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【第11話】
しおりを挟むショウ達がかえってきて、私達は軽く昼食を済ませた。
ここからフィレスピーロまでは少し距離があるらしく、馬車で行くことになった。この世界では車がないから馬車を使うのが一般的らしい。それでも、汽車みたいなやつとか魔法で動く速い乗り物とかはあるんだって。まあ一番速いのは魔法陣を使って瞬間移動だわなぁ。
お昼ご飯を食べてる間に、ガクが馬車の準備をしていてくれた。
「おぉ~!本物の馬車だー!」
玄関から外に出ると、絵本に出てくるようなあの馬車が待ちかまえていた。
馬車の箱の部分、箱って言うのかなあれ、人が乗るところ!あそこは結構豪華な装飾がしてあって、特殊部隊が結構上の位なんだなぁってのがわかる。
豪華なんだけど、派手すぎないってのがいいよね。めっちゃ好き。
そしてこの箱は二頭の馬が引っ張るようだ。つやつやの綺麗な毛並みの(茶色い馬が、お行儀よく待っている。
異世界だからてっきり馬も馬じゃない変な動物だったりするのかと思ってたけど、すごく綺麗な馬って言うこと以外は普通の馬だからちょっとびっくりした。
「何してんだよ早く乗れ。」
「だって馬車が!!」
初めての馬車に見とれている所を、馬の調子を見ていたガクに急かされた。
「ふふ、馬車に乗るのは初めて?」
優しく微笑むミカが横に来ていた。
「乗るのも見るのも初めて!」
馬車は明らかに洋風なのに、ミカとレンはthe和服だからなんか変な感じがする。洋服着ないのかなぁ?
「窓側座ってもいーよ!」
「アミはリラの前に座るー!」
お菓子が入った袋を大事に抱えて、ロロとアミがものすごい速さで私達の横を通り過ぎ、ささっと馬車に乗った。
いつまでももたもたしてられないから、私もすぐ後に続く。
別に窓側じゃなくても良いけど、ロロが窓側を譲ってくれたのでおとなしくそこに座らせてもらうことにした。
「おぉ~意外と広いんだね。」
馬車の中は想像していたよりも快適だった。椅子がふっかふかで、車より全然のりごこちが良い。
外面だけでなく内側もちゃんとしてるんだなぁ。
私の前にはアミが、その横にロロ、レン。私の隣にミカ、その隣にミナという感じに全員腰を下ろす。
ショウとガクは運転るため中ではなく外側にいる。
馬車もこんなに豪華だし、それなりの地位のある集まりなら召使い的な人が1人くらいいてもおかしくないのに、それらしい人は1人もいない。 家事も運転も全部自分たちでやるらしい。
ショウが私達全員が座ったのを確認して、馬車が動き出した。馬の蹄が地面に当たる音がリズミカルに聞こえ、車輪がかたかたと音を立てて回っている。これぞ馬車!っていう感じに包まれて私のテンションはぐんぐん上がって行った。
窓には日除けのためか分厚目のカーテンがかかっていた。まだこの世界に来て庭以外の外を見たことがなくてとても気になったから、ミカの許可を得てカーテンを開けさせてもらった。
「ふぉ~!森だぁー!」
色んな緑の木々が沢山生えていて、朝見たへんな妖精みたいなやつがちらほらと居た。
「ここは街から少し外れた所にあるから、自然が豊かなんだ。」
街の中心から近くもなく、遠くもない所にあの屋敷は位置するらしい。言っていた通り森は直ぐに無くなり、少し開けたところで街が見えてきた。
わぁ…街…街もほんとにあれだ、ファンタジー!
外国のオシャレな街みたいな可愛い家や店が沢山並んでいて、なんと言うかほんとにそう、夢の世界みたい。街を歩いてる人も、色んな色の目や髪をしていたり、猫耳が生えてたり、犬耳が生えてたり、多種多様な人で賑やかだ。本当に異世界に来たんだなぁって改めて実感した。
フィレスピーロって大神殿っていってたから、そういうのってそれこそさっきの森みたいに神聖そうなとこにあると思ったんだけど、意外にもそれは街のど真ん中にあるんだって。
色んな珍しく人や建物とかを眺めていた数十分で目的地、フィレスピーロに到着した。どでかい変な建物の前で馬車が止まり、着いたよ、というレンの言葉を聞いて、馬車から降りた。ちょっと待ってて、とショウは近くにいた人に馬車を見ててもらうように頼みにいった。
「うっわぁ~でっかい。」
「ここが一番おっきいところだからね☆」
大きさで例えると、京都駅みたいな感じ。絶対一人で入ったら迷子になるやつやん。いかにも神聖そうな雰囲気で、入り口に続く道には一人も人が歩いていない。大きくて真っ白で静かなせいで、なんだか少し怖い感じもする。
ぼーっとその建物を眺めている間にショウが戻ってきたので、私達はさっそく中に入った。
中はとても冷んやりとしていて、そしてとても静かだった。私達の足音だけが聞こえる。
あかりが1つも付いていないけど、全体的に白い石でできているせいか、外から差し込む光でかなり明るい。
天井が高く、柱がたくさん伸びている。所々に何か意味がありそうな装飾が施されている。
結構奥まで歩いたところに、祭壇のようなものが見えてきた。そこに、一人ぽつんと小さな少女が立っていた。少女は私達に気づき微笑む。アミと同じ、綺麗な金髪で、目が透き通るような青。そして頭の周りにまるで天使の輪っかの代わりみたいなやつが浮いていた。服だって真っ白でふわっふわの布みたいなやつ。これは本当に天使なのか…?
先に歩いていたガクやショウ達が少女の前に着くと突然膝をついて深い礼をしだした。ロロでさえもしっかりと頭を下げている。突っ立ったままなのは私とアミだけだった。
え、え?これって私もこうするべきなの?
出遅れた感はんぱないのでとりあえずぺこっと頭だけ下げておいた。
そんな私に気づいていない風に、ショウは頭を下げたまま喋り出した。
「パミヤ様、お忙しい中突然訪問させて頂いて感謝申し上げます。この度は、異界の地よりやってきた少女に御神託を伺いたく参りました。」
「そんな風にかしこまらなくてもいいのですよ。お顔をどうかお立ちになってください!」
あわあわと、パミヤ呼ばれた少女は居心地が悪そうに言い、みんなはお礼を言って立ち上がった。
ふぅ、よかったよかった。私とアミだけが立ってるのもなんかあれだから助かった。
「リラ様…」
おっと?パミヤ様、私の名前をご存知でいらっしゃる。なんで?
「あのー?どこかでお会いしましたっけ?」
遠い昔を思い出してるような目をしているパミヤ様に問いかけると、はっと我に返ったパミヤ様、慌てて何かを誤魔化し始めた。
「あっ、い、いえ!初めましてです!私はパーミャト・メモリウムと申します。えっと、皆さんにはパミヤと呼ばれております。」
何を隠したんだろう?と思ってチラッとミカの方をみる。ミカも、ん?っていう顔をしていたからよく分かってないみたいだ。ショウとガクも微妙な顔をしているから、結局何もわからなかった。
「そんなに私の名前って、いろんな人に知れ渡ってるの?」
「いいえ!あ、いいえじゃない、はい!私や、お城に務めている偉い人方は皆さん知っています!」
この子大丈夫か…?偉い人は知っているってことはこの子も偉い人なんだろうな。
パミヤ様は、私をじっと眺めながら何かを考えているようだった。こんな可愛い子にそんなに見られると照れるんですけど…。
「パミヤ様、ご神託の方をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
中々始まりそうにないのをみて、ショウが促してくれた。またもやはっとしたパミヤ様は今からやります!と、急いでどこかへ行ってしまった。
残された私達はそれぞれ声を発することも無く、静かにぼーっと待っていた。
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