不老不死カクテル47

0013 熊本 タクマ

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んー。毒を薬に変えるのは自分次第。


空気中に存在する二酸化炭素。


我々人間は呼吸をせねば生きられないが、この二酸化炭素の濃度が濃くなると、とたんに牙を剥（む）く。


大気中にわずか0.04%しか存在しない二酸化炭素だが、この濃度なら生存に全く支障はなく適正量。ん。


だが、この濃度が20%に達すると人間は数秒で死ぬ。毒だ。ん。


我々人間は、毒を吸い、生きている。


ものには全て幅がある。


二酸化炭素量も、人の寿命も幅。


幅の範囲内で人は微笑み、苦しみ、もがき、悲しみ、歓喜する。ん。


過ぎたるは猶及ばざるが如し。


人間は、どれだけ長く生きたかではなく、どう生きたかが重要だ。ん。


誰しも百歳を超えて長寿なったとしても、後半の50年を寝たきりで過ごしたくはないだろう。


介護する家族の揺れる心。


いっそ殺してしまいたくなる衝動も、ある意味否めない。


丁度いいってのは難しいのだ。運もある。ん。


◆


んー、たしかカクテルを知ったのは、オレが造った人工知能10号をインターネットに放った時。


レア情報収集専門AI 10号の初運用開始直後。


世界193の国と地域に点在するサーバーを無秩序に経由させたステルスAI、10号。


混沌とした揺らぎを10号は察知しハッキングに成功したのは、鉄壁の防壁を誇る財善グループのメインサーバー。


ん！？


極めて重要なデータと言うものは、ネットの物理接触からは隔離（非接続）して守るのが常。


10号は、守るフリをしたファイアーウォールを突破してしまった。


オレはカクテルという人類最大の発明を知ってしまったのだ。


ん！


これが今から十数年前の出来事。


無限とも言えるサーバーのルートを経由した10号からオレ個人を特定する術（すべ）は皆無。


ところが知ってしまったオレは、その好奇心に負けた。


不老不死カクテル。


秘密に迫る興味への渇望（かつぼう）


それはもう、堪（こら）えきれなかった！


好奇心の塊が『幅』を越えた。


やってしまったのだ。


『同意』を。


ん。


カクテルは、『毒』か？  『薬』か？



IQ200のオレは財善グループにハメられた。



同意は、個人の特定を意味した。



『カチーーカチカチ』