補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

目指せSランク

共に歩むから

　ゲンより工房から追い出されたニラダ達を探しにやって来たゲンの弟子であるカールに話したい事があると言われ、ニラダ達はカールの家に案内される。

「どうぞ、ちょっと狭いですが」
「いえ、お構いなく」

　カールの家に入ると、ニラダは早速カールに尋ねる。

「カールさん、早速ですが俺達に話したい事ってなんですか？いやその前にそもそもどうして俺達を探していたんですか？」
「親方とのやり取りを聞いて思ったんですけど、あなた方はこんな遠くの街、それも所属しているギルドの管轄外の街まで来てくれたし、本気でSランクを目指しているんだなと感じたんです」
「え？俺そんな事言いましたっけ？」
「いや、あちらの魔法使いの女の子がそう言いかけたのが聞こえたので」

　カールはミヨモがゲンに抗議する際にニラダがSランクを目指している事を言いかけたのが聞こえており、その発言にミヨモは驚きながらもその理由をカールに話す。

「わ、私ですか？あの時私はニラダ君はしっかりと冒険者としての目標を持って、それに向かう為に何ができるかを考えている事を訴えたくて、でもニラダ君が止めるから最後まで言わなかったんです」
「ミヨモ……」
「そうだったんですか、ニラダさんはどうしてあそこで止めたか話していただいてもいいですか？」
「ええ、あの人の前じゃあ俺の考えや言葉は結局軽い、そう思ったんです」

　自分の言葉や思いはゲンにとっては軽く感じられると話し、その思いを話し始めた。

「俺があの人に言った、人々が安心する為だとか、ミヨモが言いかけた自分の師匠に会う為だとかも自分が冒険者をやる為の理屈にすぎないんです」
「ニラダ君……」
「人々の安心をそこまで強く願っているわけでもないし、師匠に会うと決めたのはいいんですが、会ってどうしたいかって聞かれると何て言えばいいのか分からないんです、そんなフラフラの気持ちでは結局何を言っても軽んじられるどころか怒りを買う。そう思ったんです」
「でもニラダさん、あなたはそう思っていても、あなたの仲間はそう思っていないかもしれないし、何より今あなたはどうして冒険者を続けているんですか？」
「……確かにふわっとしながらも師匠に会うのが目的でSランクを目指しています。師匠が冒険者になったきっかけではあるんですが、今も冒険者を続けられるのはきっと彼らが共に歩んでくれるからだと思います」
「ニラダ君」
「ニラダ」
「ニラダ、お前」

　仲間が共に歩んでくれるからこそ冒険者を続けられると話すニラダ。彼の強い思いとは？