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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》

32《シルマ》

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魔物の緊急討伐依頼を達成した俺達。

家に帰ると、出迎えてくれるのは当然母である。

むぅ~~にゅぅ~……最っ高、生きててよかったわ。

やっぱこれだと思うわ、この包み込むような胸を惜しげも無く使い抱きしめてくれる。
赤ちゃんとして転生したんだ、このぐらいないとやってられないからな。
だからさ

「むぅ」その汚物を見るような目で俺を見るのはやめていただきたい。
流石のねこのこも母のする事には口を出さない。出さないが……

「貸せ」「あら? ねこのこちゃんも寂しかったの?」

適当にコクコクと頷くねこのこ。

えっ、やだ、やめて……「かっかあさんがいい!!」

「こらこら、ねこのこちゃんだって寂しい思いしてたのよ? 迎えにも来てくれたんでしょ?」
母さん、あんた美人だし包容力あるし女として最高だと思うわ……けどな、ほんと……人を見る目だけ養った方がいいと思う。

そんな俺の思いも虚しく、ひょいっと無慈悲に渡される俺、迎え入れるのはねこのこ。

「……ちち」
この抱っこされ至近距離で見るねこのこ、これだけならやっぱ可愛いんだよな。

でも……「いでで……いでででで!!! いってーーーーよ!!!! やっ優しく抱いてくれぇーー!!!」
この間、ねこのこは俺を普通に抱けたことがある……つまり、これはわざとだ。
わざわざ何も無い頑強な胸にぐぐぐぐっと強く押し付けてくるあたり、まじで凶悪きまわりない。

「ふふ、ススムったら、大きな声出してはしゃいじゃって」
耳鼻科も行った方がいいと思う。

ところで俺は思ってたんだ。
こいつらなんで着いてきたんだ?
魔物討伐を終え、この2人の故郷であるド田舎村を通ったってのに、何故かここまでついてきて、今は現状においてけぼりを食らったのか黙って立ちつくしている奴ら。

シルマとりおんだな。

シルマってのはおじいさんのこと、なんか自己紹介が遅れたとかで名前を教えてきた。
……今日でどーせ合わなくなるのにな~なんて思ってたが……?

そのシルマ、ようやく意を決したのか、もがく俺を放置して母さんに礼儀正しく頭を下げ言う。

「すみません、お楽しみ中のところ申し訳ないのですが、少しよろしいでしょうか?」
なんか……すげぇ紳士だ。

ド田舎村の時、1度家に帰ってから来たのだが、服もおじいさんっぽい服から、やたらと真面目そうな紳士服に着替えてる。
黒いハットを片手に、母さんに頭を下げてる姿……大人だ。

なんか、ねこのこと母さんと暮らしてたせいだろうか? 別人種に感じてしまうのだが……

けど、俺が驚くのはここからだった。

「……あっ、これはこれは……とても丁寧にありがとうございます」この人、普通に対応したが……外面はこんな感じなのか? 女ってすげぇ……ただのちょっとネジが取れた優しい母親じゃなかったんだな。

で、母さんはいいとしてだな……シルマ、わざわざ母さんに挨拶したってことは……この家に何か用ってことなのか?
なんて思いつつ、何故か次はリオンに抱かれながら俺は話を聞いている。

「突然ですが……単刀直入に申し上げます」

「あっはい」

「私を、この赤子……いえ、勇者ススム殿の傍に置いては頂けないでしょうか!!」

「へ?」「え?」「にゅ?」
俺、母さん、ねこのこ、同時に反応した。

……えと、俺ってば……さすがにおじいさんには興味が……それならまだ、こっちのぺたん娘だけど美少女達の方……が……

「いでででで!!! なっなにすんだリオン!!」

「ススムが悪い事言ってる気がしたんだけど……」
こいつもねこのこ並の直感の持ち主!?

「りおん、ねこのこにそれ貸せ」

「ふぇ? うっうん……」

「いっ!? 痛い痛い痛い!!??」
誰か、赤ちゃん虐待でこいつを捉えて欲しいんだけど!?

なんて、2人によく分からんが心を読まれ虐められる中、勝手に話しは進んでいた。

「ご丁寧に、あとはススムに決めてもらってください」

「かしこまりました、親切にありがとうございます」

この2人の大人っぽい会話、だと言うのに何故中身は大人の俺が……

「ねっねこのこちゃん、それやりすぎじゃ……」

「だいじょぶ、ちち、つよい」

ふむ、たしかに慣れたがな……なぜ俺は今、逆さで宙ぶらりんにされてるのだろうか?

ていうか、俺もそっちの大人の会話に混ぜて欲しい。

と、ここでようやく声がかかった。

「勇者殿、良ければ私の腕をあなたのギルドで役に立てて貰えないだろうか? 2度失うはずの命を救ってもらった恩、返すにはあなたのそばでつかえさせて頂きたい」
何を今更こんな喋り方で畏まってんだろ、まぁでも……ぷるぷる震える声よりマシか……俺の傍で……

「ならさ、とりあえず……助けてくんね? 俺は今この2人に殺されそうなんだ」

「ふむ? …………その程度の事で勇者殿が死ぬとは思えませんが……ねこのこ殿、それにりおんよ、何に怒ってるのか分からぬが、わしの顔に免じて1度許してもらっても良いかの?」

……いやいや、そんな言葉だけで許してくれるなら、そもそも俺はこんな目にあってな……あれ?

何故か足にかけられた風魔法ウィンドハンドはすぐに解かれた。

「ちち、ゆるす」

「おじいちゃんがそう言うなら……」

あらら、なんかすごい簡単に許された……

「んっしょっと……」ウィンドウェアで宙に浮き、俺は言う。

「ならば今後、俺の身を守る役目をお願いしよっかな……」

「かしこまりました」

ふむ、これで今後……俺はこの子供二人に虐められずに済みそうだな。
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