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【最終章】背中とお腹
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しおりを挟む最初に聞いたタケシの印象は、6年間もユリアの為にオリジナルの物語をプレゼントしていた事。
それとは別にケータイ小説で賞まで受賞していたから文系かと思っていた。
だがコンピューターが得意で、エンジニアとしての技術力があり、コンピュータープログラミングを活かしたユリアの好きな物作りをする理系の側面を併せ持つ。
他の勉強もできる。オールマイティーだ。
タケシとユリアは恋人としての浮ついた気持ちで進路を決めず、高校は別々。
タケシはプログラミング技術を学ぶ為、工業系の高校を卒業すると同じくエンジニア育成の専門学校を出て、実践を踏まえたソフトウェア会社に入り2年間の下積みとともに、かなりの貯金をし、俺に言っていた会社を立ち上げた。
ユリアもタケシの夢と一致するため計画は二人三脚。
ユリアの方は高校を卒業すると経営学を学ぶ短大に入り、経営学を専攻し卒業。
経営コンサルタントの会社にて実践を学び同時に貯金が貯まると辞めてタケシの会社の代表取締役社長となる。
まったく!
俺が暴力団からのトンズラだのホームレスだの詐欺師だのと悪さばかりしていた青春時代とは真逆だ。
当時真剣に戸籍まで別の人生に生まれ変わろうとしていたのを踏みとどまって良かったぜ!
無学でガサツな俺からこんなにも優秀な娘が育つとはな! 女社長だぞ!
人生ってもんは歩んでみなきゃ道が出来ない。
2つと同じ人生はねェ。
◆
ああ……憂鬱(ゆううつ)だ。
理由は今日ユリアの結婚式だからだ。
ブルーカラーの仕事しか経験のない俺は成人式も大阪にトンズラ中で呼ばれず、スーツすら1度も着たことがない。
その俺が今モーニングを着ている。
PM4時までの正装はタキシードじゃなくてモーニングなんだってよ。
最初トチって洋服屋で採寸されて体型ピッタリの喪服をオーダーしちゃったじゃねェか。
ああ……ユリアが今日、新しい人生へと旅立つ。
幼く貧しかった頃のユリアのテルテル坊主姿が目に焼き付いて涙を誘う。
いつも自分の事より人の為に生きて来たユリア。
真冬に灯油すら買えなくて 摩ってあげた小さな手。
高熱を出した赤ちゃんの頃に2人で歌ったハトぽっぽ。
最後の挨拶なんか要らねェよ!
互いの気持ちはその心にあるだろ!
【親族控室】
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