理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

異世界に転移しました

館にて

　初めての馬車で俺は馬車酔いを体験したが、ミミの治癒魔法で元気を取り戻し、アレフさんの案内で領主の館へと入っていく。

　館の入り口を警護している兵士らしき人にアレフさんが声をかけている。

「失礼、キッコの街より領主様への訪問客をお連れした。お目通りしたいので中に入れてはくれぬか」
「はっ！それではどうぞ」

　兵士達が道を通してくれるとアレフさんを先頭に俺とミミも進んでいく。

　それにしても広い館だなあーー！日本人の金持ちでもこんな広い家に住める人はそういないだろう、やっぱり一地方とはいえ、領地を持っている人は違うんだな。

　そんな事を考えながら大きな扉の前にたどり着き、アレフさんが扉の向こうに対して声を出す。

「失礼いたします、先の話のユーイチ・ミヤシタ氏をお連れ致しました。お目通りをお願いします」

　アレフさんがそう話すと扉が開き、声がする。

「入れ」

　その声が聞こえるとアレフさんが中に入っていき、俺達も続いて入っていく。

　するとそこには中年のいい体格をした男がいて、周りにはお手伝いのメイドさんらしき女性が2人と、多分護衛の兵士の男性が2人いた。

　そして中年の男性が口を開いた。

「貴殿がユーイチ・ミヤシタ殿だな、私はコーロ地方を治めるバートンだ。ようこそ我が屋敷に」

　さてと、この人を納得させないと俺の診療所の開設の道は閉ざされてしまう。さあ、俺に何をさせるつもりなのか？おっと俺もまずは挨拶だな。

「お招きいただき大変光栄でございます。私はユーイチ・ミヤシタと申します」
「私は王都で聖女見習いをしているミミと申します。ユーイチ様のスキルの証言者として参上しました」

　俺達がそれぞれ挨拶を済ませると、領主様は早速用件を話し出した。

「アレフから貴殿の話は聞いている。だが私も今一つ君のスキルとやらの効力がいかほどかは想像がつかん。そこで見させてもらおうと思ってな。ついてきたまえ」

　領主様はそう言うと部屋から出ていき、メイドさんや護衛の兵士も領主様について行った。

　あっけにとられている俺にアレフさんが声をかける。

「何をやっている、君も行くぞ」
「は、はい」

　どういう事だ？あの部屋で見るんじゃないのか？だけど、あの部屋に後遺症らしきものを抱えている人がいる様子はなかったから。別の部屋にその手の症状がある人がいて、それを治せって事なんだろうか？

「ここだ」

　領主様に促されて部屋に入るとそこにはおそらく10歳前後の男の子がベッドの上にいた。まさか……。

「彼は二コラ、私の息子だ。もし君の能力が本物なら息子を治してくれ」

　領主様の息子がまさかの後遺症持ち！だがもうやるしかない！