理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

異世界で仲間が増えました

応用化（アプリケーション）

ミミが魔法でギベルトさんの治療を終えると再度俺はスマホで腕の骨のくっつき加減を撮ることをギベルトさんに告げる。

「それじゃあギベルトさん、もう1度腕を撮らせてください」
「ああ、頼むぞ」

　ギベルトさんがそう言うと、俺はギベルトさんの腕をスマホのカメラで撮り、照射診断の機能を使用する。

　少し読み込みに時間がかかるが、画像が出たぞ。あっ！これは！

「ギベルトさん、あなたの腕の骨は正常に戻っています」
「そうなのか、それじゃあ俺は鍛冶師に復帰できるのか⁉」
「とりあえず1度軽く鉄の打ち込みをやってもらっていいですか？」

　俺がそう言うと、ギベルトさんは火は使わずにとりあえずトンカチで鉄の塊を叩くだけの動作のみを行う。

　俺は鍛冶についてはよく分からないがいい音だと思うし、ギベルトさんもどこか感触のよさそうな表情をしている。

「ケガの前ほどじゃねえが、なんかいい感じになってきたな」
「そうですか、それは良かった」
「ただ、今の感じじゃダンカンさんに合った剣を作るのはまだ先になりそうだ。悪いが、そうダンカンさんに言ってくれるか」
「そうですか、まあそこはゆっくりと……」

　俺も知識はないが鍛冶のリハビリに付き合うと言おうとしたところ、突如スマホから音が聞こえる。まさかまた何かの通知かと思いスマホを確認すると思わぬ通知が来ていた。

『おめでとうございます。あなたは新たなスキル、応用化アプリケーションを獲得しました』

　まさか、ここに来て新たなスキルの獲得⁉最適化リハビリを習得したときと同様、ページがスクロールできたので、してみるとスキルの説明が書いていた。

『スキル：応用化アプリケーションについての説明をいたします。このスキルはケガや病気等の後遺症をきっかけに低下した応用能力をケガ、病気以前の状態に戻します』

　応用能力の回復、これは作業療法が及ぶ範疇の事柄だ。俺達理学療法士とは別に作業療法士というリハビリの専門家が存在する。理学療法は立つ、歩くといった基本動作のリハビリだが、作業療法は食事をするや、衣服をたたむといった応用動作のリハビリを行う。そうか、この場合鍛冶師は応用能力とみなされたわけだな。

『発動条件：ケガ及び病気の治療が完了している事かつ後遺症も取り除いている事。なお、スキル使用によって病気以前以上の能力には向上しませんのであらかじめご了承ください』

　そうか、骨の治療も終えたからこそ、このスキルが発動可能という事で、このタイミングで習得したんだな。

　ギベルトさん、また鍛冶の仕事がすぐにできるかもしれませんよ。