはウィル殿達だけでなく、リンド殿も仲間として扱わしてもらうぞ」
「そうしてくれりゃあ、俺もリンドも嬉しいぜ」

 ボガードの言葉を聞き、一同が船に乗ろうとした際にボガードがウィルとミニルを呼び止める。

「ウィル、ミニル、ちょっと待て」
「何だよ親父?」

 ウィルにそう言われると、短剣をウィルに手渡す。

「これは親父の……」
「そうだ、お前にくれてやるから大事に使えよな」
「だけど親父、俺には水を……」
「本気で海の男を目指すんなら術だけじゃなく自分てめえの腕も磨け」

 ボガードの言葉にウィルは強い言葉を返す。

「言ったな、だったらボロボロになるまで使い込んでやるぜ」
「やれるもんならやってみやがれ」

 ボガードはウィルにそう告げるとミニルの方を向き、本を手渡す。

「これは?」
「母さんから預かってきた。直接渡すと泣きそうになるんじゃないかって言ってな」
「母さん……」
「俺にはよくは分かんねえが、お前ならその本を理解して風を刃にできるんじゃないかって言ってたぜ」

 ミニルは本を抱きしめるように持ちながらボガードに告げる。

「父さん、帰ったら母さんに伝えて。ありがとうって……」
「おう!2人共もう俺にできるのはここまでだ。あとはお前達で頑張れ」

 ボガードの声を受け、ウィル達とギン達は船に乗り、いよいよニリを離れ出港の時となった。

 次の旅で運命が大きく動き出すことをこの時はまだ誰も知らなかったのである。
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