一歩の重さ

burazu

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高校2年編

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 日曜日の午後に自室のパソコンで将棋の研究をしていた一輝のスマートフォンが突如なり、画面を見ると梢子の名前が表示されていた。

 何事かと思いながらもとりあえず一輝は電話に出る。

「もしもし」
「あ、もしもし長谷君、今大丈夫?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「うん、実はね林原先生から話をしたいという連絡が来たの」

 梢子は電話越しで一輝に林原九段から連絡があったことを知らせ、更に話し続ける。

「それでね、林原先生はお家に来られると緊張するからって近くの将棋カフェで話がしたいって言ってたのよ」
「そうなんだ、でも良かったじゃないか」
「それでね、お父さんに付いてきて欲しいってお願いしたんだけど、嫌だって言うのよ」
「どうして?お父さん、佐藤さんが女流棋士になりたいのを応援していたじゃないか」

 一輝の問いに呆れ気味に梢子が返答をする。

「お父さん、林原先生と同世代だから、どうも顔を合わすのに抵抗があるみたいなの、いい年してなに考えてんだか……」
「ははは、そりゃあ大変だ、それならお母さんに頼んだらどうだろう」
「実はお母さん、前日に囲碁の大盤解説の仕事があって、地方に行くから、帰って来るのは夜になりそうなのよ」
「それは困ったな、なんとかお父さんを説得しようよ俺も協力するからさ」

 一輝は梢子の父の春秋の説得に助力すると言うが、梢子の反応は一輝の予想を越えるものであった。

「それがお父さんったら、お母さんもだめなら竹田先生にお願いしろっていうのよ」
「竹田先生に⁉どんだけ会いたくないんだよ、それで竹田先生には連絡したの?」
「竹田先生もその日は地方のイベントに出演予定でどうしても無理だって」
「それは困ったな、仕方ない林原先生に事情を話して……」

 一輝が林原に日にちの変更を懇願しようとする行動を察した梢子が一輝に対して意外な言葉を述べる。

「待って、そんな事をしたら林原先生が師匠になってくれないかもしれないわ」
「それじゃあどうする1人で会う?」
「あの、長谷君、付いてきてもらって大丈夫?」
「お、俺?」

 梢子より林原九段とのいわば面談みたいなものに一輝に付いてきて欲しいと懇願され一輝は戸惑うが、さらに梢子は話を続ける。

「やっぱり将棋界のすごい人に1人で会うのは不安だし、将棋界の他の知り合いがもう長谷君くらいしかいないし、だめかな?」
「……ちょっと待って竹田先生のイベントの日に会うんだよな、確かその日は大丈夫だし、付き添うくらいならいいよ」
「本当、ありがとう」
「でも、林原先生に自分の意思は自分で伝えるようにしてくれよ」
「分かってるわよ、それじゃあお願いね」

 図らずも林原九段と梢子の面談に立ち会うこととなった一輝、話し合いの行方は?
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