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異世界で仲間が増えました

倉庫の案

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午前の診療が終了し、診断書を詰所に持っていくとアレフさんの補佐官を名乗るソフィアさんという女性がいて、そのソフィアさんに診断書を渡す。

 ちょっと気になる事があるし、ソフィアさんに聞いてみるか。

「あ、すいません、外で座り込んでいる女の人がいるんですが、大丈夫なんですか?」
「座り込んでいる女の人ですか?まさか……」

 そう言ってソフィアさんは執務室から出て行ったので。俺も後を追いかける事にした。

 詰所の外に出るとその女性はまだ座り込んでいた。一応、道の真ん中とかには座っておらず、端の方に座っており、ソフィアさんがその女性について言及をする。

「まだいたなんて、何度来ても無理なものは無理なのに」
「すいません、一体何があったんですか?」
「彼女はダッカ地方からこちらに移住してきた料理人のメルさんという方なんですけど、少し困った注文をされてきて」
「困った注文?」

 あの女の人が昨日ギベルトが行っていた移住してきた料理人か、それにしても困った注文ってなんだ?

「あの方はどうもこちらでお店を開きたかったようなのですが、空き店舗を用意してほしいと訴えてきましてね」
「え?用意できなかったんですか?」
「既に店舗用の物件は埋まっていましてね、居住用のみなら用意できると申したんですが聞き入れなくて」
「それなら1度、どこかの店で修行しながら改めて店舗が空くのを待つか、修行先の店舗を引き継ぐのもありなのでは」

 俺がその案を話すと、ソフィアさんから更なる返答がきた。

「それがあの人、『他店で働くと実家の味が損なわれる』といって、頑なでして」

 こだわりはあるだろうけど、今のままじゃ仕事にならないぞ。ん?そうだ。

「あの倉庫とかの紹介はしましたか?」
「倉庫ですか?」
「実は俺の診療所、ダンカンさんてって人から譲ってもらった倉庫をちょっと改築して診療所として使っているんですよ」
「そうですか、盲点でしたね、ありがとうございますミヤシタ様、聞くかどうかわからないけど提案してみますね」

 ソフィアさんもとりあえずあのメルって人に提案するようだし、とりあえず俺にできるのはここまでかな。

 空き倉庫が見つかってくれるといいんだが。

 さて、俺はそろそろ診療所へと戻るか。

 アレフさんの補佐官であるソフィアさん、そして新たな移住者メルという名の料理人、両者がそれぞれこれからもたらす事がミヤシタ・リハビリ・クリニックに新たな風を吹かすことを、この時の俺はまだ知る由もないのだ。
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