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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
15《無邪気》
しおりを挟むいつも通りならば、目覚める朝は大抵ねこのこが頬をつんつんしてたりして起こされるのだが、今日はいつもより少し早く目が覚めた。
ーーギルド機能が解放されました。
ーー領地機能が解放されました。
「ん……んん……ふぁ~……うるさい」
小さな腕をいっぱいに広げ目覚めた朝、目をゴシゴシ擦りながらさっき聞こえてきた言葉を思い返す。
「はぁ……あの一歳半検診から、無駄に変な声聞こえるようになったけど……一体なんなんだよ全く」
メニュー画面を開き確認する。
「……ああ、そいやライフリングを手に入れたら解放されんだっけ」この辺、ゲームと同じだから余り驚きはないな。
たぶん、そろそろだな。
こんこんこんと部屋のドアをノックする音、わざわざノックするって事は母さんで間違いはない。
なんせねこのこなら……ズドン!! っとドアを容赦なく開けてきて「ちちーー!! おはよ!!」って感じに……「へ?」
ばふっ………「っ……いったーーー!!! この馬鹿猫ー!!」
「えへへ~おもろい!」
こんな感じに……容赦なく飛びついてくんだよな……誰かこいつをしつけて欲しい。
「《ヒーリング》……はぁ、ねこのこ……毎日言ってるけど、俺は赤子なんだぞ、もっといたわれ馬鹿」
とうとうヒーリング、熟練度が極まり無詠唱で唱えられるようになったという……
「ちち、大丈夫! ちちつよい!」
「あのな……回復するとはいえ、痛いものは痛いんだからな……それにお前は一応女の子なんだから、もうちょっとこう……ああ、飽きたのね」
俺が説教しようとしたら、とことこ~と部屋から出ていった。
本当に自由気ままというか……自分勝手なねこだよったく。
「ふふ、相変わらず仲良しね~」
はは、相変わらず節穴ですね。
母さんはねこのこと僕がじゃれてると思って、いつも何も言わずに見ているんだけどさ……はっきり言って、息子の命に関わる事が目の前で起きてるのに、もう少し気にした方がいいと思うぞ?
「えーと、とりあえずいいかな?」
「はいどうぞ」
「ふふ、ご立腹ね~でもこれを見たら機嫌を直すかしら?」
「ん?」
そう言って母さんに渡されたのは2枚の紙だな。
1枚目は、俺が正式に冒険者登録された事を示した紙、もう1枚はライフリングを持った事による、一定の権限を持ったことを示した紙だな。
機嫌を直すというか……俺、別にこれ知ってたし……
「うん、ギルド認定と領主認定だよね」
「あら? 知ってたの?」
「うん、まぁ母さんが買ってきてる教材に書かれてるのもあったしね」まぁ無かったが、こういってたら基本なんとかなる。
「そうだったのね、母さんは初耳だったから驚いちゃったわ」
ほらな、うちの母さん基本的に俺を信用してんだよな。
ていうか、ギルドと領地か~……まだ俺1歳半なんだけど……そんなの貰ったとこで、何をどうしろって言うのだろうか……
そしてここでねこのこは戻ってきた。
俺はこいつが何を言うか未来予知可能だ……まぁ毎朝のことだからな。
「はは、腹減った、ごはんまだか?」
ねこのこに人と人が大切な話しをしてるなんて関係なし、そして母さんも「あらあら、じゃあご飯にしましょうか」ねこのこにどこまでも甘いから、たぶんねこのこのこの性格は一生治らないと俺は思っている。
俺を置き去りにキッチンへ向かう猫と母。
「……息子の就任より優先される猫の餌……か」
♢
飯を食い終わった俺たちである。
「じゃあ、行くぞ」
机に座る俺の手を掴む母と、足を掴むねこのこ。
まぁあれだ、今からちょっと領地を見に行こうと思ってな。
なんだかんだでやっぱ、ゲーム画面の向こう側でしか見た事ない自身の領地、見たいってのがオタク心だからな。
そしたらこの2人が着いてくると言うから、こうして俺の身体に触れさせてるって感じだな。
領地にはこのギルドで貰ったライフリングを使えば移動できる。
領地ってのは、世界より大きいと言われる世界樹、その葉っぱの1枚らしいからな。
このライフリングは世界樹の雫から作られてて、世界樹の雫は世界樹の葉の1枚と繋がってるらしい。
移動する為には領地に名をつける必要があるのだが、これはもう決まってるからな、悩む必要は無い。
《転移、イノセントロアー》
まぁゲーム世界で俺のギルドが冠していた名前だな。
イノセントは無邪気、無垢、無罪等を表し、ロアーは咆哮を表す言葉。
まぁ……ギルドの仲間の1人が、俺を見て付けた名前で、ギルメン全員が賛同したからつけた名前なんだが、長年使ってたことで愛用ある名前なんだよな。
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