理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

異世界で仲間が増えました

鍛冶師へのリハビリ

　ダンカンさんに頼まれてギベルトさんの後遺症の除去に行った翌日、午前の診療を終えて昼食も済ませた俺はリハビリメニューを書いた紙をバッグに入れて出かける準備をしていた。

「それじゃあ、今日もギベルトさんの所に行ってくる」
「気を付けてくださいね」
「ああ」
「あのさ、やっぱりそのギベルトって人の手が治ったら、リハビリ器具を作る依頼をするの？」

　いつも思うが、本当にミーザは直感で確信をつくのが上手いな。

「まあ、あのダンカンさんが世話になっていた人の息子さんだし、ケガの話を聞かなければゴルさんが紹介しようとしてくれた人だしな」
「それじゃあ……」
「だが、まだその話をする段階じゃないな。今のギベルトさんは俺にとっては患者であるからな」
「まあ、頑張ってよ。ユーイチのリハビリをちゃんと真面目に受ければ鍛冶師の仕事にも復帰できると思うしさ」

　ミーザの言葉を聞いて、俺は診療所を出て、ギベルトさん宅へと向かった。

　さすがにちょっと遠いけど、工房の関係上仕方がないか。

　昨日見たところ、相当な火を使っていたし、サウナ並みの暑さだったな。この間の飲食店での火力とは多分ケタ違いで、少しの事故が街中を巻き込みかねないから、街のはずれに工房を造ったんだろう。

　そして今日はしっかりとギベルトさんの家の扉をノックする。

「すいません、ミヤシタ・リハビリ・クリニックのユーイチ・ミヤシタです」

　俺が呼びかけると、家の中からギベルトさんが出てきて、俺に対して声をかける。

「おお、本当に来てくれたんだな。診療所ってのは街の中心にあるのにご苦労なこったぜ」
「呼ばれれば、お伺いするのが往診ですからね」
「俺が呼んだわけじゃなくて、あんたが勧めるから受けたようなもんだけどな、まあいい。そう言うなら、呼ばれりゃ王都にも行くのか？」
「王都ですか？まだそこまで広まってはいないと思いますが」

　王都なんて、俺の想像を超える言葉を言ってきたと思ったら、更にギベルトさんは話を続ける。

「自慢じゃねえが俺の親父は王都の武器屋や、軍からも武器開発の依頼を受けた事があるんだぜ」
「そうなんですか？すごいですね」
「そんな親父の後を継いだ俺がこんなザマじゃあ、死んだ親父に顔向けできやしねえな」
「だから今日からリハビリをして、1日も早くまた工房で作業ができるようにならないとですね」

　俺がリハビリを受ける事で職人として工房に立てる日が1日でも早くなると主張すると、ギベルトさんは返答をする。

「じゃあ早くそのリハビリを受けさせてくれ」
「はい」

　さあ、いよいよギベルトさんのリハビリ開始だ。