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与えられし希望
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ムルカの放った渾身の拳がバンスに入り、バンスはその場に倒れ動けないでいた。
そんな時、別々の方向から近づいて来た者がおり、それぞれから言葉が発せられる。
「ムルカ様!」
「バンス様!」
言葉を発したのはルルー、そしてブリードであった。互いにそれぞれの上官並びに上位者に駆け寄っていく。
「ムルカ様……勝ったんですね、……右肩が出血している!大丈夫ですか⁉」
「なんの、かすり傷だ。貴殿らもよく無事であった」
「私達は大丈夫です、バンス将軍が倒れているならば捕らえましょう」
その言葉を聞いたブリードは兵士を引き連れルルーとブライアンに剣を向ける。
「そうはいかんぞ。バンス様にそのような屈辱を味わせるわけにはいかん。2名程はバンス様をお連れして、この場を離れろ!ここは我らが引き受ける」
「はっ!」
兵士の1人が反応をするが、すぐに何者かが接近してきた。
「もう逃がしはしない!覚悟しろ」
接近してきたのはギンであり、ブリードに対し剣を向ける。
「ギン!来てくれたのね」
「遅えよ」
ルルーとブライアンの言葉が響いている中、ブリードは窮地に陥っていた。数では勝っているものの、実質的な戦力はもはやギン達の方が上である事を肌で感じていた。
そんな時に意外な攻撃がギンに向けられる。
どこからともなく火が飛んできた。ギンはかわすことに成功はしたが違和感をおぼえ、思わず声が溢れた。
「魔法⁉どういうことだ?」
そう言ってギンが向いた方向にはローブ姿の者が2名いた。
その者達はバンスに対し言葉を告げる。
「バンス将軍、我ら魔導師団、エンビデス様の命により救援に参りました。我らが魔法で足止めしている間に離脱を」
「エンビデスが……ふっ、あやつに借りができたな」
バンスの言葉を聞いた魔術師たちはギン達に魔法を放ち、その場に釘付けとした。
ようやく魔法が途切れ、ギン達が辺りを見渡すが既にバンス達の姿はなかった。
「逃がしちまったな」
「魔導師団、エンビデス、段々と帝国が俺達に対して本気になってきたのかもしれない」
「帝国の主力部隊が混合で俺達をつぶそうとしているってことか」
ギンとブライアンはブロッス帝国が主力部隊の連携作戦を自分達に対して向けてきたことに一抹の不安をおぼえていた。
安全を確認したルルーはムルカに対し言葉をかける。
「あの、ムルカ様、私はムルカ様を腑抜けだとは思いません。ですから……」
ルルーの言葉を遮るようにムルカはルルー、そしてギン達に自らの思いを話す。
「私が今、こうやって戦うことができるのはルルー、貴殿やギン殿達がいるからだ」
ムルカの言葉を聞いて、ギンとブライアンも反応を示し、ムルカはさらに話を続ける。
「私はかつての過ちから戦うことより逃げていた。前の防衛戦は今だから話すが勝てるとは思っていなかった」
「えっ?」
「せめて、かつて騎士ムルカと呼ばれたことに恥じない戦いをして華々しく散るのも悪くないと思った」
「でも、ムルカ様は今こうして生きておられます」
ムルカは本当の思いを力強く話す。
「ルルー、貴殿は本来戦わずとも良いのに我々を助けに来た。ギン殿達も同じだ。だから私は思ったのだ」
「どういったことをですか?」
「貴殿らのような若者やその子供達が安心して過ごせる未来を守る。その為に私は貴殿らと共に戦っていくと決意したのだ」
ムルカの言葉を聞いたルルーは思わず尋ねてみた。
「私達がムルカ様に希望を与えることができたということですか?」
「ああ、貴殿らから多くの希望をな」
「それは大変光栄なことです。ですが私達はまだ未熟で至らないことも多いでしょうがこれからもよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ頼む」
過去を忘れることはない。だがムルカもまたギン達と共に未来へと歩んでいくことを決めたのである。
続く
そんな時、別々の方向から近づいて来た者がおり、それぞれから言葉が発せられる。
「ムルカ様!」
「バンス様!」
言葉を発したのはルルー、そしてブリードであった。互いにそれぞれの上官並びに上位者に駆け寄っていく。
「ムルカ様……勝ったんですね、……右肩が出血している!大丈夫ですか⁉」
「なんの、かすり傷だ。貴殿らもよく無事であった」
「私達は大丈夫です、バンス将軍が倒れているならば捕らえましょう」
その言葉を聞いたブリードは兵士を引き連れルルーとブライアンに剣を向ける。
「そうはいかんぞ。バンス様にそのような屈辱を味わせるわけにはいかん。2名程はバンス様をお連れして、この場を離れろ!ここは我らが引き受ける」
「はっ!」
兵士の1人が反応をするが、すぐに何者かが接近してきた。
「もう逃がしはしない!覚悟しろ」
接近してきたのはギンであり、ブリードに対し剣を向ける。
「ギン!来てくれたのね」
「遅えよ」
ルルーとブライアンの言葉が響いている中、ブリードは窮地に陥っていた。数では勝っているものの、実質的な戦力はもはやギン達の方が上である事を肌で感じていた。
そんな時に意外な攻撃がギンに向けられる。
どこからともなく火が飛んできた。ギンはかわすことに成功はしたが違和感をおぼえ、思わず声が溢れた。
「魔法⁉どういうことだ?」
そう言ってギンが向いた方向にはローブ姿の者が2名いた。
その者達はバンスに対し言葉を告げる。
「バンス将軍、我ら魔導師団、エンビデス様の命により救援に参りました。我らが魔法で足止めしている間に離脱を」
「エンビデスが……ふっ、あやつに借りができたな」
バンスの言葉を聞いた魔術師たちはギン達に魔法を放ち、その場に釘付けとした。
ようやく魔法が途切れ、ギン達が辺りを見渡すが既にバンス達の姿はなかった。
「逃がしちまったな」
「魔導師団、エンビデス、段々と帝国が俺達に対して本気になってきたのかもしれない」
「帝国の主力部隊が混合で俺達をつぶそうとしているってことか」
ギンとブライアンはブロッス帝国が主力部隊の連携作戦を自分達に対して向けてきたことに一抹の不安をおぼえていた。
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「あの、ムルカ様、私はムルカ様を腑抜けだとは思いません。ですから……」
ルルーの言葉を遮るようにムルカはルルー、そしてギン達に自らの思いを話す。
「私が今、こうやって戦うことができるのはルルー、貴殿やギン殿達がいるからだ」
ムルカの言葉を聞いて、ギンとブライアンも反応を示し、ムルカはさらに話を続ける。
「私はかつての過ちから戦うことより逃げていた。前の防衛戦は今だから話すが勝てるとは思っていなかった」
「えっ?」
「せめて、かつて騎士ムルカと呼ばれたことに恥じない戦いをして華々しく散るのも悪くないと思った」
「でも、ムルカ様は今こうして生きておられます」
ムルカは本当の思いを力強く話す。
「ルルー、貴殿は本来戦わずとも良いのに我々を助けに来た。ギン殿達も同じだ。だから私は思ったのだ」
「どういったことをですか?」
「貴殿らのような若者やその子供達が安心して過ごせる未来を守る。その為に私は貴殿らと共に戦っていくと決意したのだ」
ムルカの言葉を聞いたルルーは思わず尋ねてみた。
「私達がムルカ様に希望を与えることができたということですか?」
「ああ、貴殿らから多くの希望をな」
「それは大変光栄なことです。ですが私達はまだ未熟で至らないことも多いでしょうがこれからもよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ頼む」
過去を忘れることはない。だがムルカもまたギン達と共に未来へと歩んでいくことを決めたのである。
続く
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