2 / 160
プロ入り後秋から春
昇段祝い
しおりを挟む
プロの将棋棋士として四段昇段のインタビューを受けた長谷一輝は将棋会館をあとにし、人通りを避けてスマートフォンを取り出し、どこかへと電話をかけていた。
「もしもし師匠」
「おう一輝か、どうした?」
電話の相手は一輝の師匠である、諸見里武夫九段であり、一輝は師匠に自身の昇段の旨を伝えた。
「すでに知っているとは思いますが、四段昇段しました」
「なーにが、知ってるとは思いますだ、前の励会の時点で2位以上は確定していただろ。今日連敗したら2位ってだけの話だろ」
「ハハハ、でも同じく昇段を決めた黒木さんとの対局は鬼気迫るものがありましたよ」
「そりゃあ黒木君は今年がラストチャンス、16歳のお前とは思い入れが違うに決まっているだろ」
電話越しで諸見里が一輝に説教じみた発言をしていることに自ら気付いた諸見里は話題を切り替える。
「おっと、せっかく昇段を決めたのに説教はいかんな。一輝、今日何か用事はあるか?」
「いえ、今日はこのまま帰ろうかと思っていますが」
「それならわしの家に来い、お前の昇段祝いをしてやる」
「それじゃあ、1度家に連絡します」
そう言って一輝は1度電話を切り、自宅へと電話をかけなおす。
「もしもし母さん」
「あっ、一輝、どうしたの?」
「四段昇段決まったよ。俺プロになれるんだ」
「そうなの、おめでとう……良かったわね」
電話越しでも母のうれし泣きが伝わってきた一輝は礼の言葉を言いつつ、師匠からの誘いを伝える。
「ありがとう。そうだ、師匠から昇段祝いで家に来ないかって言われてるんだ」
「そうなの、せっかくのお誘いだし、いってらっしゃい。うちでのお祝いはまた今度しましょう」
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん、あ、お父さんには母さんから電話しとくね」
そう言って母は電話を切ると一輝は師匠の家を目指して電車で移動していった。
諸見里九段の家は一輝の家とも近く、その縁もあって弟子入りができたこともあり、一輝の奨励会入りもなったのだ。
諸見里の推薦がなければ奨励会入りがなかったのは事実ではあるが、一輝自身が幼き頃より才能の片りんを師匠に見せ、奨励会の入会試験に合格しそこからも昇級・昇段していき、最難関である三段リーグを突破し見事プロ入りを決めたのだ。
そんなことを考えながら一輝は師匠の家の前までたどり着き、インターホンを押した。
インターホンを押して出てきたのは女性であり一輝に話しかける。
「一輝君久しぶりね、主人から話は聞いているわ」
女性は諸見里の妻であり、一輝をそそくさと家に入るよう促す。どうやら昇段祝いの準備は整っているようだ。
「もしもし師匠」
「おう一輝か、どうした?」
電話の相手は一輝の師匠である、諸見里武夫九段であり、一輝は師匠に自身の昇段の旨を伝えた。
「すでに知っているとは思いますが、四段昇段しました」
「なーにが、知ってるとは思いますだ、前の励会の時点で2位以上は確定していただろ。今日連敗したら2位ってだけの話だろ」
「ハハハ、でも同じく昇段を決めた黒木さんとの対局は鬼気迫るものがありましたよ」
「そりゃあ黒木君は今年がラストチャンス、16歳のお前とは思い入れが違うに決まっているだろ」
電話越しで諸見里が一輝に説教じみた発言をしていることに自ら気付いた諸見里は話題を切り替える。
「おっと、せっかく昇段を決めたのに説教はいかんな。一輝、今日何か用事はあるか?」
「いえ、今日はこのまま帰ろうかと思っていますが」
「それならわしの家に来い、お前の昇段祝いをしてやる」
「それじゃあ、1度家に連絡します」
そう言って一輝は1度電話を切り、自宅へと電話をかけなおす。
「もしもし母さん」
「あっ、一輝、どうしたの?」
「四段昇段決まったよ。俺プロになれるんだ」
「そうなの、おめでとう……良かったわね」
電話越しでも母のうれし泣きが伝わってきた一輝は礼の言葉を言いつつ、師匠からの誘いを伝える。
「ありがとう。そうだ、師匠から昇段祝いで家に来ないかって言われてるんだ」
「そうなの、せっかくのお誘いだし、いってらっしゃい。うちでのお祝いはまた今度しましょう」
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん、あ、お父さんには母さんから電話しとくね」
そう言って母は電話を切ると一輝は師匠の家を目指して電車で移動していった。
諸見里九段の家は一輝の家とも近く、その縁もあって弟子入りができたこともあり、一輝の奨励会入りもなったのだ。
諸見里の推薦がなければ奨励会入りがなかったのは事実ではあるが、一輝自身が幼き頃より才能の片りんを師匠に見せ、奨励会の入会試験に合格しそこからも昇級・昇段していき、最難関である三段リーグを突破し見事プロ入りを決めたのだ。
そんなことを考えながら一輝は師匠の家の前までたどり着き、インターホンを押した。
インターホンを押して出てきたのは女性であり一輝に話しかける。
「一輝君久しぶりね、主人から話は聞いているわ」
女性は諸見里の妻であり、一輝をそそくさと家に入るよう促す。どうやら昇段祝いの準備は整っているようだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】二度目のお別れまであと・・・
衿乃 光希(恋愛小説大賞参加します)
ライト文芸
一年前の夏、大好きな姉が死んだ。溺れた私を助けて。後悔から、姉の代わりになろうと同じ看護科に入学した。
でも授業にはついていけない。そもそも看護には興味がない。
納骨をすると告げられ反対したその日、最愛の姉が幽霊になってあたしの前に現れた――。
仲良し姉妹の絆とお別れの物語
第7回ライト文芸大賞への投票ありがとうございました。71位で最終日を迎えられました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
今日も青空、イルカ日和
鏡野ゆう
ライト文芸
浜路るいは航空自衛隊第四航空団飛行群第11飛行隊、通称ブルーインパルスの整備小隊の整備員。そんな彼女が色々な意味で少しだけ気になっているのは着隊一年足らずのドルフィンライダー(予定)白勢一等空尉。そしてどうやら彼は彼女が整備している機体に乗ることになりそうで……? 空を泳ぐイルカ達と、ドルフィンライダーとドルフィンキーパーの恋の小話。
【本編】+【小話】+【小ネタ】
※第1回ライト文芸大賞で読者賞をいただきました。ありがとうございます。※
こちらには
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/999154031
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『ウィングマンのキルコール』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/972154025
饕餮さん作『私の彼は、空飛ぶイルカに乗っている』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/812151114
白い黒猫さん作『イルカフェ今日も営業中』
https://ncode.syosetu.com/n7277er/
に出てくる人物が少しだけ顔を出します。それぞれ許可をいただいています。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる