一度でいいから、抱いてください!

瑞月

文字の大きさ
上 下
9 / 64
嬉しい転生【彩音の場合】

9.夢なら覚めないで 4

しおりを挟む
「あれ…?」

 バスタオルだけの姿で戻ってきた神崎さんの姿を見た時から記憶がない。
 気がつけば俺は頭からザーザーと水のシャワーを浴びていた。

「やば…」

 さすがにシャワーの水をお湯に切り替える。ここで、神崎さんが身体を洗ったのか…洗ったのか…?裸で…!?

「……ッ!!」

 さっきの神崎さんの姿がフラッシュバックして、思わずその場に膝をついた。
 もう、俺自身はギンギンに張り詰めて痛いくらいだった。

「城野院…」

 前に城野院から、何かあったときの為にコンドームは枕元に忍ばせておくんだよ、って言われたんだっけ…。
 もらったそれで、何度かつける練習はしてみた。そうだ、そしてベッドのヘッドボードの引き出しに入れてあるはず…。
 なんかそれ以外にも、「知らないといざという時に困るんだよ?特に君たちは音楽しかしてきていないだろうから」と言って卑猥な話をしてくる城野院に、俺とレオはギャーギャー言いながら聞いてたっけ…。

『いい?一番大切なのは余裕だよ?切羽つまって余裕もなくガッツく様子なんて、百年の恋も覚めるというものだよ』

「ガッツく…覚める…」

 とりあえず収まりのつかない自分自身を処理することにした。

 実に呆気なく、吐き出した白濁をシャワーで流して、それでも収まらないものをなんとか収めて、風呂を上がった。


「俺は城野院だ…そうだ俺は城野院…余裕…俺はガッツかない…」

 城野院くらいのレベルなら、上半身は裸で部屋に出ていくだろう、きっとそうだ。

 ふふふ、君は本当可愛いねぇ、うん、きっとそんな感じだ。うん、クールにいこう。
 告白してくれた神崎さんを幻滅させたくない。
 俺が年上だし、余裕だ。ここは余裕だ。


 ◇◇◇◇◇◇


「あのねぇ…」

 なんてことだろう…。水色…。
 色の白い、お尻…。スラリと伸びる太もも。なんだ、ここは?天国か?
 明るい陽の光に照らされて、一層その白さが際立ち、輝かんばかりだ。

「いくらなんでも、積極的すぎない…?その格好」

 なんか余裕とかガッツきとか、何かが天元突破した。そこに残るのは無、だ。
 あまりの衝撃に立ってられない…、俺は思わず引き戸にもたれ掛かった。

「え、!や、これはっ!違うんです!!」

 真っ赤になった彼女が慌てると、今度は彼女の形のいい膨らみが露になった。

「!!!!!」

「きゃああ!すみません!…こ、これも違うんです…!」

「はぁ…もう、分かったよ」

 もう、無理だ。理性も余裕も無理だ。キスをするのは初めてだった。
 そこからはもう本能に従って、彼女の唇を貪った。

 柔らかい彼女の唇は、甘く蕩けるようだった。彼女の唇の感触だけで、身体の芯に火がつくのを感じる。

「ん…」
 彼女がその腕を俺の首にまわし抱きついてくると、彼女の胸がそしてその突起が、俺の素肌に触れるのを感じた。

 …信じられないくらい、柔らかい感触。

 彼女の素肌はどこもかしこも真っ白ですごく華奢だった。腕なんて細すぎて折れちゃいそうだ。

 彼女の全てが甘くて、愛しくて、熱くて、天にも昇る気持ちって、こういうことなんだな、って俺は知ったーー…。



 ◇◇◇◇◇◇


「ねぇ…彩音ちゃん…、一度でいいからって君は言ったけど…。俺、やだよ。あんな風に言われて嬉しくて先にこんな風にしちゃったから説得力ないけど…。俺と付き合ってほしい」

 やっと、言えた。
 彼女を腕枕して、おでこをくっ付けて、軽いキスを交わしながら、話す。なんて最高なんだ…。

 彼女はなんだか不思議そうな顔をしてる。

「どうしたの?」
「いや…あの、こんな素敵なこと夢なのに、夢に決まってるのに、覚めないなぁて思って…」
「……!!もう、君って子は…!」

 愛しい思いが止まらない、いくらでも溢れてくる。

「…ねぇ、ピアノ弾かない?実はうちにもピアノがあるんだ」
「え!?いいんですか?」

 パァッと君の表情が輝く。あぁ、なんて幸せなんだろう。

 これからは、音楽と君のために生きるよ。今日のこの日を絶対に忘れない、忘れられるはずがない。
 きっと君が傍にいてくれたら、なんでも出来ると思うんだ。
 これからも、ずっと、ずっと一緒にいたい。

 勇気を出してくれて、夢みたいな幸せを俺にくれて、ありがとう。

 (あぁ、こんなに素晴らしい気持ちになるなんて…、これが夢なら絶対に覚めないでくれ)

 微笑む君の顔を眺めながら、俺は天に祈った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...