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高校2年編
元奨励会員のその後
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ウイナビ女子のアマチュア枠で出場している佐藤梢子は一輝の高校のクラスメイトであり、またかつてアマチュア大会を総なめにした佐藤春秋氏の娘であることを一輝が梢子から聞いた話から竹田九段は導き出した。
そんな竹田に鎌田女帝が質問をしている。
「名前だけなら私も聞いたことがあるんですが竹田先生はその佐藤さんとなにかつながりや交流があるんですか?」
「ああ、佐藤春秋さんはかつて奨励会にいたことがあり、当時奨励会員だった私も何度か指したことがあります」
なんと春秋氏はかつて奨励会に在籍していたことがあり、竹田が奨励会員だった時期とも重なっていたのだ。
その事に一輝は驚きを隠せないと共に、腑にも落ちたのだ。
「そうなんですか!でも、すぐに気付いたのはそういうことなんですね」
「そういうこと、まさか春秋さんの娘さんの将棋を見ることになるなんて夢にも思わなかったけどね」
竹田の言葉を受け、さらに鎌田が竹田に質問をする。
「当時のお話とか聞かせてもらってもいいですか?」
「いいですよ。僕が彼と初めて会ったのは三段リーグに上がった頃で、春秋さんの将棋は力強かったですね。僕が一番練習将棋をしたのも春秋さんだったよ。私の同世代はすぐにプロ入りしましたからね」
懐かしさのあまり穏やかな表情で語るが次の瞬間少し表情が沈む。
「ところが彼はプロ入りがかかると負けが込み、年齢制限で退会に追い込まれました。皮肉にも彼の退会が決定した日に私はプロ入りを決めました。その日の彼の言葉は今でも忘れられません」
次の瞬間竹田は春秋氏がかけた言葉を一輝達に告げる。
「最後の日に私にこう言いました。『義男、俺は自分の名前のように将棋への熱が中途半端だったかも知れねえ』とね、彼を見たのはそれが最後です」
竹田の話を聞いて、一輝は尋ねた。
「そうだったんですか、でも道場の事を竹田先生が知っていたのは?」
「その後の事は断片的に元奨励会の友人から聞いていました。退会後すぐに大学受験をして26歳の大学生になったこと、就職後は奨励会時代から交際していた囲碁棋士の神田美晴さんと結婚したこと。アマチュア大会に出たのは就職してからでしたね」
「道場を開いたのは?」
「アマチュア大会に優勝してから知り合いにお願いされ指導員を始めたようです。名前こそ夫婦のものですが経営は別の人です。そこに囲碁スペースもねじ込みましたね」
竹田と佐藤春秋の意外なつながり、そして一輝はプロ棋士の夢が破れた者の人生の1つを知ることとなった。
そんな竹田に鎌田女帝が質問をしている。
「名前だけなら私も聞いたことがあるんですが竹田先生はその佐藤さんとなにかつながりや交流があるんですか?」
「ああ、佐藤春秋さんはかつて奨励会にいたことがあり、当時奨励会員だった私も何度か指したことがあります」
なんと春秋氏はかつて奨励会に在籍していたことがあり、竹田が奨励会員だった時期とも重なっていたのだ。
その事に一輝は驚きを隠せないと共に、腑にも落ちたのだ。
「そうなんですか!でも、すぐに気付いたのはそういうことなんですね」
「そういうこと、まさか春秋さんの娘さんの将棋を見ることになるなんて夢にも思わなかったけどね」
竹田の言葉を受け、さらに鎌田が竹田に質問をする。
「当時のお話とか聞かせてもらってもいいですか?」
「いいですよ。僕が彼と初めて会ったのは三段リーグに上がった頃で、春秋さんの将棋は力強かったですね。僕が一番練習将棋をしたのも春秋さんだったよ。私の同世代はすぐにプロ入りしましたからね」
懐かしさのあまり穏やかな表情で語るが次の瞬間少し表情が沈む。
「ところが彼はプロ入りがかかると負けが込み、年齢制限で退会に追い込まれました。皮肉にも彼の退会が決定した日に私はプロ入りを決めました。その日の彼の言葉は今でも忘れられません」
次の瞬間竹田は春秋氏がかけた言葉を一輝達に告げる。
「最後の日に私にこう言いました。『義男、俺は自分の名前のように将棋への熱が中途半端だったかも知れねえ』とね、彼を見たのはそれが最後です」
竹田の話を聞いて、一輝は尋ねた。
「そうだったんですか、でも道場の事を竹田先生が知っていたのは?」
「その後の事は断片的に元奨励会の友人から聞いていました。退会後すぐに大学受験をして26歳の大学生になったこと、就職後は奨励会時代から交際していた囲碁棋士の神田美晴さんと結婚したこと。アマチュア大会に出たのは就職してからでしたね」
「道場を開いたのは?」
「アマチュア大会に優勝してから知り合いにお願いされ指導員を始めたようです。名前こそ夫婦のものですが経営は別の人です。そこに囲碁スペースもねじ込みましたね」
竹田と佐藤春秋の意外なつながり、そして一輝はプロ棋士の夢が破れた者の人生の1つを知ることとなった。
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