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嬉しい転生【彩音の場合】
19.花火のあと
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「ん…」
「彩音ちゃん大丈夫?」
「る、い先輩…」
「もう9時半だから…、残念だけど、そろそろ送っていくよ…?」
ちゅ、ちゅと頬にキスを落としながら、ルイ先輩はそう言った。ぴったりとくっついた素肌の温度が心地よくて、ここから離れたくない。
私は改めてぎゅっとルイ先輩に身体を寄せた。ルイ先輩は微笑んで、腕枕をしてくれた。ふふ、嬉しい。胸の奥から、くつくつとお湯が沸きだすように、どんどんと次から次へと暖かい想いが湧いてくる。先輩の身体にぎゅっとしがみつくと、ルイ先輩の頬にキスをした。
「ん…彩音ちゃん…?」
「ルイ先輩大好き…」
「俺もだよ…。もう不安になんてさせないから。気になることがあったら何でも言って、ね?」
そういって優しくまた唇を合わせる。あぁ…!!幸せすぎる…!!頭がふわふわとお花畑にいるみたい…あれ、でも何か忘れていることが…。あ、
「あの、ルイ先輩?」
「ん?」
「舞宮さんから、何かプレゼントもらったり…、好きなものとか、あの好きな色とか曲とか聞かれませんでした…?」
「え、あぁ…、そういえば…俺」
「――ッ!やっぱりいいです!」
私はルイ先輩の口元を咄嗟に抑えた。
「なんでもないです!信じます!私、ルイ先輩好きですから!!舞宮さんになんか言ってても関係ないです!これからはルイ先輩のことは何でも、私に教えてください!」
「彩音ちゃん…」
私の手のひらに口づけながら、ルイ先輩が囁いた。うっくすぐったい。思わず腰が逃げそうになると、それを察したルイ先輩の手にぐいっと抱き寄せられた。
またちゅ、ちゅと唇を合わせながら、見つめ合いながらお話をする。う…ルイ先輩の過剰摂取で気絶しそう…!
「私、も、ルイ先輩のことずっと好きだったんで…、追いかけてたんで、実はもう色々知ってるんですよ?
ルイ先輩が赤が好きなことも、売店に売ってるマカダミアナッツのクッキーが好きなことも」
「へぇ?そうだったんだ?」
「…違います?」
うーん、とルイ先輩は眉を下げた。
「俺はきっと君がくれるものならなんだって好きになると思うよ?君を形作るものは全て愛しいよ。ほら…この赤い髪とか大好きだなぁ」
「う…もうっ…ルイ先輩ったら…」
私の髪を一筋すくい上げると、ちゅっと口づけを落とす。その後何かに気が付いたかのように、瞳をあげると、ぶわっと頬が赤く染まった。
「…もしかして、今日の君の赤いドレスって…まさかそれで選んでくれたの…?え…ちょっと本当に…?やばい…すっごい嬉しい…!」
「先輩…!?」
ぎゅうぎゅうと骨がきしむんじゃないかっていうくらい強く抱きしめられた。息を詰めた私に気が付いて「あ、ごめん!」とルイ先輩は力を緩めてくれた。はぁ…先輩の供給過多…。
「ねぇ…俺にも君の好きなもの教えて?もっと君のこと知りたいんだ…」
私の耳元で熱を含んだ声で、そうルイ先輩が囁いた。その刺激にぴくぴくと反応しながら、私は、ふと考え込んだ。
「私ですか…?うーん、なんだろう…?」
しばし考え込む。なんだか仕事が忙しかったのもあって、漫然と生きてしまっていて、考えてみると何かを好きだー!って思うことって少なかった。
食べ物とかにしても、周囲の友人に「綾ってよくそれ食べてるよね」って言われて初めて、私これ好きだったのかもって自覚するくらいだ。
ちなみにその時食べていたのは、コンビニで買った杏仁豆腐。言われてみれば、見つければいつもカゴに入れてたかもっていうくらい、自分の感覚に鈍感になっていた。
「うーーん、これっていうものってすぐ出てこないものですね…。うーん…。あ、でも私の好きなものはルイ先輩ですよ?それはもう、ずっと前からそうなんです!」
そうそう、たくさんゲームはしたけど、私の推しはルイ先輩以上の人はいなかった。ルイ先輩は私のレジェンドなのだ。
ゲームの中でルイ先輩が、こどもの頃蜜を吸ったなぁって言ってたツツジの花。視界に入っても見過ごすだけだった紫は、それを知った日から、咲くと嬉しくなる特別なものに変わった。
「だから、私はルイ先輩の好きなものが、好きなんです。
ルイ先輩の瞳の色のものを身に着けたいし、ルイ先輩が好きだと思うと、マカダミアナッツのクッキーもつい買っちゃって」
あのルイ先輩のストラップにしても、推しを想起させるものはなんでも手に入れちゃうよねー、うんうん。
以前ネットで、推しが乗ってたからって同じ車を買ってる人とか、推しのルーツを探る旅に行く人もいたなぁ。推しの好物を買うのも基本だよね。誕生日にケーキ買って一緒に食べるのも当たり前だし。
私は得心がいったとばかりに、うんうんと頷いて見せた。
「…あのねぇ」
大きなため息と共に放たれた低い響きの声音に、身体の芯がビクッと痺れた。ん?このトーンの先輩の声は聞き覚えがあるような…?
「それって…わざと言ってる…?…今日は、帰りたくないってことかな…?」
「え…?」
私の太ももにさっきまではなかった、熱をもった硬い塊が当たっているんですけど…?
ルイ先輩はおもむろに上半身を起き上がらせると、ひょいっとベッドの近くに落ちたデニムを引っ張り、ポケットのスマホを出して何かを操作し始めた。
「??」
呆気にとられる私をよそに、何か入力を終えると、ぽいっとまたベッドの下に投げた。
「奏くんにはメッセージしといたから。今日お姉ちゃんは帰れないから、よろしくねって」
口元に黒い笑みを浮かべて、ルイ先輩がそう言った。そしてまた私に覆いかぶさってくる。
(え、ルイ先輩いつの間に奏くんと番号交換を…、そして黒い笑みも雄って感じでカッコいい…、って、ん?今私帰れないって…??)
「ねぇ…さっきみたいに瑠依って呼んで…?」
「あ…」
耳元で囁かれると、キュンっと身体の奥が反応した。
「ねぇ、君の好きな俺のこと、もっと感じて…ね?彩音…」
「ん…ルイせんぱ…っ」
「先輩はいらないから」
「あ…!」
そうして私は、そのままルイ先輩の熱に流されて、長い長い一夜を過ごしたのだった。
先輩の熱にうかされながら…いつまで彩音でいられるか分からないのに、こんなに、こんなに幸せで忘れたくないことばっかりでどうしよう。
今日の二人で見た花火を、大好きな人に好きって言ってもらえた今日のことを、ずっと、死ぬまで忘れない、そう思った。
「彩音ちゃん大丈夫?」
「る、い先輩…」
「もう9時半だから…、残念だけど、そろそろ送っていくよ…?」
ちゅ、ちゅと頬にキスを落としながら、ルイ先輩はそう言った。ぴったりとくっついた素肌の温度が心地よくて、ここから離れたくない。
私は改めてぎゅっとルイ先輩に身体を寄せた。ルイ先輩は微笑んで、腕枕をしてくれた。ふふ、嬉しい。胸の奥から、くつくつとお湯が沸きだすように、どんどんと次から次へと暖かい想いが湧いてくる。先輩の身体にぎゅっとしがみつくと、ルイ先輩の頬にキスをした。
「ん…彩音ちゃん…?」
「ルイ先輩大好き…」
「俺もだよ…。もう不安になんてさせないから。気になることがあったら何でも言って、ね?」
そういって優しくまた唇を合わせる。あぁ…!!幸せすぎる…!!頭がふわふわとお花畑にいるみたい…あれ、でも何か忘れていることが…。あ、
「あの、ルイ先輩?」
「ん?」
「舞宮さんから、何かプレゼントもらったり…、好きなものとか、あの好きな色とか曲とか聞かれませんでした…?」
「え、あぁ…、そういえば…俺」
「――ッ!やっぱりいいです!」
私はルイ先輩の口元を咄嗟に抑えた。
「なんでもないです!信じます!私、ルイ先輩好きですから!!舞宮さんになんか言ってても関係ないです!これからはルイ先輩のことは何でも、私に教えてください!」
「彩音ちゃん…」
私の手のひらに口づけながら、ルイ先輩が囁いた。うっくすぐったい。思わず腰が逃げそうになると、それを察したルイ先輩の手にぐいっと抱き寄せられた。
またちゅ、ちゅと唇を合わせながら、見つめ合いながらお話をする。う…ルイ先輩の過剰摂取で気絶しそう…!
「私、も、ルイ先輩のことずっと好きだったんで…、追いかけてたんで、実はもう色々知ってるんですよ?
ルイ先輩が赤が好きなことも、売店に売ってるマカダミアナッツのクッキーが好きなことも」
「へぇ?そうだったんだ?」
「…違います?」
うーん、とルイ先輩は眉を下げた。
「俺はきっと君がくれるものならなんだって好きになると思うよ?君を形作るものは全て愛しいよ。ほら…この赤い髪とか大好きだなぁ」
「う…もうっ…ルイ先輩ったら…」
私の髪を一筋すくい上げると、ちゅっと口づけを落とす。その後何かに気が付いたかのように、瞳をあげると、ぶわっと頬が赤く染まった。
「…もしかして、今日の君の赤いドレスって…まさかそれで選んでくれたの…?え…ちょっと本当に…?やばい…すっごい嬉しい…!」
「先輩…!?」
ぎゅうぎゅうと骨がきしむんじゃないかっていうくらい強く抱きしめられた。息を詰めた私に気が付いて「あ、ごめん!」とルイ先輩は力を緩めてくれた。はぁ…先輩の供給過多…。
「ねぇ…俺にも君の好きなもの教えて?もっと君のこと知りたいんだ…」
私の耳元で熱を含んだ声で、そうルイ先輩が囁いた。その刺激にぴくぴくと反応しながら、私は、ふと考え込んだ。
「私ですか…?うーん、なんだろう…?」
しばし考え込む。なんだか仕事が忙しかったのもあって、漫然と生きてしまっていて、考えてみると何かを好きだー!って思うことって少なかった。
食べ物とかにしても、周囲の友人に「綾ってよくそれ食べてるよね」って言われて初めて、私これ好きだったのかもって自覚するくらいだ。
ちなみにその時食べていたのは、コンビニで買った杏仁豆腐。言われてみれば、見つければいつもカゴに入れてたかもっていうくらい、自分の感覚に鈍感になっていた。
「うーーん、これっていうものってすぐ出てこないものですね…。うーん…。あ、でも私の好きなものはルイ先輩ですよ?それはもう、ずっと前からそうなんです!」
そうそう、たくさんゲームはしたけど、私の推しはルイ先輩以上の人はいなかった。ルイ先輩は私のレジェンドなのだ。
ゲームの中でルイ先輩が、こどもの頃蜜を吸ったなぁって言ってたツツジの花。視界に入っても見過ごすだけだった紫は、それを知った日から、咲くと嬉しくなる特別なものに変わった。
「だから、私はルイ先輩の好きなものが、好きなんです。
ルイ先輩の瞳の色のものを身に着けたいし、ルイ先輩が好きだと思うと、マカダミアナッツのクッキーもつい買っちゃって」
あのルイ先輩のストラップにしても、推しを想起させるものはなんでも手に入れちゃうよねー、うんうん。
以前ネットで、推しが乗ってたからって同じ車を買ってる人とか、推しのルーツを探る旅に行く人もいたなぁ。推しの好物を買うのも基本だよね。誕生日にケーキ買って一緒に食べるのも当たり前だし。
私は得心がいったとばかりに、うんうんと頷いて見せた。
「…あのねぇ」
大きなため息と共に放たれた低い響きの声音に、身体の芯がビクッと痺れた。ん?このトーンの先輩の声は聞き覚えがあるような…?
「それって…わざと言ってる…?…今日は、帰りたくないってことかな…?」
「え…?」
私の太ももにさっきまではなかった、熱をもった硬い塊が当たっているんですけど…?
ルイ先輩はおもむろに上半身を起き上がらせると、ひょいっとベッドの近くに落ちたデニムを引っ張り、ポケットのスマホを出して何かを操作し始めた。
「??」
呆気にとられる私をよそに、何か入力を終えると、ぽいっとまたベッドの下に投げた。
「奏くんにはメッセージしといたから。今日お姉ちゃんは帰れないから、よろしくねって」
口元に黒い笑みを浮かべて、ルイ先輩がそう言った。そしてまた私に覆いかぶさってくる。
(え、ルイ先輩いつの間に奏くんと番号交換を…、そして黒い笑みも雄って感じでカッコいい…、って、ん?今私帰れないって…??)
「ねぇ…さっきみたいに瑠依って呼んで…?」
「あ…」
耳元で囁かれると、キュンっと身体の奥が反応した。
「ねぇ、君の好きな俺のこと、もっと感じて…ね?彩音…」
「ん…ルイせんぱ…っ」
「先輩はいらないから」
「あ…!」
そうして私は、そのままルイ先輩の熱に流されて、長い長い一夜を過ごしたのだった。
先輩の熱にうかされながら…いつまで彩音でいられるか分からないのに、こんなに、こんなに幸せで忘れたくないことばっかりでどうしよう。
今日の二人で見た花火を、大好きな人に好きって言ってもらえた今日のことを、ずっと、死ぬまで忘れない、そう思った。
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