一歩の重さ

burazu

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高校2年編

謎の研究手

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 皇位戦予選で一輝の対局相手は幼馴染でライバルの真壁天馬五段だ。

 その天馬相手に一輝は角換わりを選択した。

 角換わりは相居飛車の戦型で序盤から互いに角を交換し持ち駒とする。

 角の打ち込みに注意しながら陣形を整えなくてはいけない為、神経戦になりやすい将棋だ。

 だが近年のAIの発達により研究がしやすい戦型でもあり、プロ間での採用率は増えているのである。

 そのことを西田もスタジオで解説していた。

「この角換わりは近年定跡がかなり整ってきましたので、駒組まではお互いそんなに時間を使わないと思いますね」

 西田の解説に聞き手である山西女流二段が返答をする。

「はい」

 ところが、事態は意外な展開になる。駒組が終わり、互いに時間をかけ、攻めの糸口をつかむための手を進めると思いきや、天馬がほとんど時間を使わずに手を進めてきた。

 これには一輝も、戸惑うが時間を使って対応するほかなかった。

 そして一輝の手番で休憩時間に入る事となった。

 昼食時間になるとスタジオでも出演者の一時交代をしていた。

「ここからの解説は西田五段と聞き手はわたくし伊原聡子でお送りします。西田五段、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」

 解説は西田が継続だが、聞き手を山西女流二段から伊原聡子女流三段に交代した。

 伊原はかつては奨励会に在籍していたが年齢制限の規定で退会を余儀なくされ、女流棋士に転向したのである。先日は女流皇位戦で宮里春香女流皇位に挑戦したが敗退し、翌年の皇位リーグまで挑戦は持ち越しとなった。

 本日は聞き手としての仕事に精を出すのだ。

「それでは先生、初手から解説よろしくお願いします」

 西田は初手からの解説をしていき、分岐が起きやすい局面ではその一手の意味も解説していた。

 そして一輝が時間を使い、天馬が時間をほとんど使わない局面になり、伊原よりその部分を尋ねられる。

「この60手目を過ぎてから長谷四段は時間を使い、真壁五段はほとんど時間を消費しなくなりましたが、どういった意味なのでしょうか?」
「真壁五段の研究手がここででたと思いますね。彼は長谷四段と幼馴染でライバル意識が強くてとっておきをぶつけてきたかもしれませんね」
「真壁五段と長谷四段は普段研究会もされているとうかがっていますが、西田先生は弟弟子さんとはその、練習将棋などはされますか?」
「この間、僕の部屋に長谷四段を呼んで練習将棋をしたんですが、やっぱり強いですね」

 天馬が時間を使わない意味、そこに何が隠されているのか?
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