一歩の重さ

burazu

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高校2年編

鎌田の負担

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 ある日、一輝達の研究会は天馬のアパートに集結して将棋盤を挟んで検討をしていた。

「そうすると、やはり……」
「天馬、こっちの手は……」
「甘いな、俺なら……」
「待て、そう来るなら」

 一輝と天馬が検討にヒートアップしていると奨励会員の村田がその検討に一旦待ったをかける。

「ちょっと待ってくださいよ、長谷さん、真壁さん、今日は鎌田さんの女流皇座戦の対策の為の研究会でしょう!何で2人の方が熱を上げてるんですか!」

 今日の研究会は現在防衛戦のさなかの鎌田美緒女流皇座の対策研究会であり、村田の一言に冷静さを取り戻した一輝と天馬は鎌田に声をかける。

「あ、そうだった鎌田さんはどう思います?」
「鎌田さん、聞こえてますか?」

 鎌田の反応が悪く、数度一輝達が呼びかけると鎌田はまるでさっきまで眠っていたかのような反応を示す。

「あ、す、すいません⁉もう1回いいいですか?」
「鎌田さん、お疲れですか?もしそうなら今日の研究会は……」
「いえ、やります!やらせてください、私の為の研究会なんですから!」
「そうは言っても、三段リーグと女流棋戦の防衛戦はスケジュールもそうですが、精神的な負担も大きいんじゃないんですか?」

 天馬自身も三段リーグの過酷さは経験しており、それに加えて鎌田は女流棋戦の防衛戦も行っているのでその負担の大きさを指摘し、鎌田は返答をする。

「だけど、これは私自身が選んだことなんです、そんな事で音をあげたら、三段リーグで競っている他の会員にも、今私とタイトル戦を戦っている伊原さんにも失礼です」
「だけど……」

 鎌田はあくまでも自分の意思でやっている事を主張し、天馬は戸惑うが、そこに村田がもう1つの鎌田にとって負担が多い事を指摘する。

「最近の鎌田さんの疲れの原因はそれだけじゃないでしょう」
「村田君!」
「鎌田さんは記録係をしょっちゅうやっているじゃないですか、あれだってかなり負担が大きいはずです!」
「村田君はまだ中学生で免除されているから分からないだろうけど、あれだって立派な勉強よ、可能な範囲ならやっておくに越したことはないわ」

 鎌田はあくまでも可能な範囲でやっていると主張するが村田はそれに対しても指摘する。

「いくらなんでも引き受けすぎですし、順位戦のように深夜まで及ぶ対局も引き受けているでしょう、疲れもたまりますよ!」
「対局の空気をできる限り味わう事だって大事なのよ、勝負勘は棋士には必須でしょう」
「でも鎌田さん、少し記録係の回数を減らしてAIで勉強した方が為になる事が……」
「AI……、AIなんて私だってやっているのよ!でもそれだけで強くなれれば苦労はないわ!」

鎌田の身を案じる村田の発言にかえって鎌田は神経を逆なでられたような感じになり怒りが爆発してしまう。この研究会の行方は?
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