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【第6話】お菓子の時間
しおりを挟む少し落ち着きを取り戻して、言われるがまま席に着いた。食堂もやはりかなりの広さがある。真ん中に大きなテーブルがあって、そこには綺麗な花が飾られていた。
どこのお屋敷だよここは…。まるで急にお金持ちに引き取られた子供みたいな気分。
感心している私を置いて、ガク、レン、ミカ、ロロははお茶の準備をしにキッチンみたいな所に行ってしまった。食堂に残ったのは私と、ショウ、ミナ、アミの4人だった。
ただ座ってるだけでは申し訳ないし…。何かないかなと考えながらショウに聞いてみた。でもショウは優しく笑って大丈夫だと言った。
「こういうのは当番制でやってるの。」
となりに座ったミナも心配するなと言った顔でそう言った。そう言われると、黙って座っておくしかないなぁ…
「アミはね、いっつも飾り付け当番なの!」
私の尻尾で遊んでいるアミが自慢げにそう言った。それに私は凄いね、お花も綺麗に飾られてるねと、褒めながらアミの頭をなでてやった。するとアミは嬉しそうに笑い、こっちまで嬉しい気分になってしまう。
それにしても、何でこんな格好になっちゃったんだろう。耳が…猫耳?猫じゃないのかな、何耳かわからないけどケモ耳になってしまったし…
「尻尾だって生えてきたのいつのまに…」
はぁ…何だかもう、驚くことが多すぎて何があっても驚けない気がするや。尻尾は制服のスカートを貫通している。いやこれおかしいだろぉ…普通貫通しないだろぉ…なんて都合のいい世界なんだ。
待っている間に、ショウとミナがなぜ私の見た目が突然変わってしまったのか教えてくれた。私は、違う世界に来たから自然と変わったのかと思ってたけどどうやはそれは違うらしい。
これは私のもともとの姿で、生まれた時から本当はこんな姿だったけど、それをなんらかの事情があって容姿を変える術をかけられ、そのまま地球に移って暮らしていた。しかし、突然体内の魔力が吸い取られ、魔力の変動が起こったから、その術かなにかが解けてしまったのだろう。とのことだった。ちなみに、ショウ達が初めて私を見た時にはもうすでにこの姿だったらしい。
そんな話が終わったちょうどいい時に、美味しそうなケーキを載せているお皿を、ロロが運んできた。
「見て!今日はケーキだって☆」
「おおおぉ!美味しそう!」
「やったー!早くたべる!」
昼ごはんを食べてないせいか、ただでさえ美味しそうなケーキがとても輝いてみえて興奮してしまった。
ロロに続いてガクとレン、ミカもそれぞれケーキやら紅茶やらを運んでテーブルに並べていく。途中でロロがクッキーも出そうと言っていたけれど、それにミカは、今はケーキがあるからクッキーはまた今度にしようと、ロロに言い聞かせていた。
テーブルの上に並べられた美味しそうなものたちの香りが私の鼻をくすぐる。
唾液がこぼれそうなのを必死に堪えて、みんなが席に着くのを待つ。
アミもミナもショウも、行儀よく待っていた。
「ありがとうみんな。」
「ありがとう、美味しそうね。」
「上手にできました!ありがとー!」
当番ではなかったショウたちが、当番の人たちに感謝の気持ちを述べるのにならって、私も元気よくありがとうといった。きちんと挨拶ができるいい関係なんだね。
「それじゃあいただこう。」
ショウの一言でみんな口々にいただきます、と言って食べだした。
見た目も凄く綺麗な白いケーキ、上にはベリー類がのっかっている。見た目からして、これはレアチーズケーキだな!口に入れたときに広がる味を想像しながらケーキにゆっくりとフォークを差し込み、口に運ぶ。
「うーーーーん!おいしーい!」
こんな美味しいケーキ、食べたことないかも!今日この身に起こった事なんて全部忘れられそう。
「うん、美味しいね。このケーキはどこで?」
ショウがさわやかな笑顔でレンに聞いた。
「ご褒美だよ。上に報告しにいったときに、大佐がこれを食べて疲れを癒してくれって頂いたんだ。」
「ほぉー、これが褒美になのか。」
レンの言葉を聞いたガクは、こんなに美味しいケーキを食べているのに、なんだか気にくわないようだ。こんな美味しいものにどんな文句があるって言うんだろう。
「大佐がこんな風に気を利かせてくれなかったら、あんたにこんなものを食べる機会なんてなかったでしょうね。」
ミナが鋭い言葉を放ち、ガクはああそうですね、と静かに食べることに集中しだした。
お腹空いていたのもあって、一瞬でケーキを食べ終わってしまった私は次に紅茶の味を楽しむことにした。ケーキが美味しすぎて、紅茶の存在なんて忘れてたんだけどね。
「この紅茶、なんの味?凄く美味しいけど飲んだことない味だ。」
飲んでびっくり!この紅茶は甘い香りに、少し酸っぱい味が混ざってるような不思議な味がするけど、ケーキの味にあっていてとても美味しい。この世界特有の紅茶なのかな?
「これは2つの種類の茶葉が混ざっているの。私の祖国のものと、ここのものでガクがブレンドしてくれたの。」
「え?!ガクが?!」
ミカが言ったことが予想外すぎて、思わず斜め前に座っているガクの顔を見てしまった。
そんなガクは私の事なんて見向きもしないで優雅に紅茶すすっている。こいつめ!憎たらしいな!私の反応にショウが笑って、びっくりするよねと言った。
「こう見えてガクは女子力は高いんだよ。」
嬉しそうにショウはそう付け足した。
「ガクはお茶博士なの!」
アミも口の周りにケーキのカスをつけたまま、満面のの笑みをうかべて言った。
「うっせー。こんなこと誰でもできるわ。」
褒められて恥ずかしくなったのか、ガクは急いで残っていたケーキを口に押し込んでいた。照れ屋さんなのか。なかなか可愛いやつだな。
なんだかすっかり私はこの人達の中に馴染んでしまったようだ。正直一度に7人もの人を覚えられないと思っていたけど、以外とすんなり覚えてしまった。
犬耳で語尾に星マークがついてそうな喋り方をする男子がロロ、一番幼くて金髪の可愛らしい子がアミ。クールなお姉さんがミナで、優しい和装の子がミカ、その双子の弟でのんびりしてそうなのがレン。リーダーシップを発揮している黒髪の男子がショウ!!そして、口が悪くてすぐキレるけど、意外と女子力がある銀髪の男子はガク。
私、もしかして記憶力いいのかな?
「ねぇ、これからって、どうなるの?」
ずっと気になっていたことを、みんなが食べ終わった隙を見て聞いてみた。今まで魔力なんてなかったし(なかったと言うわけでは無いらしいけど)、無いところに住んでいたけど、魔力を抑える道具も無くなっちゃった訳だし。ショウは保護するっていってたけど…
「リラには特殊部隊の仲間になってもらうことになりそうだ。」
私が特殊部隊の仲間に…?ミナの言葉を頭の中で復唱する。
「え?なんで?」
仲間になる、と言う言葉を理解するのにかなり時間がかかってしまった。特殊部隊はモンスターを倒したりするって話だったけど、私はそんな、魔法とか使えないし。いてもお荷物になることは目に見えているんですが…。
「俺は反対したんだけどな。」
アミがお前を仲間にするって言うからにはしょうがない、と本当にしょうがないからって言う顔でガクは言った。
え、アミちゃんの発言力って大きいの?こんなにちっちゃいのに。
「これ程の魔力を抑える道具をもう一度作ることはとても難しいんだ。作ろうと思えば作れるだろうけど…かなり時間がかかるね。」
なるほど…。レンの話によると、膨大な魔力を保有していて、しかもその使い方も分からずふらふらと生活していると、今戦争中のこっちの世界の国の人がやってきて、その魔力を利用しようと考える輩がまた出てくるかもしれないため、特殊部隊に入ってみんなに守られながら私が戦えるようになるとどっちにしてもいいかららしい、
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よーし!魔法をいっぱい使えるようになるぞ!と、やる気に満ちた私の視界にはは、呆れ顔で、別にお前の力なんて必要としてないんですけど、と言っているガクなんて映っていなかった。
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