一歩の重さ

高校２年編

開幕！ウイナビ女子オープン

一輝達が本日解説をするウイナビ女子オープン予選トーナメントは、既に本戦トーナメントにシードされている4名を除く12名を決める為のものだ。

　ここウイナビ本社にあるウイナビルーム内での公開対局であり、一輝達は別室で観客達に対し大盤解説を行う為、その声は対局者には聞こえない。

　ウイナビ女子は一定以上の基準は必要なもののアマチュアの女性も参加でき、この棋戦で一定以上の成績を残すと女流棋士への申請資格を得ることもできるのだ。

　そのウイナビ本社に小夜も訪れていた。もちろん本日は対局者としてだ。

　自身の対局の順番を待っている中、ある人物に声をかけられる。

「小夜ちゃーーん！」

　声のする方を小夜が振り向くと小夜もその人物に声をかける。

「美咲ちゃん」

　小夜が目にしたのは与田美咲女流二級で小夜と同じく女流棋士なのだ。美咲は今年女流棋士としてデビューしたばかりではあるが、小夜とは同年代で研修会時代からの仲なのだ。

「そう言えば美咲ちゃんは今日が女流棋士としてのデビュー戦なんだっけ」
「そうよ、トーナメント表を見ると、私と小夜ちゃん、予選決勝であたるよ」
「勝った方が本戦出場ね。負けないわよ」
「私だって」

　2人が互いにライバル視していると、係員が言葉を発する。

「まず、山西女流二段、牧野女流初段、対局場へおこしください」

　名前を呼ばれた小夜が美咲に声をかけ、対局場に向かう。

「あ、私だ。じゃあ行ってくる」
「うん、頑張ってね」

　小夜が対局場に向かう頃、別室では一輝達も大盤解説に向かおうとしていた。

「それでは、長谷四段、鎌田女帝よろしくお願いします」
「はい」

　大盤解説に向かおうとしている一輝達に対し、竹田九段が声をかける。

「あ、2人共、ちょっといいかな？」

　竹田の言葉に一輝が尋ねる。

「なんでしょうか？」
「まあ、持ち時間が30分のこの対局で長考はそうそうないとは思うけど、あなた達は牧野さんと近い関係だから指し手が止まった時にそういうトークで場を繋ぐのも大事ですよ。これ、おじさんのちょっとしたアドバイスね」
「は、はいありがとうございます」
「長谷さんは牧野さんと幼馴染。鎌田さんはVSをしているから、トークのネタは話しやすいとは思いますけどね、まあ私は出番までのんびりさしてもらいますよ」」

　竹田の言葉を受け、一輝と鎌田は大盤解説の会場に向かい直し、いよいよ解説の時が近づいていた。