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プロ入り後秋から春
鳩森神社での決意
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千駄ヶ谷近辺にある鳩森神社に着いた、一輝と小夜は早速お参りすべく拝殿へと向かって歩き出す。
ここ鳩森神社は古くよりこの地に存在し、今は将棋ファンにとっては聖地であり、パワースポットでもあるのだ。
将棋連盟も年に1回祈願祭を行い、その後は指し初め式といって将棋会館の特別対局室に場所を移し、プロ棋士を相手に、参加したファンが1手づつ指していく形式なのだ。
その事について一輝と小夜が話している。
「明後日だよな、指し初め式って」
「まあ、今の私達じゃあ参加できないし、あまり気にしなくてもいいと思うわ」
小夜の言うように、指し初め式に参加できるのはプロの中でも選りすぐりの者だけなのだ。
いつかは自分達もと思いを馳せながらようやく2人は拝殿へとたどり着き、一輝が小夜に呼びかける。
「それじゃあ、お参りしよっか。俺が鈴を鳴らすから」
「じゃあお願いね」
小夜の言葉を聞き、2人同時に賽銭箱に小銭を投げ、一輝が鈴緒を鳴らし手を合わせお願いごとをする。
お願いごとを終え、拝殿に頭を下げると2人は拝殿をあとにした。
拝殿を離れて売り場を目にすると小夜からある提案がされた。
「そうだ、一輝君お守り買わない⁉それもあれを」
「そうだな、あれだよな」
2人はそう言って売り場に行くと巫女のアルバイトらしき女性に声をかけられる。
「ようこそおいでくださいました。何をお求めでしょうか?」
女性の言葉に一輝が返答をする。
「それじゃあ王手守りを2個下さい」
王手守りとは鳩森神社名物のお守りで主に勝負運に関するお守りである。やはり棋士である2人はあやかりたいものであるが、次の瞬間、小夜が言葉を放つ。
「ちょっと待って、一輝君いきなり2つ頼むってどういうこと⁉」
「どういうことって、俺が小夜ちゃんの分も出そうかなって思っただけだけど」
「いいの?」
「前に小夜ちゃんが言っただろ、プロになった瞬間に俺の方が格上だって、だからこれくらいしたほうがいいかなって」
一輝は自身が公式の立場上は小夜より格上になったこともあり、プロ棋士として対局料も入るようになる為、マナーとしてそうした方が良いと思っての行動であり、それを受け小夜が言葉を返す。
「いきなり生意気なことをするようになったわね。でもお言葉に甘えるわ」
小夜の言葉を聞き、一輝は女性に2つ分のお守り代を支払う。
「ありがとうございました」
女性の言葉を聞いて一輝たちは売り場をあとにし絵馬を目にする。
「絵馬書こうか」
「ああ」
そう言って2人は絵馬に自分の抱負を書く。
抱負を書き終えると小夜が一輝に提案をする。
「じゃあ、せーので見せよっか」
「おお」
「せーの」
そう言って互いに絵馬を見せ合い、小夜から読み上げ、続けて一輝も読み上げる。
「今年こそ女流タイトル獲得」
「名人になる」
まず小夜の抱負に対し一輝が言及する。
「タイトルかそういえば女流皇位戦にリーグ入りしたんだよね」
「そう、これを勝ち抜けば宮里さんとタイトル戦で戦える。私にとっては重要な対局になるわ」
言葉は少なげだが、小夜の闘志が一輝にも伝わってきている。
今度は小夜が一輝に対し言及する。
「一輝君……」
「言うな、棋士になって名人を目指すのは当然だろう」
「でも名人って最短でも5年かかるんじゃなかったけ?」
「いやいや、心意気の問題だよ。もう俺は毎年絵馬に書くぜ!」
静かな闘志、激しい闘志と様々だが2人の戦いは新年早々に始まっているのである。
ここ鳩森神社は古くよりこの地に存在し、今は将棋ファンにとっては聖地であり、パワースポットでもあるのだ。
将棋連盟も年に1回祈願祭を行い、その後は指し初め式といって将棋会館の特別対局室に場所を移し、プロ棋士を相手に、参加したファンが1手づつ指していく形式なのだ。
その事について一輝と小夜が話している。
「明後日だよな、指し初め式って」
「まあ、今の私達じゃあ参加できないし、あまり気にしなくてもいいと思うわ」
小夜の言うように、指し初め式に参加できるのはプロの中でも選りすぐりの者だけなのだ。
いつかは自分達もと思いを馳せながらようやく2人は拝殿へとたどり着き、一輝が小夜に呼びかける。
「それじゃあ、お参りしよっか。俺が鈴を鳴らすから」
「じゃあお願いね」
小夜の言葉を聞き、2人同時に賽銭箱に小銭を投げ、一輝が鈴緒を鳴らし手を合わせお願いごとをする。
お願いごとを終え、拝殿に頭を下げると2人は拝殿をあとにした。
拝殿を離れて売り場を目にすると小夜からある提案がされた。
「そうだ、一輝君お守り買わない⁉それもあれを」
「そうだな、あれだよな」
2人はそう言って売り場に行くと巫女のアルバイトらしき女性に声をかけられる。
「ようこそおいでくださいました。何をお求めでしょうか?」
女性の言葉に一輝が返答をする。
「それじゃあ王手守りを2個下さい」
王手守りとは鳩森神社名物のお守りで主に勝負運に関するお守りである。やはり棋士である2人はあやかりたいものであるが、次の瞬間、小夜が言葉を放つ。
「ちょっと待って、一輝君いきなり2つ頼むってどういうこと⁉」
「どういうことって、俺が小夜ちゃんの分も出そうかなって思っただけだけど」
「いいの?」
「前に小夜ちゃんが言っただろ、プロになった瞬間に俺の方が格上だって、だからこれくらいしたほうがいいかなって」
一輝は自身が公式の立場上は小夜より格上になったこともあり、プロ棋士として対局料も入るようになる為、マナーとしてそうした方が良いと思っての行動であり、それを受け小夜が言葉を返す。
「いきなり生意気なことをするようになったわね。でもお言葉に甘えるわ」
小夜の言葉を聞き、一輝は女性に2つ分のお守り代を支払う。
「ありがとうございました」
女性の言葉を聞いて一輝たちは売り場をあとにし絵馬を目にする。
「絵馬書こうか」
「ああ」
そう言って2人は絵馬に自分の抱負を書く。
抱負を書き終えると小夜が一輝に提案をする。
「じゃあ、せーので見せよっか」
「おお」
「せーの」
そう言って互いに絵馬を見せ合い、小夜から読み上げ、続けて一輝も読み上げる。
「今年こそ女流タイトル獲得」
「名人になる」
まず小夜の抱負に対し一輝が言及する。
「タイトルかそういえば女流皇位戦にリーグ入りしたんだよね」
「そう、これを勝ち抜けば宮里さんとタイトル戦で戦える。私にとっては重要な対局になるわ」
言葉は少なげだが、小夜の闘志が一輝にも伝わってきている。
今度は小夜が一輝に対し言及する。
「一輝君……」
「言うな、棋士になって名人を目指すのは当然だろう」
「でも名人って最短でも5年かかるんじゃなかったけ?」
「いやいや、心意気の問題だよ。もう俺は毎年絵馬に書くぜ!」
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