一歩の重さ

burazu

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高校2年編

心構え

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 鎌田が村田の発言に対して怒り、そのまま鎌田が帰宅するという形でその日の研究会は終了をした。帰宅前に一輝が天馬と村田に言葉を発した。

「天馬、村田君、今日は帰るが、もし鎌田さんからまたしたいと連絡があったら、もう1度ちゃんと研究会をしよう」
「そうだな、だが今の精神状態でしかも第3局まで時間もあまりないなか、するかどうか……」
「それならそれで仕方ない、それとは別で俺達も順位戦があるし、その研究会もした方がいいだろう」
「鎌田さんが来れないなら代理メンバーが必要だな、いずれにしても研究会を止めるわけにはいかないからな」

 天馬の言葉を聞くと一輝はそのまま天馬の部屋をあとにし、そのまま帰路につく。

「じゃあ僕も帰ります、失礼しました」
「ああ、村田君、次鎌田さんに会ったらちゃんと謝っておけよ」
「はい……」
「体調が悪いのが心配なのは分かるが、仮にそれで負けたとしてもその責は全て鎌田さんが負うんだ。そうなれば俺達の気遣いなんてかえって苦しめるだけだからな」

 天馬は村田の心情は多少理解しながらも勝負の世界にいる以上勝ち負けの責は全て自分が負うという事を改めて強調し、それについて村田も返答をする。

「僕、それは理解していたつもりでいたんですけど、やっぱり僕は心構えが足りなかったんですね」
「ああ、俺もそう思う」
「やっぱりそうですよね……」
「考えてもみろ、一輝のせいで目立たないが中学生で二段というのも相当なもんだぞ、本当なら自分より強いはずの奴に中途半端な気遣いをされたらそりゃ怒るよ」

 中学生ですでに奨励会二段という村田も一輝には劣るもののとてつもないスピード昇段であることを口にすると更に天馬は付け加えて話す。

「年下でまだ格下でもあるとはいえ、村田君もすぐに三段リーグに来て自分を追い越すかもしれない、それは常に鎌田さんの頭にあるんだ。村田君に限った話じゃないけどな」
「う、ううう……」
「まあ、少ししたら俺が連絡して参加の確認をしておくから、来るまでにちゃんとどう言って謝るか考えときな」
「はい、それじゃあ失礼します」

 そう言って村田も天馬のアパートをあとにし、部屋の中は天馬1人になり、1人になったとたん、思わずつぶやいてしまう。

「まったく、何だってこんな……」

 天馬もあらゆるタイミングの悪さが今回の事態を招いてしまったと考えるが、そう呟かずにはいられなかった。

 そして一輝達も帰路についてからしばらくすると足取り重く、鎌田が自分のアパートに戻り、部屋に入ると力なく座り込んでしまう。
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