理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

異世界生活は大変です

館での出迎え

　早朝に領主様の館までの迎えの馬車が診療所まで到着し、馬車内から兵士らしき人が俺に声をかける。

「ユーイチ・ミヤシタ殿だな、お迎えに参った、乗られるがいい」
「はい、それじゃあミミ、ミーザ、行ってくる」
「頑張りなよ」
「ユーイチ様、お乗りになる前にその飴をなめてくださいね」

　ミミに言われ、俺は飴の一つを取り出し、口に入れてなめる。

「お、甘くて美味しいな」
「もう1個はお帰りの際になめてくださいね」
「分かった、それじゃあ行ってくる」

　そう言って、俺は馬車に乗り込み、俺が馬車に乗ったのを確認すると兵士の人が合図を出し御者さんが馬車を御す。

　相変わらず舗装されていない道だが、今日の俺は不思議と馬車酔いをしなかった。ミミのくれた飴の効果か？

　ありがとうミミ、帰ったら美味しいものをごちそうしよう。

　そんな事を考えているうちに館まで到着し、結局俺は到着するまで馬車酔いすることはなかった。

　そして馬車から降りると館より出迎えの人が来た。1人は小柄な中年男性で近くに2人メイドさんがいる。

　まず中年の男性が口を開いた。

「ユーイチ・ミヤシタ様ですね、お待ちしておりました。私は使用人長のバンと申します」
「ユーイチ・ミヤシタです、あれ以前館に滞在したときはいらっしゃらなかったですよね？」
「所用で留守にしていましたのでね、それにしてもザリアン様でも諦めていた二コラ様の足を治していただきありがとうございます」
「ああ、いえ、だけど治癒士の方々が治療が先にあったので完治までこぎつけられたんですよ」

　俺の言葉を聞いて使用人長という立場のバンさんが話を続ける。

「だからきっとザリアン様はあなたのお話を聞きたいとお思いになったのでしょう」

　ザリアン氏の俺が持つリハビリやスキルに対する興味は想像以上のようだな。

　生半可な説明じゃ納得しなさそうだな。だが二コラ君の後遺症を取り除き、実際にしたリハビリの話を知っているならなにか一押しすれば理解してくれるかもしれない。

「ミヤシタ様、あちらの部屋で領主様とザリアン様を中心に治癒士の方々がお待ちです。ご案内します」

　メイドさんがそう言うと俺を領主様と治癒士達が待つ部屋に案内する。

　部屋の前に到着するとメイドさんが扉の向こうの人物に声をかける。

「失礼します、『ミヤシタ・リハビリ・クリニック』を営んでおられるユーイチ・ミヤシタ様をお連れしました」

　その言葉が放たれると扉は開き、メイドさんが俺に声をかける。

「どうぞお入りください」

　さあ、いよいよ治癒士達、特にザリアン氏に対するプレゼンの始まりだ。