一歩の重さ

burazu

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高校2年編

勝利への1本道

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 東京の将棋会館で一輝と綾小路七段の対局をモニターで見ている研究仲間の天馬達。

 そんな中天馬がAIの評価値を見ながらではあるが一輝の勝ち筋に気付いたようであった。

「これはまさか……」
「どうしたんですか?」

 村田に尋ねられた天馬は一輝の勝ち筋について話しだす。

「いいか、まずはこの6五の桂馬を食いちぎってそれから……」

 そこから天馬はAIの細かい勝ち筋を語りだし、それに鎌田が反応をする。

「そんな、そんなのAIしか発見できない勝ち筋です、一手でも間違えたら長谷先生の負けです。もう時間もないし」
「俺もAIが示してくれなければ気付きませんでしたよ。ただ今日の一輝はもしかしたら……」

 長年の付き合いで天馬は一輝の棋譜から集中の度合いがなんとなくではあるがすさまじさを感じていた。

 そして一輝は遂に動き出す。6五銀と桂馬を食いちぎる手を指す。

 この手が意外だったのか綾小路は再度読み直し、一輝の狙いを検証する。

 綾小路はここで3六に歩を打ち、次にと金を作る算段を立てる。

 受けてもジリ貧になると判断したからだ。

 一輝も綾小路の意図を読み、攻め合いを受けて立とうとするが、更に残りの時間を読みに使う。

 そして持ち時間を使い切ったことを記録係より告げられる。

「長谷四段、持ち時間を使い切りましたので、これより1手1分以内でお願いします」

 そして一輝はその1分も使って読んでいく。

「50秒、1、2、3、4……」

 次に一輝は2一歩成りとして綾小路の桂馬を取って更に攻めを繋げる、負けじと綾小路は3七歩成りと飛車取りとするが、一輝はそれを無視し、綾小路の玉にじわじわと迫っていく。

 綾小路も懸命に攻めるが、一輝の玉は遠く感じ、自身の手番で一度離席をする。

 離席の間も時間は消費されており、しばらくすると一手指す。

 一輝もそれに応じた手を指すと、綾小路より投了の意思が告げられる。

「負けました」

 綾小路に初勝利をあげた一輝であったが、疲れのほうが大きく、まだ実感がわかないという感じであり、綾小路も終盤に迫られて脳が疲弊しており、感想戦に中々移れない状況だ。

 何とか少し気持ちを持ち直した綾小路より感想戦の声がかかり、一輝もその感想戦に応じた。

 そこから観戦記者も交えた感想戦が始まる。
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