上 下
60 / 96
異世界での転生

ニックの奇襲

しおりを挟む
 いよいよフレア王女殿下の護衛騎士団のカール団長との立ち合いが始まった。開始早々、カール団長は隙の無い構えを見せてうかつに攻撃しようものなら返り討ちにするぞというプレッシャーを僕にかけてくる。

 とりあえず僕も簡単に攻撃されないように構え、カール団長との間合いをはかる。

「しかし団長もいきなりあの構えを見せつけるんだから、相当本気だな」
「ああ、あの公爵家嫡男様は訓練を見たが、従者と遊んでいるように見えなかったから、そこまでする必要はないように思うんだけどな」
「団長!さっさと終わらせてしまいましょう!我らには訓練と護衛がありますから!」

 リングの外からも声が聞こえる、少しづつ僕も彼も動いているがなかなか隙は見せないな、僕もどうにか今の構えを維持しないと。

「やっぱりあのカール団長は相当の腕前ね、あれではニック様は攻撃を仕掛けてしまえば返り討ちにあってしまう」
「テール様、ニック様にあの構えを破る方法はないのでしょうか?」
「剣技ではカール団長に勝つのは難しいから、私達の防御の隙をついたような戦い方ができれば」
「ニック様は俺達の動きの癖をつかんだのは数日かかりましたし、この立ち合いだけであのカール団長の癖を見抜くのは至難の業っスよ」

 基本的にこの立ち合いでは木剣以外の武器や魔法、もしくはそれに準ずるスキルも使用禁止。つまり木剣とお互いの肉体のみが武器なんだ。

 肉体が武器といっても、僕が彼に勝っている部分はなんだろうな、身長も彼より低いし、うーん小細工程度にしかならないかもしれないが、このままじゃジリ貧で体力差で負けそうだな。よし!

「何だ、あの坊ちゃん、突撃したぞ!」
「終わったな!」

 とりあえず向かっていく、そして……。

「ニック様!危険です!お止めを!」
「いや、ニック様には何か考えがあるんでしょう、そうじゃなきゃあんな突撃しませんよ」

 僕はまず右側から木剣でカール団長に仕掛ける。カール団長は反撃を試みるが、すぐに左側に動き、そこから仕掛ける。まあフェイント戦法だな。

「甘い!」
「うっ!」
「まさかこの程度の戦法が私に通じるとお思いか、ニック・テリナン殿」
「ふふふ、近づく事はできたね」

 そのまま僕はカール団長に体当たりをして、彼をぶっ飛ばす事には成功するが、彼はリングには出ず、何とか踏みとどまる。

「陛下!今の行為は禁止行為なのでは!立ち合いにふさわしくありません」
「いや、あくまでも木剣以外の武器、魔法等のスキルを禁じているに過ぎんからニックの行為は禁止行為にはあたらん」
「陛下のおっしゃる通りだ、ニック殿は活用できるものを活用したに過ぎん、それを思考から外した私の怠慢だ」

 自分の肉体の活用は立ち合いでは認められているからね、ただもうこの手も通用しないし、どうするかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

処理中です...