一歩の重さ

高校２年編

最初の一声

　一輝の師匠、諸見里九段の学生時代の同級生が校長を務める師化井小学校に指導対局の為に訪れた、一輝と小夜、そして岸本五段、山西女流二段は横山校長に体育館まで案内されて体育館に向かっている。

「あの校長先生、パッと見子供達の気配がないんですがもう体育館に集合しているんですか？」
「ええ、もう体育館に集合しているはずです、先生方は体育館のステージ袖から登場してもらおうと思っております」
「そうなんですね、分かりました」

　校長の案内で一輝達は児童達が入る出入り口とは別の出入り口から体育館に入り、自分達が呼ばれるタイミングを待っている。

　そして一輝達が呼ばれるのを待っている中、教師の1人がマイクを持ち、体育館にいる児童に呼びかける。

「ええ皆さん、今日は特別に将棋の指導の為、将棋連盟さんより棋士の先生方がいらっしゃっています」

　将棋の棋士が来ること自体は以前より児童達にも知らされてはいるが、いざ来ていると聞かされるとざわつきを隠せないでいた。

「それでは棋士の先生方に皆さんの前でお話してもらいます。棋士の先生方お願いします」

　教師の呼びかけを聞いて岸本五段が一輝達に呼びかける。

「どうやら出番だのようだ、いくぞ」
「はい」

　岸本の呼びかけに一輝達が応じて、体育館のステージ上に現れて児童達がその姿を目にすると教師が児童達に呼びかける。

「将棋連盟よりおこしの棋士の先生方です。皆さん、盛大な拍手をお願いします」

　教師が拍手を促すと児童達は一輝達に対し大きな拍手をし、拍手が止むと教師が今度は一輝達に自己紹介を促す。

「それでは棋士の先生方、順番に自己紹介をよろしくお願いします」

　そう言ってステージ上の教師はまず岸本にマイクを渡す。

「ええ、皆さん、こんにちは棋士の岸本靖です。今日は僕達と楽しく将棋を学んでお父さんやお母さん、ご兄弟、今日来られなかったお友達にも教えてあげてください」

　続けて、岸本は一輝にマイクを渡す。

「こんにちは、棋士の長谷一輝です。一つでも何か覚えて帰っていただくと嬉しいです」

　今度は一輝は山西女流二段にマイクを渡す。

「こんにちは、女流棋士の山西紗綾です。楽しく、分かりやすくをモットーに本日の指導対局に臨みたいと思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いします」

　最後に山西は小夜にマイクを渡す。

「こんにちは、女流棋士の牧野小夜です。分からない事はどんどん私達に聞いて少しでも将棋を覚えて帰っていただくと嬉しいです」

こうして一輝達の挨拶は終わり、いよいよ指導対局が始まろうとしている。