上 下
17 / 22

【第12話】

しおりを挟む
「お待たせしました。リラ様、こちらへどうぞ。」

なにやら変な道具を持って現れたパミヤ様は、祭壇の様なところに私を呼び寄せる。何されるのかな…?変なことでされそうで怖いんだけど。
手招きされるままにおずおずと祭壇らしきものの前に立った。

「これをもって、そこにひざまずいてください!」

いかにも高そうな謎の道具をもたされ、言われた通り膝をついてみる。

すると小さいパミヤ様と同じ目線になり、改めて見ると本当に綺麗な目に見とれてしまいそうになった。

「…では、始めますね。」

一瞬、パミヤ様の目に迷いがよぎった様に見えた。パミヤ様、一体何を考えているんだろう。今のはきっと私の気のせいだよね。それより御神託というのはどういう風に下されるんだろう。今はそっちの方が気になる。

目を閉じていて下さいと言われたから、素直に目を閉じて、ひざまずいたまま数秒待つ。

すると、パミヤ様が何か喋り出した。何を言っているのか聞き取ろうとしたけど、全く聞き取れなかった。というかあれは言葉なのか?何の意味もなさないただの声の羅列みたいだ。

パミヤ様の声がやむと同時に、どこからか柔らかい風が吹き込んできて、髪を揺らした。そして少し、体が軽くなったような気がしてくる。

反射的に目を開けそうになったけど、開けていいとは言われてなかったから閉じたまま我慢する。目を閉じていても、周りがさっきより明るくなったことがわかる。

すっと、冷たい手が私の頬を撫で、目を開けてもいいという声が聞こえゆっくりと目を開けた。

するとさっきまでいたはずの頼りない小さな少女、パミヤ様は居なくて、彼女と同じ服、同じ顔だけど大人びた無表情な女性が、私の頬に手をあてていた。

「おかえりなさい、リラ。」

「え…?」

思いもよらない言葉に動揺する私をよそに、目の前の美しい女性はつづける。

「忘れてしまったあなたに教えてあげましょう。あなたの中に眠っている力を。」

何か言葉を返したかったけど、あまりの神々しさに声がでない。

「伝えたいことは沢山ありますが、今はこれだけをお伝えします。貴方の魔力はとても強力で、操作が難しい。そんな貴方がその魔力を自由に使うために使うもの…」

心臓の鼓動が早まる。早く知りたいのに、勿体ぶるように次の言葉がとても遅い。


「それは……それは《歌》です。《歌》に思いを、声に魔力を込めて発することによって、貴方はその魔力を存分に使うことができる。」


「歌?!」


ちょっと待てぃ!ちょっと、ちょっと待てぃ!私、歌うの好きだよ?好きだけどでもけっして上手いわけじゃないんだけど?!

「そう。歌うことによって人を癒すことも、傷つけることも、貴方にはできます。神から送られた役職は、伝説の歌姫、そう呼ばれる役職です。」


「え、歌わないと魔法使えないの?」

そんなの恥ずかしすぎるんだけど!てか歌姫ってなに?!嫌だよ?!普通にちょっと魔力高めな剣士とかじゃダメ?!

「いいえ、そんなことはありません。ただ、歌うことによってより強い力で効果的に魔力を使えるという事です。」

だよね、朝も簡単な魔法使えたし。まさか歌以外に攻撃とかする方法がない訳なんてないよね。それは良かった…

「なるほど。…ところで私はあなたとどこかで会ったことがありましたっけ?」

はじめにおかえりなさい、と言われたことがまだ引っかかっている。少なくとも私の記憶の中にこの人は居ない。

「………さぁ、それはどうでしょう。」

それってやっぱり会ったことがあるってことでしょ…

「あなたはパミヤ様だよね?」

「そうとも言えますし、違うとも言えます。」

どういうことや。

「この器はパーミャト・メモリウム。中にいるのがパミヤだとは限りません。あっ、今はパミヤですけど。」

なるほど?どゆこと?

「この話はまた別の機会にしましょう。今は話す時期ではありません。皆様がお待ちです。戻りましょう。」

え、ちょっと待って!戻りましょうってどこに戻るの?!
慌てて振り返ると、そこにいるはずだったガクやショウ達が居なかった。周りを見渡してもここに居るのは私と…パミヤ様だけだった。

「ふふ、今ここは神の世界と人間の世界の中間なんですよ。大丈夫です、今すぐ戻りますので。」 

そう言ってパミヤ様はそっと私の瞼を撫でて閉じさせ、またさっきのようにへんなことを喋り出した。



数秒後、さっきとは逆に、少し周りが暗くなり、体が若干重たくなったような気がした。


ゆっくりと目を開けると、小さいパミヤ様が私の前で微笑んでいた。

「お疲れ様です。」


何が起こったのか理解できずしばらく動けなかった。

「どうだった?」

ガクの問いかけではっと我に返って振り返ると、そこにはちゃんとガク、ショウ、ミカ、レン、ロロ、アミ、ミナがいた。

「えっと……疲れた。え?あれ?今のが神託?」

そうですよ、とパミヤ様は晴れやかな笑顔で笑っている。

そっか。今のが神託だったのか…ん?じゃあパミヤ様が神?違うのか?あれ、わかんないもうやかんない!!
今は喋るのもだるいくらい、何故かとても疲れていた。そんな私の様子を見て、ミナがひとまず近くのカフェに入って一息つこうと提案してくれ、みんなその提案を受け入れた。

「今度は教えてね、パミヤ様。」

私のお願いに、パミヤ様ははいとでもいいえともつかない微妙な顔でにこっと笑ってかえしてきた。なんなんだろうなぁほんとに。

もやもやを抱えたままパミヤ様にお礼を言い、私達はフィレスピーロを後にする。アミだけ、パミヤ様と話があるらしくここに残った。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した俺が神様になるまで

HR
ファンタジー
ゲーム廃人の佐藤裕は強盗に銃で撃たれて、異世界に転生! ・・・の前に神様とあって 「すべての職業になったら神になれるよ。」 と言われた佐藤裕改め、テル=ハングルはアルファ王国を支えるハングル家に転生して神様になる っていう感じの作品です。 カクヨムと、小説家になろうでも連載しています。 面白いと思ったら ブックマーク、感想、レビュー、評価をお願いします。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

エンジェリカの王女

四季
ファンタジー
天界の王国・エンジェリカ。その王女であるアンナは王宮の外の世界に憧れていた。 ある日、護衛隊長エリアスに無理を言い街へ連れていってもらうが、それをきっかけに彼女の人生は動き出すのだった。 天使が暮らす天界、人間の暮らす地上界、悪魔の暮らす魔界ーー三つの世界を舞台に繰り広げられる物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※この作品は、2017年7月~10月に執筆したものを投稿しているものです。 ※この作品は「小説カキコ」にも掲載しています。 ※この作品は「小説になろう」にも掲載しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。

華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。 王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。 王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...