補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

目指せSランク

怒り狂う鍛冶師

　ビーズの街にあるゲンの工房を訪れたニラダ達『成長しあう者達』は、ドットと出会い、自身がドットの世話になっている事を明かし、ゲンがニラダに対してまずは疑問をぶつける。

「なるほどなドットから俺の話を聞いてい来たわけか、そうだとしてもドットは俺がこの街で鍛冶師をしている事は知らないはずだが」
「それに関してはちょっと話すと長いのですが……」

　まずニラダはゲンがかつてドットと共に修行し、父であるゴーンからの指導を受けていたパックの街に行った事、そこで父であるゴーンが他界し、ビーズの街にいる事を聞いてやってきたことを告げると更にゲンは驚きの声を出す。

「待ってくれ！親父は死んじまっていたのか⁉」
「え？ご存じなかったんですか⁉」
「ああ、しかも10年も前だなんて、もしかして急死だったのか……」
「いえ、おそらく工房の跡地を他の人に譲る事を持ち掛ける話しはしていたのである程度予期できたかと……」

　ニラダより工房の跡地を他の者に譲る為の話し合いをしていた事実である程度は予期できていたのではないかと聞くと、落胆したかのように声を出す。

「そうだったのか、あの親父、出ていった俺より、他人の事を気にかけていたのか、なんとも親父らしいな、昔からそうだったぜ」
「ゲンさん……」
「それで親父が死んじまっていたからって俺に何の用だ？」
「まずはこれを見てください」
「これはアビジンじゃねえか！てめえ一体どこでこんな物を？」
「はい、実は……」

　ニラダは魔王軍の元幹部であるギガングとの戦いを経てギガングの鎧の一部であったアビジンを手に入れ、それを剣に加え強化したい事を告げる。

「なるほど、ドットがアビジンを扱えなくて、親父をあてにしていたが、死んじまっていたから俺にこのアビジンを加えた剣を作って欲しいって事か」
「はい、お願いできますか？」
「受けるわけねえだろう！バカ野郎が！そもそも俺は冒険者の依頼や武器作りはしてねえんだ！とっととてめえの街に帰りやがれ！」
「ですが、これは今はあなたにしかできないんです、魔王軍の幹部を倒さなければ人々が安心して暮らせません！」
「耳障りの良い事を言いやがって！俺はそういう奴が大嫌いなんだ、ましてお前がドットの知り合いならな」
「そ、そんな……」
「ドットはどうも俺の事を嫌っていたようだが、俺だってあいつの事は気に入らなかったんだよ、へたくその癖に親父に気に入られてよ、あいつも親父にとって耳障りの良い事ばかり言ってたんだ、『人を守れる武器を作りたい』なんてな、きれいごとをいっても武器なんてしょせん人殺しの道具じゃねえか！」

　父の事、そしてドットの事で怒り狂うゲン、彼の怒りはまだ止まらない。