上 下
89 / 273
異世界生活は大変です

治癒士長ザリアン

しおりを挟む
 領主様の館で使用人長のバンさんとメイドさんに出迎えられた俺は早速領主様と治癒士達が待つ部屋に案内され、その部屋に入室する。

 入室した瞬間、俺はとんでもなく圧倒される思いになった。

 何故なら、まず部屋自体がとても広く、机が長い。俺が勤めていた病院の会議室並みの広さだ。

 一番奥の席にコーロ地方領主のバートン氏がいて、他はみな同じ服を着た人達だ。治癒士のいわば制服のようなものだろう。

 ただその中に1人だけ治癒士達の制服に加えマントを羽織っている男性、おそらく50代くらいと思われるが多分あの人が……。

「我が館までご足労をかけたなミヤシタ殿、貴殿も空いている椅子に座るがよい」
「は、はい」

 空いている椅子って言っても、遠いが俺は真っすぐ領主様、そしてマントの男と思いきり向かい合っているうえに、その向きに俺1人なんですけど。

 それから治癒士達に囲まれている感じが、まるで裁判の被告人のような気分だよ。

 そして、横の席から突如治癒士の1人が言葉を発した。

「それではこれより、ユーイチ・ミヤシタ氏には教本並びにリハビリについての説明並びにそれに関する我らからの質疑応答を始めたいと思います。この会の進行は僭越ながら私、治癒士のゴルが務めさせていただきます」

 結構若いのにこの会の進行を任せられるとは相当優秀なのかもしれないな。

「それではまずは領主様より開会の挨拶をお願いします」

 あ、領主様の挨拶があるのね、歓迎会で挨拶長いよって突っ込まれた俺が思うのもなんだけど、手短にお願いします。

「まずは我が館までご足労であった、治癒士の皆、そしてミヤシタ殿。だがまさかミヤシタ殿が教本を買い取ってほしいと願い出た時はどうするかと思い、治癒士長であるザリアンに相談し、このような会を設けさせてもらった。ではザリアン、お前の考えをミヤシタ殿に伝えよ」

 領主様に促されて隣の男性が立ち上がった。やはりあの人が……。

「お初お目にかかるなユーイチ・ミヤシタ殿、私はコーロの治癒士長であるザリアンだ」
「お初お目にかかりますザリアン殿、私はキッコの街で『ミヤシタ・リハビリ・クリニック』という診療所を領主様のご厚意でさせていただいているユーイチ・ミヤシタです」
「貴殿の事は治癒士の間でも話題になっている。我らが治しきれなかった二コラ様が足の怪我によって足が動かなくなったのを貴殿が治したことをな」
「いえ、それは皆様がまずお怪我を治したからです。私1人では不可能でした」

 さて、ザリアン氏が俺に何を聞きたいのかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

処理中です...