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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
14《ササミグミ》
しおりを挟むなんか偉そうな部屋に俺と母さん、ねこのこは連れてこられている。
ぼふっと社長なんかの部屋にありそうな革製のソファに座り、目の前にはあの忌々しいおっさん。
ローブ美女達は居ない……当然だ、あの人達は今、他の赤子達を抱っこしてるんだ……本当にずるいと思う。
「では、こちらの書類にサインを」
「あっはい」さすがの母さんも少し緊張してる様子。
「では少々お待ちください」
何故こんなとこに居るかと言うと、まぁあれだな。
魔法適正を終えた子供には、自身のある程度の情報が記載された証明書の代わりとなる宝石が渡されるんだが……なにやら俺ってば、かなり凄いらしく、上級魔法適正者以上にしか与えられない宝石になるから、こうして偉いさんの部屋に呼び出されたって訳だな。
ちなみにだが、一歳半検診でこんな事態になる事は初らしく、本日は俺以外、この部屋には誰もいない。
「それにしても……私は震えています」
おっさん、それは歳だぞたぶん。
「?」いきなり変な事言うから母さん困ってんじゃないか、冗談も頭だけにして欲しい。
あっはい、すみません。ローブ美女に抱きつけなかったこと、だいぶ怨んでますはい。
「もぐもぐ、もぐもぐ……うまま!」
にぱっと笑うねこのこ、食っているのはササミグミらしい……
とうとう静かにしてることが耐えれなくなったねこのこに、このおっさんが与えたものなんだが……
多分こいつ、鶏肉の味がしたらなんでもいいんだろうな、俺は絶対食いたくないわ……
まぁとりあえず懐柔された獣は置いといてだな。
母さんのサイン入りの書類を手に持ち部屋から出たライゼルが帰ってきたようだな。
青い宝玉のようなものが着いた指輪を机の上に置いた。
「こちらがススム様に与えられる《世界樹の雫》と呼ばれる石のついた指輪、通称《ライフリング》です」
「ありがとうございます」
母さんがそう言って受け取る指輪、俺は一応これを知ってるんだよな。
……まぁゲームでお馴染みってやつだな。
名前《ライフリング》
世界樹の雫と呼ばれる宝石が付いた指輪。付けてるだけで上位冒険者と変わらぬ扱いを受けることが出来る。
魔法の杖には劣るものの、魔力を安定させる効果もある為、付けてるだけで魔法能力が上昇する。
魔法適正聖級に達した際、冒険者ギルドで受け取ることが可能。
まぁゲーム内知識だが、今まで通りなら……たぶんアイテム効果は差程変わらないだろう。
「ススム、指を出してみて」
「ほい」俺は母さんに掌をパーにして向けた。
「ふふ、あなたはやっぱりとても凄い勇者になるのね」
いや、過度な期待はやめて頂きたい。俺はともかくとして、そこのねこのこ……勇者を導く役の方がお粗末なもんでな、俺自身その辺に自信がないからさ。
と、言うわけで母さんに指輪を嵌めてもらった。
はっきり言ってサイズは全っぜんおれの指にあって無かったんだけどな。こんな感じなのか……
指輪は俺の指を通るなりスっとその姿を小さく変え、見事にピッタリのサイズとなった。
ぱちぱちぱちと拍手の音がしてきた。
「おめでとうございます、これであなたの息子様は世紀に世界に認められた勇者となります……ですがまだ幼いその身、大切に育ててあげてください」
「はい」
こうして俺の一歳半検診がようやく終わった。
♢
帰り道。
「もぐもぐ、うまま! ちち! 出せ!」
俺を抱くねこのこ、俺をつんつんして求めるのはもちろんあれだ……ササミグミ。
「……あのなぁ食い過ぎだろ、身体壊すぞ……」
もうかれこれいくつ食べてるのかわからん程にくっている。
「ふふん大丈夫だ、よこせ!」何故自慢げ???
まぁいいかと俺は異空間収納からグミを取り出し、ねこのこに渡す。
「うまま、もぐもぐ……」
何故俺が異空間収納にササミグミを入れてるのか? ああ……それはな……
一歳半検診が終わり、帰ろうとした時の事だった。
「無い!! おっさんよこせ!!」
てな感じにねこのこがおっさんにササミグミをくれと強請ったんだよな。
そしたらおっさんが「このササミグミ、売れ残って処分に困ってるので、良ければ好きなだけ持って帰りますか?」とのこと
おっさんに連れられ向かった庭にあった大きな倉庫。
開くとそこには倉庫パンパンに敷き詰められたササミグミがあったんだ。
「もう賞味期限ギリギリで、明日には捨てないとなので、好きなだけ持って帰っていいですよ」
その言葉に、ねこのこの目はギンギラに輝いて、そして俺に言ってきた。
「ちち! 全部運べ!」
「へ?」「ふふ、ねこのこちゃんったら」
驚くライゼル、まぁそりゃ当然で……まさか俺が異空間収納まで使えると思ってなかったんだな。
つまりまぁ……倉庫いっぱいにあったササミグミ、全部俺の異空間収納に入れられたって訳だ。
ちなみにこれは初耳だったんだが、ライゼル曰く、異空間収納の中は時空の歪み? なんかそんなのを利用してる魔法だから時間の経過が無いらしい。
だから馬鹿みたいに収納したササミグミ、腐ることは無いそうだ。
「うまま! もっと寄越せ!」
「もうすぐ晩飯だろ! 少しは我慢しろ!! 鶏肉料理食えなくなっても知らないぞ!」
「にゅ!? それは困る……ねこのこ、我慢するる……」
「ふふ、今日はススムにライフリングが与えられた記念すべき日でもあるからねぇ、お母さん腕によりをかけて料理を振る舞うから、楽しみにしててね~」
なんだかんだで1年半、俺は結構今の生活が楽しく感じてる気がする。
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