103 / 160
高校2年編
将棋界の師弟
しおりを挟む
林原九段に弟子入りすべく、梢子は一輝と共に将棋カフェで対面し、林原九段は師匠になると発言はするが梢子に将棋を教えないとも発する。
戸惑う梢子を見て、林原は一輝に尋ねる。
「あの長谷さん、もしかして佐藤さんに将棋界における師弟の話をしていないんですか?」
「あ、はい、お父さんが元奨励会だったから知っているかとばかり」
「そうですか、仕方ありません私が説明しましょう」
林原はそう言うと梢子の方をしっかりと向き、目力を強くして伝える。
「佐藤さん、練習将棋なら師弟でやる事はありますが、基本的に将棋界の師匠というのは将棋の戦法や定跡というものは教えないんです」
「え、そうなんですか?それじゃあ林原先生は私に何をしてくれるんですか?」
「そうですね、分かりやすく言うと将棋界における身元引受人のようなものですね」
「身元引受人?」
まだ親の庇護下にある梢子にとって、身元引受人という言葉は今一つしっくりきていないようであり、林原が詳しい説明を始める。
「例えば、そうですね。もしも佐藤さんが非行、つまり何か悪い事をしてしまえば、親御さんとは別に私も保護責任を問われる事がありますね」
「悪い事⁉大丈夫ですよ、私そんな事しませんから」
「だから例えばの話ですよ。あとは研修会の試験を受ける為の推薦人の役割です」
「はい、少しイメージしていたのとは違いますね」
自分のイメージと少し違う事に落胆とまではいかないまでも少し力が抜けている梢子を見て林原が持っていたファイルから紙のようなものを取り出す。
「まあ、しかしさすがに私がそれだけではダメだと思いますので、少しばかりのお力添えをしましょう、これをご覧ください」
「これは棋譜⁉しかも……」
「そうです、あなたのウイナビ女子の決勝での棋譜です」
「ありがとうございます、帰ったら父とも検討してみます」
その言葉を聞き、更に林原の助言は続く。
「それも大事ですが、検討にはAIを使う事をお勧めします」
「AIですか?でもうちには将棋AIはありませんし、どのようなAIソフトを買えばいいのか……」
「ご心配なく、とりあえず今はスマートフォンの検討用アプリでも十分ですし、本格的なのはいずれ必要ですが焦る必要はありません」
「そ、そうなんですか」
安堵と不安両方の感情を梢子の表情から感じた林原は更なる助言をする。
「それからこの対局の検討だけでなく、今後自分がした将棋はなるべく棋譜を記録し、AIで検討をすることをお勧めします」
「は、はい」
「私にできるのはここまでです、後は佐藤さん次第です」
「はい、ありがとうございます」
林原の助言を胸に梢子は新たな将棋の勉強法に取り組むこととした。
戸惑う梢子を見て、林原は一輝に尋ねる。
「あの長谷さん、もしかして佐藤さんに将棋界における師弟の話をしていないんですか?」
「あ、はい、お父さんが元奨励会だったから知っているかとばかり」
「そうですか、仕方ありません私が説明しましょう」
林原はそう言うと梢子の方をしっかりと向き、目力を強くして伝える。
「佐藤さん、練習将棋なら師弟でやる事はありますが、基本的に将棋界の師匠というのは将棋の戦法や定跡というものは教えないんです」
「え、そうなんですか?それじゃあ林原先生は私に何をしてくれるんですか?」
「そうですね、分かりやすく言うと将棋界における身元引受人のようなものですね」
「身元引受人?」
まだ親の庇護下にある梢子にとって、身元引受人という言葉は今一つしっくりきていないようであり、林原が詳しい説明を始める。
「例えば、そうですね。もしも佐藤さんが非行、つまり何か悪い事をしてしまえば、親御さんとは別に私も保護責任を問われる事がありますね」
「悪い事⁉大丈夫ですよ、私そんな事しませんから」
「だから例えばの話ですよ。あとは研修会の試験を受ける為の推薦人の役割です」
「はい、少しイメージしていたのとは違いますね」
自分のイメージと少し違う事に落胆とまではいかないまでも少し力が抜けている梢子を見て林原が持っていたファイルから紙のようなものを取り出す。
「まあ、しかしさすがに私がそれだけではダメだと思いますので、少しばかりのお力添えをしましょう、これをご覧ください」
「これは棋譜⁉しかも……」
「そうです、あなたのウイナビ女子の決勝での棋譜です」
「ありがとうございます、帰ったら父とも検討してみます」
その言葉を聞き、更に林原の助言は続く。
「それも大事ですが、検討にはAIを使う事をお勧めします」
「AIですか?でもうちには将棋AIはありませんし、どのようなAIソフトを買えばいいのか……」
「ご心配なく、とりあえず今はスマートフォンの検討用アプリでも十分ですし、本格的なのはいずれ必要ですが焦る必要はありません」
「そ、そうなんですか」
安堵と不安両方の感情を梢子の表情から感じた林原は更なる助言をする。
「それからこの対局の検討だけでなく、今後自分がした将棋はなるべく棋譜を記録し、AIで検討をすることをお勧めします」
「は、はい」
「私にできるのはここまでです、後は佐藤さん次第です」
「はい、ありがとうございます」
林原の助言を胸に梢子は新たな将棋の勉強法に取り組むこととした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる