一歩の重さ

burazu

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高校2年編

壮絶な駆け引き

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 真壁天馬五段は関西将棋会館に対局の為、訪れていた。

 本日は棋将戦本戦トーナメントで倉橋正一八段との対局だ。倉橋八段は関西所属である為、格下の天馬が関西将棋会館に訪れる形になる。

 とはいえ、天馬も何度か対局で関西将棋会館には訪れている為、すっかり慣れたものだ。

 天馬は本日の対局室へと入室する。

 まだ対局相手である倉橋八段は来ておらず、とりあえず天馬は先に下座の座布団へと座る。

 そこから数分遅れで倉橋八段が到着する。小柄で華奢な体格ではあるが天馬にとってはその体格以上の迫力を感じる存在なのである。

 その倉橋が上座にある座布団に座り、駒箱を開けて駒袋を取り出し、紐をほどき、駒を出すと互いに一礼して、倉橋と天馬は交互に駒をとり順番に駒を並べていく。

 駒を並べ終えると記録係が倉橋の歩を5枚持ち、振り駒を行う。

「倉橋八段の振り歩先です」

 そう言って両手で包み駒を振って畳に投げて結果を告げる。

「と金が3枚です」

 これにより天馬の先手が確定し、対局開始時刻10:00になると記録係より対局開始が告げられる。

「それでは時間になりましたので真壁五段の先手番でお願いします」
「よろしくお願いします」

 天馬は少しばかり深呼吸をしてから駒に手を伸ばす。

 天馬の初手は2六歩と飛車先の歩を突く。早々に居飛車宣言だ。

 天馬が指すのを見てほとんど間を置かずに倉橋は8四歩と飛車先の歩を突く。これにより相居飛車が確定したが戦型は未だ決まらない。

 更に天馬は2五歩と歩を伸ばしていく。間を置かずに倉橋も8五歩とする。

 しばらく天馬は時間を使って考えるがここで天馬が選択した手は7八金と角の頭を守る手だ。すかさず倉橋は3二金とする。これにより相掛かりの戦型となる。

 互いに指し慣れた戦型であり、序盤から中盤にかけての研究をどちらが深くしているかが勝負の分かれ目と互いに感じている。

 そして天馬は3八銀と銀を上げ、倉橋も7二銀とする。

 互いに飛車先の歩の交換を保留するという最新系の形での勝負だ。

 ここでしばらく時間を使って天馬の選んだ手は6八玉だ。

 この形は近年先手番の相掛かりでは多く指されており、この形の研究を多くの相掛かりや居飛車の得意棋士はしているのだ。

 そして倉橋は5二玉と中央に玉を上げる。この形もまた後手相掛かりでは多く指されており、そこからの研究も盛んなのだ。

 若手のホープである天馬と無冠の帝王である倉橋の勝負は早くも壮絶な駆け引きを予感させる幕開けだ。
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